戦神‐蒼‐

投稿日:2010/06/02 18:04:56 | 文字数:1,113文字 | 閲覧数:135 | カテゴリ:小説

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歌詞[イクサガミ]の小説版、KAITO視点です。
実はこっちを先に書いたので……まあ、後悔などしてません。
というか、ピアプロさん的にどこまで表現したら良いのやらさっぱりです。一応オブラートに包んだつもりですけれども。

次回はMEIKO視点の分を投稿します。

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TEXT
 

 ――鼻が利かない、と彼は息衝いた。


 戦が終わった時、既に夕刻となっていた。
 赤くなった日が照らすのは、沢山の“赤”を吸った地面と折り重なるように倒れた兵たち。敵も味方も関係なく、二度と動くことのない“ヒト”だったもの。
 それらが放ち出した腐臭と硝煙、そしてずっと立ち込めていた鉄の臭いで嗅覚は正常に働かなくなっていた。
 しかし、それは至極当然なのだ、と彼は独り言ちた。なぜなら、自分はその戦の中を駆け巡り、多くの敵を斬ったから。

「――如何した、カイト殿」

 戦場に一人佇む彼――カイトに、同じ軍のガクが声を掛ける。乱れた紫の髪が物語るように、彼もまたカイトと共に戦の最前線で刃を振るった。

「いや……何でもない」

「そうは見えぬ。何を考えているのだ」

 ごまかしのきかない同僚に、カイトは小さく溜息を吐く。

「……今回は、我々の勝ちだ。本当、紙一重のところだったけれども」

「ああ。“あのお方”がいらっしゃらなかったら、こうして言葉を交わすなど出来なかっただろうな」

 “あのお方”――その言葉に、カイトは顔を曇らせた。
 明らかに不利だと思われたこの戦。それを制することが出来たのは、とある人物が出陣したからだった。
 戦場で目立つ赤い装束を翻し、手にした刀で向かい来る者たちを容赦なく切り伏せた。この惨状は、殆どがその人――“彼女”が行ったようなものだ。


「カイト、ガク」


 “彼女”のよく通る声が、二人の耳に届く。
 夕日を背負い戦場から戻って来る姿は、通り名である“戦神(イクサガミ)”そのもの。

「帰るわ。準備をなさい」

「御意に」

 ガクはすぐさま頭を垂れ、本陣に踵を返した。しかし、カイトはその場から動かず、“その人”を見つめていた。

「……カイト、どうしたの」

 幼さが抜けた“彼女”の顔は所々赤黒く汚れているが、その凛とした表情がとてもよく似合っている。自分を見る瞳は、昔と同じ紅にも見える色。
 本当は優しい“彼女”を守ると約束したのは、まだ互いの身分など理解していなかった頃。

『ずっと、僕がめーちゃんを守るよ』

 そう、言ったのに。


「……貴女の仰る通りに、メイコ姫」


 そう呼ぶ度に、胸が痛むのだ。

 ――めーちゃん……メイコ、君は覚えているだろうか。

 わずか数歩の距離が、今はとても遠く感じるけれども。

 ――俺が“守りたい”のは、君だけだよ。昔も、今も。





   戦神‐蒼‐





 いつか、あの頃のように穏やかな時間を過ごすために。その時は、君が隣で笑ってくれるように。

 俺は、貴女の戦神となりましょう。

空神(うつがみ)です。
しがない物書きを自称しています。

活動は小説中心。時々歌詞もどきを書いています。

[好きなボカロ曲]
時忘人
七つの鐘
Paranoid Doll
siGrE
番凩

これらが特にお気に入り。

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