「ないしょだよ。」
君にだけ教えてあげた私の秘密
「私の視界は黒と白」
それ以外の色はないんだよ

空は白で雨は黒
人は黒で花は白
自分は白でも君は黒
「絶対、ぜったい秘密だよ」

君は不思議な顔で頷いた
これは二人だけの秘密
君にだけには
知ってて欲しかったんだ

なのに何でどうして分かんない
二人だけのって言ったのに！
あの子は言ったんだよ他の子に
「あの子の世界はモノクロなんだよ」


見えない見えない見たくない
こんな世界
だって太陽は黒くて夜は白いの

見えない見えない見たくない
こんな世界
黒い雨の中泣いていた



あれから何年かたって今の自分
君は私の知らない街へ行った
もう私の世界を知る人は
誰もここにはいないんだ

「レモンは黄色
ブドウは紫」
私の色は白と黒

「あぁかわいい犬が走ってる」
あの黒い影の何処が可愛いの？

分かんない分かんないよ
分かりたいのに
ほんとは素敵な赤い靴や
空色のワンピース

着たいし見たいし選びたいのに
私の視界(なか)には
そんな色が見当たらない

見えない見えない見たくない
私の世界はずっと前から
ひとりぼっちな黒の世界

泣いて泣いて声を殺して
しゃがみこんで白い涙降らす
「何で、なんで」
誰か助けて、黒に呑まれそう



冬、雪、クリスマス
私の世界は真っ黒で
空、から、黒いものが
頭に降り積もる

君 は どこ へ 行ったの？
私の世界を知る人は
会いたい会いたい会いたいよ
ねぇ一人は寒いよ…



泣いて泣いて
声が漏れそうになる瞬間
手を握られる
「君の世界はまだモノクロ？」

顔をあげると君がいる

何で、なんで？
涙流しながら君は笑って答える
「ごめんね、それから
ただいま。」

次の瞬間私の世界には
光が生まれ色づく
「髪の毛明るすぎるよ
オレンジ色ってこんな色？」

君は驚きそしてまた涙を流し
強く抱き締める
あぁやっと色づいたアイが
目の前に広がる…


「おかえり」