「あの、お話って……?」
「……、あなたにやってもらいことがあるの。」
そう言うミクさんの表情はいつもの余裕そうなものとは違う、どこか深刻そうな表情だった。
思わず私も身構える。
一体、何を言われるのだろうか。
「まず私のことを話すわ。 私、もともとこの城の研究者なの」
やっとミクさんが白衣を着ている理由がわかった。
「だから、ついこの前はあなたの“血”に興味を持っちゃって……、私、興味を持つと周りが見えなくなるタイプなの」
「あの、それで……?」
第六感というのだろうか、なんだか嫌な予感がした。
そしてそれと同時にグミヤの顔が思い浮かんで、会いたくなった。
時計の秒針が進む音が更に私を焦らす。
「あなた、もうメイコには会ったのよね?」
「はい」
「じゃあ、メイコの体のことも?」
私は小さく頷いた。
メイコさんのことを思うと、胸が痛くなる。
そしてメイコさんが想っている人のことも……。
「じゃあ、話が早いわ。 あなたの血を使わせてもらいたいの」
一瞬、時が止まった気がした。
手が小刻みに震える。
「どうして、ですか?」
「……、あなたの血はどんな病気にも効くって言われているの。 だから、あなたの血を使うことが今、メイコの病気を治す唯一の方法なのよ。」
私の血が、メイコさんの病気を治す……。
その言葉は、とても魅力的だった。
もし私の血でメイコさんの病気が治るのなら、ぜひ協力したい。
そしてメイコさんに止めてもらいたい……、彼のことを。
「……、だけどそれは、あなたの命を危険にさらすことでもあるの。」
「えっ?」
「あくまでこれは推測、成功するとは限らないわ。 たとえ成功しても、大量の血を使うことであなたの体に大きな負担をかけることになるの。」
直接には言われていないけど、つまり私には“死”の危険性があるということなのだろう。
その言葉は、さっきまでの希望を簡単に打ち壊した。
「今すぐに返事しろ、なんて言わないわ。 でも、早く決断してくれないかしら? あなたも知っているでしょう、メイコの想い人が現世にいるカイトだってことを……」
わかっている。わかっているのに口が開かない。
「はい」っていう言葉が出てくれない。
無意識に脳がそれを阻止しているのだ。
頭に浮かぶのは、グミヤのことばかり。
もし私が死んでしまったら、もうグミヤには会えないのだ。
まだ私はグミヤに何も伝えていない。
私は、案の定答えを保留にして、ミクさんの部屋を出てその場に立ち尽くしていた。
私は一体、どうすればいいのだろう。
――――――
――――――――.........
グミヤのいる部屋のドアが開く。
入ってきたのは、綺麗な白髪を揺らし黒いスーツを身に纏った、ピコ。
「……ピコ」
「君に話があるんだ。」
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