大広間を出、城も出たアマネは、城下町全体を見渡せるような小高い丘に、一人佇んでいました。
「クククッ……フハハハハハハハ!!こんな簡単に受け取ってもらえるとはなぁっ……!!」
急に笑い出すアマネ。そこへ……
「何が、そんなに可笑しいのかしら?」
「おっと、これはこれは。アルデルカ様ではありませんか。」
「ルカ、で構わないわ。」
不意に現れたのは、控えめな色使いの、横留め式ローブに身を包み、鮮やかな桜色の髪の女性…イエロヴェラの先代観測者…アマネの前に観測者の職位についていた魔法使い『アルデルカ・メルグラネア』。
彼女はルカ、の愛称で親しまれています。
「何か、良いことでもあったのかしら?」
「えぇまぁ、そうですね。」
「……………怪しいわね。」
「そうでしょうねぇ。」
ルカの質問に、アマネは特に隠す態度無く答えます…が。
「ま、この先まで教える気はありませんが。」
「そう…なら、力付くで聞くまでよ。」
しかし結局、本命部分は隠すアマネ。
それを聞こうと、ルカは言うが早いかと同時に、敢えて留めずに開けておいたローブのスリットに腿に手を添わせます。
対抗する様に、アマネも懐に手を差し入れます。
「………でも、ここでやりあうのは得策ではないわね。」
「賢明ですね。」
が、場所が悪いと見たのか、ルカは大腿に添えていた手を離しました。
「あなたが何を企んでるか分からないけれども…」
一呼吸おき、ルカは言い放ちました。
「アンタなんかに、この国を好き勝手にさせやしない。」
その発言に、アマネは噴き出しました。
「好き勝手に?なんの事ですかねぇー?私はただ単に、陛下ご夫妻に祝の鏡を送っただけなんですがねぇ?」
皮肉たっぷりに毒を吐き、更にルカに一言を残し、丘を去りました。
「ま、あなたが何をしようとも、私の目的が潰える事は無いでしょうけどねぇ。」
………と。
そして、その言葉を受けたルカは。
「こっちにも、策はあるよの………ひとまず、ロヴェラとラエラに一報入れないとね。」
誰にでもなく呟き、丘を去りました。
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