第四十四話 選択

 かたり。

 微かな音をさせながら、私は真夜中に部屋へ入った。

 私ども奉公人の部屋ではない。
若旦那の許婚の、お依亜さんのへやである。

 「……ごめんなさい……」

 あれから、二日たった。
私は考えに考え、私がお依亜さんを殺せば、若旦那を陥れることができると気がついた。
許婚を亡くしたのだから、きっと人生のどん底へ陥れることができる。
あと、立ち直るかどうかは私の知ったことではない。

 とにかく、お依亜さんを殺す。

 彼女もそれを望んでいる。



 お依亜さんの部屋は、真っ暗だった。
まあ、今は真夜中。
行燈や明かりがついているほうがおかしい。


 「ごめんなさい……」


 私は誰に赦してほしいのか。

 お依亜さんを殺し、さっさと魔界へ戻ればいいのだ。

 なのに……どうして……私は何に期待しているの……?





 「るかさん」





 「!」




 真っ暗闇の中で突然投げかけられて、驚いた。
お依亜さんは起きていたのだ。

 私が何か言葉を見つけるより早く、お依亜さんは私に言った。



 「あなたは人外の者だから、私を誰にも気づかれず殺すなんて容易い。だから、私と入れ替わるなんてもっと簡単だわ」


 
 なんて言えばいいんだろう。
お依亜さんはどんな顔を、今しているんだろう。
真っ暗で何も見えないの。



 「あの人も、きっとそれを望んでいるもの……、それが一番いいもの……」

 「そう言うのなら、どうしてそんな悲しそうな声を……しているのですか……?」




 ふっと、お依亜さんはすこし笑った。




 「さあ、どうしてだろうねえ……。でもきっと――」



 顔が見えないのに、なぜだろう。



 「若旦那が笑ってくれれば、それだけで幸せだから―――」


















 彼女は、泣いている気がした。











ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ノンブラッディ

閲覧数:103

投稿日:2013/03/21 19:20:17

文字数:819文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • ハル

    ハル

    ご意見・ご感想

    IAさん・・・なんかミステリアスなのに何だか優しい人だな~・・IAさんも旦那さんのこと思って・・・
    ルカさん!決断はあなたです!

    2013/03/23 19:39:58

    • イズミ草

      イズミ草

      お依亜さんのコンセプトは、クールビューティー?? ですのでwwww

      2013/03/23 21:59:14

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    イアちゃん、みすてりあすだぁww

    ルカさんは……どうする!?

    2013/03/21 21:13:59

    • イズミ草

      イズミ草

      さあて、どうするんでしょう……?
      頑張って、みんな!!!www

      2013/03/21 22:09:22

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