丘から離れては、城へと向かうルカ。
その歩くだけでありながら、彼女には何か不思議な雰囲気がありました。
………そんな雰囲気があればもちろん。
「おぉー、ルカ様、久しぶりじゃないかー!!」
「えぇ、ただいま。今回は手ぶらだけどね。」
彼女が城下街に差し掛かろうとした所で、街門番が目ざとく見つけ、声を上げては仲間に知らせます。
するとどうでしょう。
「えぇっ、ルカ様のお帰り!?!?」
「出迎えてやらねぇと!!」
「御帰還歓迎会だぁっ!!!」
街門から、直接城へと繋がる城下町最大の大通り。
そこに軒を連ねる、商店の主や従業員、更には民家の住民が、大通りに出れる人は出てきて、出てこれなくとも、通りに面した窓がある家ではその窓から人が…ルカの帰りを迎えました。
「やっぱりこの空気はいつ感じても嬉しいものね。」
大げさに緩んでしまう口元をローブの襟で隠しながら、出迎えてくれた皆に笑顔を振り撒きながら、ルカは城へと向かいます。
んでもって、ルカの帰還を知る前の城内と、その時の国王夫妻は。
「やっぱり、アマネは私達の事を良くみているのね。」
「そうだな。」
アマネから贈られた鏡を見て、改めてしみじみと思います。
「よう、今時間あるか?」
そこに入って来たのは初老とも見える位に彫りの深い……しかし体格は大柄で充分な威圧感をもつ男が入ってきました。
そして隣には、 凛とした顔立ちと雰囲気を持ち剣を腰に差した、一見すれば少年のような、しかし年齢の割には豊かな膨らみを持つ少女が付き従う様に居ました。
「あらルベル。丁度良い所に来たわね。今しがた、アマネかから立派な鏡を頂いた所なのよ。」
「そうか…確かに立派だな。」
「メイラもご覧なさい。」
男のフルネームはエルベルト・アマノイエ。
イエロヴェラ王国騎士隊の隊長を務める男です。
ちなみに、国王夫妻…ロヴェラ、ラエラとは大分前からの知り合いです。所謂幼馴染みですね。
そして付き従っていた少女はメイラ・アマノイエ。ルベルの娘です。
しかしラエラから勧められて鏡をみたメイラ。
すると直ぐに、驚いた様な様子で腰の剣に手を掛けます。
「ん…メイラ、どうした。」
「………なんでもない。」
メイラはなにやら感じた様ですが、三人が何も感じなかった事を見て、自分の勘違いなのか…として剣から手を離しました。
「さて俺からなんだがついさっき…ほんとついさっき、街から連絡来てな。ルカが帰って来たそうだ。」
「おぉ、今日はなんと…」
「今日はなんて素敵な日なんでしょう!!今日は宴を開きましょう!!」
ルベルの報に喜ぶロヴェラ。しかしそれ以上にラエラが喜び、ロヴェラはため息をつきました。
「それじゃあそれ相応の支度が必要だな。……が、街もルカの歓迎モードだからな…城での方は…メイラ、手伝ってやってもらえるか。」
「分かった。城の手伝いは任せて。」
「メイラの手を借りれたら百人力だわ♪」
「では準備を始めようか、皆の衆。」
ロヴェラが手を一つ叩くと、一同の前に城中の従者がわらわら、ぞろぞろと集まっては並んできます。
「各部の長と補佐は揃ったな?では、今から言伝てよう……今宵は嬉しき事が重なり、それらを祝う為の宴を催そうと思っておる。故に、それらの支度を行いたい。」
「親国王の命とあらば!!」
「よろしい。ならば今宵は宴ぞ、各部、存分に腕を奮い、腕を見せよ!!」
王からの言葉には、並んだ従者全員が敬礼とも取れる仕草と共に、声を揃えます。
…………と、こうして暫くした後、ルカの帰還祝いとアマネからの贈呈品紹介を合わせた宴が始まりました。
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