何ごとも変化していくのは仕方のないことだと思う。


私が住む町は都会とは遠くかけ離れた小さな町だが、気づけば変わっているものが多くある。


例えば、小さい頃よく行っていた、お世辞にも品揃えがいいとは言えない本屋さんや、大好きなおばあちゃんがいた駄菓子屋さん。
一面に広がっていた畑や田んぼも今ではいくつもの家と化していた。


人間関係もそうだ。


昔は、いつまでも友達だと思っていた女の子も今では全く関わりを持たなくなった。

そして幼いながらも、心から大好きだった少年も突然姿を消してしまった。



だからと言って変化を拒絶したいとは思わない。
変化することはそれだけ自分が未来へ歩んでいるという証明でもあるのだから。

ただ変化してしまったものを見るたびに心のどこかが虚しくなるのだ。
寂しくなるのだ。




私がこんな風に感傷的になる時は、たいてい同じ行動をとる。


「また、来ちゃったよ」


唯一、昔と変わらない近所の公園。

遊具はもう古くなっており、それに加え種類も少ないことから最近の子供達には愛されていないようだ。

今日の今まで取り壊されなかったのが不思議なくらいだ。


だが別に遊具に用があるわけではない。用があるのはこの小さな公園には似合わない、異様な存在感を放つ立派な桜の木だ。

満開とは言えないが、ところどころ咲き始めている花を見ていると、春の訪れを実感する。


そしてこの桜の木は、私にとって、忘れられない彼との思い出だった。



小さい頃、この木の周りでよく遊んだものだった。
遊ぶのに夢中で、よく2人そろって怒られたものだ。


私は木の根元に凭れて座り、ゆっくりと目を閉じた。

すると、なんだか風にのって何かが聞こえた。
それはとても懐かしい声。


『グミ、こんなところで何してるの?』

そこには私よりも遥かに大きくなった、忘れられない彼、グミヤの姿。

少しの間驚きを隠せなかったが、これは夢なのかと自覚するとそれもすぐに消え失せた。

「グミヤこそ、どうしているの?」

彼は少し笑って、私の髪の毛を撫でた。

『グミを迎えにきたんだよ』


いつの間にか、さきほどの手は私の頬を撫でていた。

『ごめんね、今まで寂しい思いをさせて』

心から悲しむようなその表情はとてもリアルで、つい夢と言うことを忘れそうになりそうだった。

だからだろう、私は変なことを聞いてしまった。

「ねぇ、どうしていなくなったの?」

これは私が想像した夢の中の彼。
理由なんて知っているはずもないなのに。

しかしグミヤは少しの沈黙の後、口を開いた。

『あの頃、両親が転勤になって……、でも僕はすぐ帰ってこれると思ってたんだ。それで、グミには何も言わずこの町を離れる事にしたんだ』


私は今、自分の想像力に感心した。
なんともよく出来た理由だ。




『ねぇ、グミ?僕にとってグミは世界なんだよ 』

「えっ? 」

『グミが笑えば僕も笑うし、グミが泣けば僕も心から悲しんで泣く、グミが悩むのなら僕も一緒に悩む、そうやってグミの一挙一動が僕を突き動かすんだよ 』


グミヤの言葉を聞き終える頃には、涙が頬を伝って零れ落ちていた。

同時にこれが現実であればいいのに、と願った。

こんな幸せな夢を見せられたら、目覚めてからの現実と向き合うことが億劫になりそうだ。


「グミヤ、私っ、このまま夢を見ていたいよ」

『どうして? 』

「……だって、グミヤとずっと一緒にいたいんだもん」

するとグミヤは笑う。
何がそんなにおかしいのだろうか。


『グミ、現実と向き合う事から逃げてはいけないよ? 』

「でもっ、グミヤがいない現実なんて嫌だよっ__ 」


これではまるで駄々をこねる子供だ。

あれだけ現実と向き合ってきたはずなのに、たかがこんな夢でその努力を水の泡にしてしまった。

やはり私の世界には彼が必要不可欠なのだ。
今までその事実に目を背けてきたが、もう限界なのかもしれない。


『大丈夫だよ、僕の心はいつもグミでいっぱいなんだから 』

「グミヤっ 」

『ほら起きて、グミ。 目覚めたら、きっと良いことが待ってるよ 』

グミヤはそう言って、少し濡れている私の瞼に触れるか触れないかぐらいのキスを残した。




瞼の隙間から再び日差しが入り込む。

夢は終わり、またいつもの現実がやってくる。

重い瞼がひらき、ぼやけた視界に映るのはさっきまで夢の中にいたはずの彼。

「グミ、おはよう 」

先ほどと変わらない笑顔。

「なん、で? 」

「言ったでしょう?迎えにきた、って 」




変化していく世界で生きていくと言う事は、この世に生まれた者の宿命なのかもしれない。

だからといって現実の全てが変化するわけでもない。

現にこうやって私達は再会する事ができたのだから。


そう思えば、この世界も悪くない__

                       
                                   ~END~

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

木の下で


コラボに投稿させていただいた小説です♪

現代を目指したんですが、ちょっと恋愛要素入りました←

これのグミヤに私自身、惚れました(笑)

私の周りも変化してしまったモノで溢れているなぁ、と思いながらこの話を書かせていただきました

なんかちょっと寂しい気持ちになりますよね……

でもその悲しみのようなものを分け合う大切な友達だったり異性であったり
そういう人の存在がそれを少し和らげてくれるというか

そういう気持ちが伝われば幸いです


ここまで読んでいただきありがとうございます

       ~甘菜~

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閲覧数:397

投稿日:2012/11/21 19:41:29

文字数:2,116文字

カテゴリ:小説

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