ミクは公園の横の道を通りぬけ、広い道路へ出た。
今日は空が青い。久しぶりの晴れだ。ここんとこずっと雨が降っていたから、少しだけ嬉しかった。
交差点で信号が青になるのを待っている間、
ミクは公園の花壇に植わっていたチューリップを見ていた。
今度はチューリップを買ってこようかな、などと考えているうちに信号が青に変わった。
ミクは小走りで横断歩道を渡る。
降り続いた雨でできた水たまりがミクの足を濡らした。
「冷た・・・っ!」
気温が少し高いからか、水がとても冷たく感じ、思わず声を上げてしまった。
今は6月。ちょうど梅雨の季節だ。雨が降るのも無理はないのだが、雨は嫌いだ。
その時ふと、記憶の中にスリップしたタイヤの音が蘇る。
なんの記憶だろう・・・?こんな音、聞いたことないのに・・・。
不思議に思いながらも、ミクはリンのいる病院へ向かった。
病院のベットの上では、リンが一人、窓の外を眺めていた。
その横顔がなんだか寂しそうな気がして、一瞬病室に入るのをためらったが、
全く気づかないふりをして、ミクは元気に声をかけた。
「リン、おはよ。大丈夫?」
ミクが声をかけると、リンは少し驚いたようにこちらを見た。
「・・・!」
「あ、ごめんね?おどろかせちゃったか。ミクだよ。」
リンは目でミクの顔を確認すると、ホッとしたように笑った。
リンのために買ってきたお菓子を白いテーブルにおいて、
ミクは持ってきた花と花瓶に入っていた花を取りかえる。
「今日はアジサイ持ってきたからね~。梅雨って感じがしてよくない??」
ミクがいうと、リンはミクに悪いと思ったのかベットから起き上がり、
花を生けるのを手伝おうとした。
ミクは驚いて、声を上げる。
「だ、だめだよ!リン!!ほら、座って。あたしがやるから大丈夫だよ、ね?」
リンはゴメンねというふうに少し首をかしげ、そして微笑んだ。
アジサイとかすみ草を花瓶にいれると,、ミクは自慢げに笑った。
「なんかあたし、花の選び方上手になったきがする」
・・・リンは、声が出なかった。
小さい頃は一緒に歌った記憶もあるし、
気になる男の子について声を潜めておしゃべりしたこともある。
リンの声が出なくなったのは、つい最近のこと。
事故に巻きこまれてしまったらしい。
でも、事故にあったのはリンではない。
リンは目の前でそれを目撃してしまったのだ。
他人事のように話しているが、実はそのときミクも隣にいた。
でも、正直言うと、覚えていない。
周りの人からも、
「本当に覚えてないの?」とよく聞かれるが、覚えていないものは覚えていないのだ。仕方がない。
自分でも、幼馴染のリンが声をだせなくなるような大変な記憶がないのは嫌だ。
でも・・・なぜかその部分だけ、覚えていない。
リンにも話した。覚えていないと。何回もその話をした。
最初に話した時、リンが安心したような表情をしたようにみえたのは、気のせいだろうか。
それ以降は、少し残念そうに微笑むだけだった。
ミクはリンの担当医、ルカ先生にもそのことを相談した事がある。
するとルカ先生は、
「無理に思い出さなくてもいいの。
きっとミクちゃんも嫌だったから、その記憶をミクちゃんの脳が拒否しちゃったのよ。
でも大丈夫。それ以外の事は全部覚えているでしょう?そのうち記憶が戻るかもしれないし、
そんなに暗くならなくていいわよ。大丈夫、大丈夫!」
そういってにっこりと笑った。
だからミクはもう考えない事にしたのだ。
ルカ先生は優しくてとても綺麗な先生だ。
ミクがリンに会いにいくと、病室でルカ先生がリンに話しかけているところをよく見る。
ルカ先生はいつも笑顔で、リンに話しかけている。そんなルカ先生がミクは大好きだった。
コンコンッ
病室のドアをノックする音がした。
リンはミクを見る。
「開けるよ?」
ミクの問いにリンはこくんと頷いた。
ミクがそっとドアをあけると、そこにはレンが立っていた。
「あ、ミクちゃん来てたの?」
「レン!?久しぶり~っ!!」
ミクがレンの肩をバンバン叩くと、レンは「痛いってばwww」と言って笑った。
レンはリンの双子の弟だ。だから小さい頃からよく知っている。
レンはリンが入院してから家の仕事を一人でやっており、病院に来れる日が少なかったので、
ミクと会う機会も少なかった。
ミクはレンと会うのは何ヶ月ぶりだろう・・・と考えながら、
リンのために持ってきたお菓子の袋をあけた。
「ミクちゃん、それリンに持ってきたんじゃないのwww」
3個目のお菓子の袋をあけたところで、レンがミクに言った。
「そうだけどなにか?だってせっかく持ってきてもリン、遠慮してたべないんだもん!
みんなで食べようと思っておっきいの持ってきたの!だから食べよ!!」
ミクが真剣な顔で言うと、レンはため息をついた。
「ミクちゃんが食べたいだけでしょ?まったく・・・」
するとリンが「余計なこと言わないの」というふうにレンの頭を軽く叩いた。
「痛たっ!リン、何すんだよ~本当の事言っただけだろぉ」
リンが鋭くレンを睨む。
「はい、すみませんでした。」
声が出なくても、リンの圧勝なのだった。
コメント1
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ご意見・ご感想
kanpyo
その他
初投稿ですね、ご苦労様でした。
これはなにやら…数回にわたる作品になりそうで、楽しみです。
しっかりした文章が心地よいです。
頭の中に映像を印象づけるアイテム(チューリップ・お菓子)が
良いアクセントになってるかと。タイトルも気になるところです。
既に幾つかの伏線を張っているようで、これがどう収束するのかも
見ものですね。うん、気になりますね、続き。古川さんと同意です。
リンとレンの会話の立ち居地に綺羅々さんの「鏡音愛」のコダワリを感じました。
もちろん会話は、可愛らしく軽いユーモアもあって、とても良いです。
なんか学校の先生みたいに偉そうな事ばかり言ってスミマセンが
面白かったので続き、よろしくお願いしますね☆
2012/03/12 19:05:18
綺羅々
kanpyoさん・・・!
キーを打つ手が嬉しさで震えるんですけども・・・!
が、頑張って物語を収束させたいです!
いつもgdgdで終わるのでwww
鏡音愛を感じていただけたのがとても嬉しいです(*´д`*)
全然先生みたいなんかじゃないですよ!
これからもよろしくお願いします(´∀`*)
2012/03/12 20:32:35