遅いおそいおそいおそい!!
待ち合わせ、待ちぼうけ、待ち人来り。
10時に駅前集合って言いだしたのはレンなのに。
もう20分も待ってるのに。
お洒落だってお化粧だって頑張ったのに。
久し振りのデートだから気合い入れたのに。
…早く会いたくて15分前に着いたのに、そう思ってたのは私だけだったのかな。
悲しくて空しくて、晴れてる空も来るまでは輝いて見えた街も今はなんだかぼやけて見える。
合唱コンクールが近づいた5月、ソロパートを任された私とレンは毎日毎日、来る日も来る日も練習に明け暮れていたし、それに不満なんて全くなかった。
ミク姉に負けたくはないし、レンと練習できるのは嬉しいし、なにより歌うことが大好きだから。
最近転校してきたルカ先輩も色々アドバイスしてくれるし、顧問のメイコ先生も熱心に指導してくれる。
副顧問のカイト先生はあまり顔を見せないけど時々アイスを差し入れに持ってきてくれる。
色んな人が期待してくれる分プレッシャーや責任は嫌でも伝わってくるし、それに応えたくて一生懸命練習する。
それはすごく幸せなことだし心の底から頑張ろうって思えるの。
たぶん皆同じ気持ちでコンクールに挑んでる。
でも、やっぱりその分レンと二人きりの時間は減るしお互い疲れて毎日それどころじゃないのが実情。
そんな時、疲れを取る意味で中休みがもらえた今日、レンからデートに誘ってくれた時は嬉しくて嬉しくて、私と同じ気持ちでいてくれたのかな、なんて思ってしまう。
だって好きな人とは1秒でも長く一緒にいたいじゃない!
照れくさそうに時間と集合場所と告げたレンが大好きで、でもこっちまで恥ずかしくて、遅刻したらカラオケ10時間の刑だから!なんて返事をした私が可愛くなかったのかな。
素直に楽しみにしてるねって言えたら、もっと好きになってくれるのかな。
遅刻されない女の子になるのかな。
携帯電話を開いてもレンからの着信はなくて、デジタル時計が10時30分を告げた。
遅いよ、の一言で許そうと思ってたけどもうそれも無理みたい。
連絡の一つもよこしなさいよ、バカレン。
もしかして事故?
「…お待たせ!リン!」
「……遅いよばか」
声がして顔を上げ、息を切らしてきたレンにとりあえず文句を一つ。
「本っ当にごめん!!携帯家に忘れて連絡もできなくて、…リン?」
なんか、もうバカみたい。
頭の中がぐちゃぐちゃになって全部涙になってでてくる。
なんでこんなに私は子供なんだろう、レンも呆れちゃうよね。
「…ほんとごめん」
「レンのばか!!」
「!?」
「…すごい楽しみにしてたのにそれもあたしだけだし、早く会いたかったのもあたしだけだし、連絡なくて事故かと思ったし、」
「リン、」
「…あたしばっかりレンのこと好きだし、」
言って、自分の一方通行に悲しくなる。
泣き出すし喚くし、ほんと面倒くさい女だなって自分でも思うのに口が止まらない。
「もう、あたしのこと嫌いになっちゃった?」
そんな答え絶対に聞きたくないのに聞かずにはいられない。
はぁ、とレンに溜息をつかれる。
「リン、はいこれ」
そう言って黄色い花柄の可愛らしいハンカチを差し出された。
新しい彼女の物?
なんでそんな物私に渡すの?
「これ買ってて遅くなったんだ」
「…?」
「遅刻したことは本当ごめん、謝る」
「あ、これ…」
ハンカチを受け取って思い出した。
「リンがこの前欲しいって言ってたからどうしても渡したくて」
「…でも、あたし今日誕生日じゃないよ?」
「記念日じゃなきゃ彼女にプレゼントしちゃいけないの?」
そう言いながら人差し指で涙を拭き取ってくれるレンはやっぱり私の大好きなレンで、
「…ごめんねレン。それと、ありがとう」
自然に出てくる言葉と、戻る笑顔が自分でも不思議だった。
大事にするね!と顔を上げてレンを見ると涙を拭った手でそのまま顎を固定された。
考える暇もなくキスされたことを唇で感じ、俺だって早く会いたかったよ、と頭を撫でられたら今までの自分が馬鹿みたいに思えてきた。
あと、俺の方がリンのこと好きだよ、と言われて街は輝き出した。
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