夜明け前の空は
まだ昨日が残っていて
攫う風　白む息
明日はどこにあるんだろう

大切だったものは
もう思い出せなくなってた
咲いた月　消した文字
朝を迎えに歩こう

躓いた
足元の石ころ蹴とばした
背伸びした
空も遠いから

春紫苑　こちらを向く
少し照れくさそうに
宙を舞って　頬に触れて
間違いを探しても

軽はずみ　口を開く
少し火照った身体で
周りを見回した
朝を纏う

朝日が顔を出した
海に映える光の道
攫う風　見上げた空
逃げ水を追いかけた

大切だったことを
思い出したんだそうだ
ふざけた僕　笑った君
どんな話をしたっけな

まだ歩こう　ゆるんだ靴紐を気にして
まだ歩こう　思い出したいから

春を海　潮風止む
少しだけ手持ち無沙汰に
鼻を掻いて　声を出して
枯らす心の臓

春霞　ただまどろむ
少し火照った身体が
目の前の海岸で
夏を待つ

鼻を掻いて
頬に触れて
波が蠢いて
僕らを蝕んで
それでも前へ
それでも前へ

大切だったことも
もう思い出せなくなってた
痛む足　騒ぐ町
笑い声が聞こえてきた

春紫苑　こちらを向く
少し照れくさそうに
鼻を掻いて　頬に触れて
過ごす　凛と爽

花便り　届きもせず
少し焦った心で
君を探したんだ

草結び　君を思う
少し照れくさそうに
窓を開けて　潮風を呼ぶ
間違いを見過ごして

春紫苑　あちらを向く
少し火照った身体で
周りを見回した
君を待つ

鼻を掻いて
頬に触れて
波が蠢いて
僕らを蝕んで
それでも前へ
それでも前へ