「それで、卓君が怪しい行動を取り始めたのっていつ頃からなの?」
ミクが定期的にはちゅねのマークを確認しながら、二人は駅前の商店街にまで来ていた。
先日の騒動の傷跡もすっかりなくなり、年齢問わず多くの人が闊歩している中でミクが携帯から顔を上げてメイコを見る。
「海に落ちてから2、3日したあたりです。そのあたりから急に練習時間が短くなったり部屋に閉じこもるようになったりと、不自然な行動が目立ち始めていました」
「ふぅん、でもそれくらいなら別に気分の問題とかいろいろ理由は考えられるし……怪しいって言うにはちょっと微妙じゃない?」
一応卓も年頃の男の子だ。異性であるミクに何か秘密にしたいことの一つや二つあったとしても、別に不思議じゃない。むしろ、その方が健全なくらいだろう。
「確かにその通りです。でも、長谷川と言う人物がどうしても気になるんです」
「長谷川?一体どこの誰よそれ」
ありふれた苗字ではあるが、ここしばらくで長谷川と言う苗字の人と何かした記憶はない。少なくともクリプトン社関係の人ではないことは確かだ。
ミクの知り合いなのかとも思ったが、当の本人もわからないと首を振る。
「わかりません。ちょうど卓さんの行動が怪しくなった頃に、一度家の電話にかけて来た方です。ミクが出たら卓さんが飛んできて横から受話器を掻っ攫っていかれました」
そのこともあって、今回の卓の変化をミクは不審がっているらしい。
「はぁん、なるほど……」
それは確かにちょっと怪しい臭いがする。おそらく通話記録から調べ上げれば、その長谷川がどこの誰かと言うことくらいすぐにわかるはずだ。
……だが。
「ねぇねぇ、因みにその長谷川って男の子? 女の子?」
ニヤニヤと何故か嫌な笑みを浮かべつつもメイコがミクに尋ねる。
「? 声からすると女性だと思いましたが……それが何か」
「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
メイコの質問の意図がよく分からず小首をかしげるミクとは対照的に、いきなりテンションMAXでメイコが歓喜する。
「ッ?! は、えっ?!」
「うっそまさかの三角関係的な展開?! 平日の午後二時前後でしかありえないと思っていたシチュエーションが正に現実に起きようとしている! いや、これだとむしろ純愛系だからゴールデンタイムのドラマかな。きゃああああたまんない! だめ、もう涎が止まらないわ……」
信じられない光景をミクは目にしていた。
うへへへ、とかつて見たことがないメイコの下品な笑い姿にミクが露骨に数歩引く。
目の前の人物が実は影武者だったとか、そんなありもしないオチを期待してしまうくらい衝撃的だった。
「はっ!? いけないいけない、つい欲望が滲み出ちゃったわ」
滲み出たと言うより駄々漏れだった。
「さて、そういうことなら急がなくちゃね。早くしないと決定的な瞬間が……もとい、卓君の奇抜な行動の解明が失敗してしまうわ!走るわよミクちゃん!」
「えっと、つまりどういう状況なんですか?!」
突然手を掴まれたミクは目を白黒させながら強引に走らされる。
手を引くメイコはと言えば、満面の笑みで答えた。
「つまり、卓君に彼女ができたのかもしれないってことよ!」
「彼……女?」
ズキンッ。
何故だろう。その言葉を耳にした途端、胸の奥に軋む様な痛みが小さく走った。
だが、それも一瞬のこと。
痛みは疑問にまで昇華されることなく、心臓の鼓動の音にかき消されてしまった。
そんなことが起きているなどとは露知らず、メイコはミクから携帯を預かってはちゅねのマーカーを追って走った。
そして……、
「よし、はちゅねのマーカーがこの当たりをずっとウロウロしているわ。卓君はこの中のどこか…………にって何よコレ?」
眼前に広がった世界は、メイコの目を疑わせるには充分すぎた。
激しい爆竹の音や舞い上がる風船、途絶えることのない人ごみの中で、二人は呆然と立ち尽くす以外なかった。
「これは……まさか?!」
二人揃って驚愕する、その眼前には達筆かつカラフルな文字の書かれたオベリスクのような看板が立っていた。
『音無大学文化祭』
コメント1
関連動画0
オススメ作品
君の神様になりたい
「僕の命の歌で君が命を大事にすればいいのに」
「僕の家族の歌で君が愛を大事にすればいいのに」
そんなことを言って本心は欲しかったのは共感だけ。
欲にまみれた常人のなりそこないが、僕だった。
苦しいから歌った。
悲しいから歌った。
生きたいから歌った。ただのエゴの塊だった。
こんな...君の神様になりたい。
kurogaki
ゼロトーキング / はるまきごはんfeat.初音ミク
4/4 BPM133
もう、着いたのね
正面あたりで待ってるわ
ええ、楽しみよ
あなたの声が聞けるなんて
背、伸びてるね
知らないリングがお似合いね
ええ、感情論者の
言葉はすっかり意味ないもんね...ゼロトーキング(Lyrics)
はるまきごはん
おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
お2人のコラボ作品「神曲」をモチーフに、勝手ながら小説書かせて頂きました。
ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓「前のバージョン」でページ送りです...【小説書いてみた】 神曲
時給310円
倦怠感だけ 頭の中巡って
称賛ばかりの毎日は飽き飽きだ
厭世感すら 心の奥迷って
懊悩だらけの関係は擦り切れた
見ていて ここに立っているのは
私以外じゃない 私だけ
ここでこの声で歌っている
きっと簡単なんだ
やればできるはずなんだ
それでもできないのはなんでなんだ...欠心
綾取り
<配信リリース曲のアートワーク担当>
「Separate Orange ~約束の行方~」
楽曲URL:https://piapro.jp/t/eNwW
「Back To The Sunlight」
楽曲URL:https://piapro.jp/t/Vxc1
「雪にとける想い」
楽曲URL:http...参加作品リスト 2017年〜2021年
MVライフ
8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁っていた
「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞
じん
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
トレイン
ご意見・ご感想
こんばんは~
新作にコメントありがとうございました。なにぶん敬遠される分野なのでなじみやすい作品にできればいいなと思ってます。
卓に彼女かも?ですか~。
ミクがいるのにどういうことでしょう?
しかも、追ってきたところ文化祭中の大学と、
続きを見たくなってきます。ここで終わってるのがもったいないぐらいです。
首を長くして待ってます
2010/05/08 22:18:13
warashi
トレインさんこんばんは?!^^
コメントをいただきありがとうございます!
そうですね、取り扱う内容が難しそうですしね。でも、読んでいてこの機会に色々勉強してみたいと思いました。楽しみにしてますので頑張ってください^^
今回は前回まででちょっとだけ出てきたキャラや新キャラが多く出たりする感じですので、そういうところでも文化祭みたいな遊びの感じで読んで頂けたら嬉しいです。
ただ、文化祭の中身は自分でも読み返していてかなり混沌としていたので少し修正してます^^;
ここしばらくはやっと少し時間が取れそうなので続きも早く投稿したいと思っています。
また読んで頂けたら幸いです。
それでは、コメントをして頂き本当にありがとうございます!
2010/05/09 02:10:45