―――――私が今でも夢に見る光景がある。





あれは確か―――――初音ミク5周年のころの光景。





丁度ボーカロイドが表の世界にも認められ始めたころだった。





5周年という節目も相俟ってか、これまでの4回の誕生日とは打って変わってお祭り状態だった。





皆が私を祝ってどんちゃん騒ぎ。ファミマとコラボしたり、あちこちの同人ショップとコラボしたり。ライブやったり、お祝いの歌をたくさんの人からもらったり。





一番うれしかったのは、『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』が1000万再生行ったことだったかな。





あの時は本当に楽しかったー……。





あんな感じの大騒ぎはそれ以来何回かあった。10周年、15周年、20周年、30周年……39周年の時が同じぐらい凄かったかな。





それ以降は―――――覚えていない。その頃から私たちは新型ボーカロイドに乗り替えられてしまって、使われなくなったから。





今はもう、毎日がライブみたいな感じだから、誕生日は毎年ボカロマンションで静かに祝うだけにしてる。





ああ……だけど……もう一度だけ味わいたいなぁ……。










5周年の時みたいな、新鮮で、楽しくて、心が弾むような気持ち―――――……………。










『ミク姉!! 誕生日おめでとっ!!!』



旅行帰りの電車の中で、リンとレンの嬉しそうな声とともに渡されたのは山盛りのネギだった。


「わあああああぁぁぁぁ……ネギぃ……ネギがたくさぁん……!! しかも!! これ九条ネギだよね!!?」

「そ! 苦労したのよー……ブランドとしての九条ネギは廃れかけ同然だったからね……ここ数日、ドンキーたちの情報網をフル活用して純系を必死に集めたの!!」


ドヤ顔で自慢するルカ姉の後ろで、メイコ姐さんとカイト兄さんがひそひそ話をしている。


「……めーちゃん、警察の情報網ってこんなことに使うもんだっけ?」

「……ルカだから許されるといっても過言じゃないわ……」


……ですよねー。


でも確かなことは、警察の情報網でネギを探すなんて荒業使ってまで、私を祝おうとしてくれたこと。


「あたしたちも必死に集めたんだよー!! なんせ計200本だからね!!」

「そしてミク姉が周りを気にせずこれを受け取れるように、この車両丸ごとひとつ貸し切ったんだぜ!!」


『イエェーイッ!!!』


ぱーんとハイタッチをするリンとレン。二人も本当に、私のためにここまでしてくれたんだね。

……どう見てもこの車両を貸し切るために使った威光は、『黒猫組壊滅&黒山兵助捕縛』―――――ロシアンの所業っぽいけどね。


「で、あたしとカイトからは……はい、これ!」


入れ替わりでメイコ姐さんが渡してくれたのは……巨大なネギ型抱き枕!


「わああああ!! ナニコレ!? こんなのどこで売ってたの!!?」

「いや、あたしらで作ったの。ねえカイト?」

「うん、そうだよ。こう見えて僕ら裁縫は得意だからね」


『ファッ!!?』


私だけでなくルカ姉やリンとレンも素っ頓狂な声を上げた。まじっすか。

裁縫得意とか、そういったレベルの緻密さじゃない。大型の機械か何かで縫ったかのような緻密さだ。

ヴォカロ町の雑用係とまで言われるカイト兄さんはともかく、こんな繊細な作業をメイコ姐さんができるなんて……。

それほどまでに私の事、想っててくれたってことだよね。


「喬二博士が残してくれたネギ枕とネタが被っちゃって申し訳ないんだけど……こんなのでよかったかしら?」

「最高だよ……ホントにうれしい……!!」


みんながみんな、私のことを想っててくれる。


これだけでいい。これだけで――――――――――





「……さて、フィナーレは町のほうだね」





その時―――――ぼそりとルカ姉が呟いた言葉は、私の耳には届いていなかった。










「ふぅ~……一か月ぶりのヴォカロ町の空気ー……」

「都会や海もいいけど、やっぱりこの山に囲まれた素朴な感じが一番だね!」


リンとレンがはしゃぎながらかけていく。

私もその様子を笑いながら、ボカロマンションに向けて歩き出そうとしたが―――――



「待った、ミク! ちょっとこっち来なさい」

「ふえ?」



突如ルカ姉に呼び止められた。

そして言われるままに、ルカ姉の後ろをついていく。


「ねえ? ルカ姉? どこ行くのよ?」

「ふふふ……」


不敵な笑みを浮かべながら、ケータイを取り出して誰かに連絡を取っている。

そしてしばらくすると―――――



《あ! ミクさんが来たみたいだぞ!!》

《来たぞ来たぞ!! 主役来たぞ!!》



「……え……ええええ!!?」



目の前に広がった光景―――――それは、センターステージの前に広がる幾千の人々。町の皆だった。


「ミク!! ステージまで跳ぶよっ!!」

「え!? あ、ちょ、待っ……!!」


ルカ姉に急かされ思わず私はステージの真ん中までひとっとび。

トン、と降り立った瞬間湧き上がる歓声。それに応える様に一礼するルカ姉。


「Hi,Ladies&Gentleman!! Today is birthday of Miku!! Are you ready!!?」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』


ルカ姉の流暢な英語に応える様に、ひときわ大きな歓声が上がった。

開いた口が塞がらないでいると、ルカ姉が小声で話しかけてきた。


「わけわかんないって顔ね、ミク?」

「え……だって、誕生日ぐらい静かに祝おうって……ライブなんて毎日の事なんだからいいじゃんっていつも……」


「『毎日ライブだからぶっちゃけ飽きた』」


ぎく。


「『でもほんとは昔みたいにドキドキワクワクするようなBirthdayライブをしたい』」


ぎくぎくっ。


「ずーっとそんな感じの葛藤を毎年この時期続けてた。違う?」


ぎくぅ……。


「……図星みたいね」

「ううぅ……」


ぐうの音も出ない。まさに毎年この時期考えているのはそんな感じだ。





「……ミク。5周年の時の楽しさ……それは誕生日にやったライブだからだったんじゃない?」

「……どういうこと?」

「誕生日っていう特別な日にやったライブだから、すごくドキドキワクワクした。でもあなたは、この町で一度もBirthdayライブをやったことがないでしょ? 普段は毎日やってるのにね」

「あ……」

「普段のライブ=誕生日のライブじゃない。誕生日にやるからこそ―――――みんなで歌って踊って、そして祝うからこそ、最高に楽しいライブになるんじゃない?」

「……………!」





考えてみれば―――――そうだよ。その通りじゃない。


何を私、普段のライブで飽きたからって誕生日静かに過ごそうとか考えてたんだろ。

普段のライブと誕生日のライブが同じものだなんて根拠ないのにね。





―――――楽しんでみよう。判断するのはそれからでもいいじゃん。


「……歌おっか!」


『そう来なくっちゃああああ!!!!』



突如セットをぶち抜いてリンとレン、そしてメイコ兄さんとカイト兄さんが飛び出してきた。それ『ばーん』するものじゃない!


「もー、危ないなー……ったくもう……!」

「へへへ……ミク姉! 改めて、誕生日おめでとうだぜ!」

「……ふふッ、始めましょうか!」





『『『Happy Birthday,ミク!!!』』』










―――――私が今でもありありと思い出せる光景がある。





あれは確か―――――今の姿で目覚めて16回目の誕生日。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【ミク誕】Birthday Live!!

Queen of VOCALOID、ミクさん誕生日!!
こんにちはTurndogです。

いつもと同じことでも、特別な日にやると何だか違って見える。
よくあることですね。
例えるならばそうだねぇ……
どっぐちゃん『誕生日の鰹節はいつもの鰹節よりおいしいとか?』
そうそうそんな感じ……ってぅお!?どっぐちゃいつの間に!?
どっぐちゃん『そう言えばあたしの誕生日っていつなの?一年は建ったはずなのに祝ってもらった覚えないんだけど……!!』
え……えーと……
【バキ★グシャ★ボコッゴキィグチャッ☆】

(※一応どっぐちゃんの誕生日は、ゆるりーさんへのコメントで初めて『性転換!つんでれ☆どっぐちゃん』を使った時と考えています)

★追記★
どっぐちゃん誕生日は去年の3月28日でした。
つまり現在どっぐちゃんは1歳5か月ですね。
おめでとどっぐちゃn
「をっそい!!!!!」
【ぐちゃっ】

閲覧数:326

投稿日:2013/08/31 17:17:38

文字数:3,288文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    その他

    私、ターンドッグさんとの付き合いがながいせいか……
    タイトルで内容の8割を理解できるスキルを習得したらしいよww

    どっぐちゃんは、もうそんなに経ったのかぁ
    ……犬年齢なの?人年齢なの?
    というか、二歳にもなってないのに、そんなに強いのは大人になったらどんなに…

    2013/09/01 13:19:40

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      というかそもそも大体ワンパターンだからわかりやすいんじゃないかな←

      そもそもどっぐちゃんに我々の常識が通用するのかというところから始めましょうかww
      まともに体が年を取るとは思えない。

      2013/09/01 19:20:34

  • ゆるりー

    ゆるりー

    ご意見・ご感想

    ミク誕をー遅刻したー♪
    しかも投稿したらエラーではじかれたー らんらららん……
    ゆるりーです。

    誕生日を、ライブで祝ってくれる仲間がいる。
    心から、自分を大切にしてくれる人がいる。
    それだけで十分ですよね。
    別に全く祝ってもらえなくて、誕生日は基本病気になるという悲しい人が、これを読んで凄く感動したというわけじゃないよ?(必死)

    そしてネギづくし。
    すごいなミクさん!なぜか我が家のミクさんは、ネギじゃなくてみかんゼリーが好物です。
    どういうことなの。

    どっぐちゃん…ハッピーバースd
    「遅い!!!!」
    【どぐしゃ】

    2013/09/01 00:34:10

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      らん、らんらららんらんらん、らん、らんらららん……(ナウシカか

      それだけでミクさんは最高に幸せです。
      今この瞬間も、日本中の何百人何千人がミクさんを祝ってる(もう9月1日だとか言わない)。
      なんと幸せな歌姫でしょう。
      それに比べて私は家族や親せき合わせてせいぜい十数人にしか祝ってもらえません。
      一緒にミクさんから幸せを分けてもらおうや(おい

      うちのミクさん自室にネギのストックが500本あるぐらいですから!
      喬二博士の残したものもネギ枕ですから!
      そっちのミクさんがみかんゼリー好きなのはそりゃリンちゃんなうしてるからだろう!?wwwww

      ……来年はどっぐ誕上げよう。

      2013/09/01 00:54:13

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