「リン！おじぎの角度が違う！！　さっき教えただろ！？」

　
　「鏡音さん！そんなダンスをしてたらドレスのすそを踏んでこける！！」


　「リンちゃん！グラスの持ち方が違う！！『美しさ』を心がけて！！」



　
　「も、もう駄目！！少し休ませｔ「駄目駄目。まだまだ教えることは山のようにある！！」



　私はとんでもないことに気がついてしまった。


　こいつらは鬼だorz




　毎朝、５時に起床。
　その後、３０分間の(軽いようで全然軽くない)ダンスレッスン。
　そして、(必ずフランスパンの含まれる）朝ごはん。
　そのまま、４人学校へ向かう。



　もちろん、学校だからと言って３人の指導の手は休まらない。
　椅子の立ち方、座り方。　挨拶の仕方。　食事作法。　などなど…

　

　学校からの帰宅後。
　テトちゃんが夕食を作っている間に、テッド君とレンによる(鬼の）ダンスレッスン。
　次に、食事作法を教わりながらの夕食。
　皆で学校の課題を片付ける。
　そして、テトちゃんの家へ戻り、風呂＆就寝。



　そんな日常が続く中。



　ミクちゃんは、
　「でね！クオとおそろいのペンダントを買ったの！！
　可愛いでしょ♪」

　クオと仲直りをして、すっかり(バ）カップルに戻っている。

　「それは、良かったね～。」

　一応、(３人の鬼のせいで顔に貼りついてしまった）自然な笑顔で答える。

　リア充のミクちゃんがいつにも増して鬱陶しい気がする。

　私は３人の鬼に囲まれて地獄の日々を送っていると言うのに！！


　グミちゃんは、
　「リン！！　やっと、新人歌手オーディションの書類審査に合格したんだよ！？
　やった！！これで一歩、夢に近づいた♪」

　将来の夢に一歩近づいたようだ。

　私は、『将来の夢』以前にパーティーの事を考えなくてはならないのに！！



　

　「ゴメン。今日は用事があるから。」

　パーティーまで、あと２ヶ月を切ったある日。

　いつもどおり４人で帰ろうとしたらレンがそう告げた。

　「そうですか。なるべく早く戻ってきてくださいね。」

　「おう、ゴメンな。　じゃあ、また後で。」

　「うん。バイバイ！」

　というコトで、私たち３人は家に帰った。




　


　そのときはまだ何も知らなかったのだ。

　レンの秘密も。テトちゃんとテッド君の事も。

　『鏡音グループ』の名前がどんなにレンの負担になっていたのかも――――