「………はぁ」

お店に入ったるかは小さな溜め息をつきました。
そして壁に貼ってある暦表の日付の一つを墨で消しました

「……また、帰って来なかった」

実はそんな評判の良いるかにも一つだけ悩み事がありました。それは彼女の愛するあの人がひどい浮気性な事です。
彼は自分と言うものがありながら滅多に家に帰って来ないのです。

「私の仕事が忙しいから仕方の無い事だけど……こんなに帰って来ないと流石にね…」

座り込んだるかはそう呟くと再び溜め息をつきました。



「……『だけど仕事は頑張らなきゃ』」

るかは再び暦表に目をやった後、そう言って立ち上がりました。この言葉はるかの母親が生前繰り返し言っていた言葉で彼女の母親は留守がちな父親に代わってお店を切り盛りしながらるかを育ててきました。
その為るかはそんな母親を誇りに思っており、母親が亡くなってからはるかの口癖の様になっていました。

るかは仕事道具である裁縫箱から一本の鋏を取り出しました。この裁縫鋏も母親の形見で古いにもかかわらず研けば研ぐほどよく切れるのでとても重宝するのです。

「さぁ、始めましょう」

るかは仕事に取り掛かりました………

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

円尾坂の仕立屋 間幕‐仕立屋の若き女主人‐

前半が長過ぎたので間幕にして分けましたf^_^;
鋏の設定ですが曲内の『二枚の刃云々…』のくだりから西洋鋏にしてます。
ちなみに作中の『暦表』はカレンダーの事です。

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投稿日:2010/07/03 21:45:55

文字数:504文字

カテゴリ:小説

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