家を出たリンは、珍しく余裕を持っていた。
今日はなんと、いつもより十分も(普通なら十分しか、だが)早くおきて、この間のように自転車を壊すほど飛ばさなくても、十分大学には着く。自転車にまたがり、リンはいつもより少しだけ遠回りになる道を通り、大学へと向かった。
それでも、学校には悠々と余裕をかましつつ、たどり着くことが出来たのだった…。
退屈な講義…。
チッ、この教授の話は面白いとかなんとか。言っていたじゃないか! 後で、そんなデマを流した友人をとっちめてやろうと思った。これなら、メイコの酒のお酌でもしていたほうが断然楽しい。
これの後は、場所を移動しなければいけないのもまた、面倒だ。
そう思ったが、リンは許してやることにした。今日は朝から余裕があったので、作ってきた弁当が、いつもより少しだけ豪華なのである。しかし、許せないことがあった。
何故だ。何故、隣の席に初音ミクが座っている!?
しかも、ちょくちょく問題のたびに、答えを聞いてくるのは、勉強の出来ないリンとしてはものすごく面倒くさい。いや、可愛いは可愛いのだが、どうもミクと言う少女を、リンは、「わぁ、可愛い。お友達になりたいな」とは思えなかった。元々、そういうキャラではない、と言うこともあったが。
そういえば、ミクがこの大学に来ている、と言うことは、レンもなのだろうか。考えてみれば、あの駐車場に同じくらいの年の少年がいるというのも不自然だから、この大学に通っている、と思えば、自然である。今度、何か作っていこう。クッキーでも、チョコレートでも、何か小さなものを作って、差し入れ代わりにでも。…そうだ、弁当を作ってやろう、そして、大学内で渡す。まるで、カレカノのようだ!
そう考えているうち、講義はどんどん進んで、結局リンは、その講義の半分もノートに取ることは出来なかったのである。
お昼時だ!
リンがはしゃぎながら、踊りだしそうになるのを抑え、かばんの中の弁当に手を伸ばしていた。
「今日は余裕で来たらしいじゃないの」
と、言ったのは、メイコだった。
「あれ、仕事ほっぽり出して何、やってんの」
弁当を出して、リンは言った。
「何言ってんの。学生たちの様子を見守ることも仕事のうちよ」
「学生といちゃいちゃすることも?」
「は? 何言ってんのよ。この後ろにくっついてるアイス野郎はただのストーカー」
確かに、メイコにべっとりとくっついている、青い服の青年がいる、なかなかの美青年なのに、いったい、何が楽しくて、女の後ろに引っ付いているんだろう、こいつ。どうも、リンには理解が出来なかった。いや、リン以外にも、理解できるものは少ないだろう。
「ひどいなぁ、めーちゃん。そんなに俺のこと嫌い?」
「ええ、そうね。うざったいところが大嫌いよ」
「わぁ、めーちゃん超笑顔!」
腹黒い笑顔合戦が始まったので、リンはため息をついた。くそ、リア充共め!
そのとき、一陣の風が吹き抜けた。
「お姉さまから離れなさい、獣(けだもの)」
静かできれいな声とともに、桃色のロングヘアーの女性が、すばやい動きで青い青年に思い切りとび蹴り(リン風に言うとライダーキック)を食らわした。あまりに早くて髪の色が鮮やかだった、としか言いようが無かった。
また変なのが来たな、とリンが思ったときは、もう遅い。
「お姉さま、そちらは?」
青い青年を押さえ込みながら、桃色の女性が言った。
「ああ、これはリン。家が近くて、知り合いなのよ」
「そうでしたか。これは、失礼しました。私はルカ、よろしくお願いいたします」
笑顔が素敵な女性だ。…しかし、残念ながら、その前にすばらしすぎるとび蹴りを目の当たりにしてるので、どうも笑顔が素敵な女性、では無く、とび蹴りの人、と認識してしまう。
「鏡音リンです、よろしく」
「ほら、カイトもそこに転がってないで、さっさと自己紹介しなさい!」
カイトと呼ばれた青い青年はむくっと起き上がり、服についたほこりを払ってからリンに向き直ると、
「始音カイトだよ、よろしく、リン」
こちらも優しそうな笑顔だ。…だが、例によって、とび蹴りを受けた人、と言う認識になってしまうのが、なんだか残念だ。
カイトとルカから差し出された手の、ルカの手を取って、よろしくお願いします、といった…。
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ご意見・ご感想
かりん
ご意見・ご感想
こんにちは!!
わたし的にルカの性格がとても好みです^^
獣ってww
2010/09/20 12:40:21
リオン
こんにちはー!
別にルカはカイトのことが嫌いなわけではなくて、めーちゃんが大事すぎるだけなんです。多分。
青い獣が冷たいもの食べる前に、青い獣が冷たくなりそうです☆
2010/09/20 13:13:01