映像を見ていた。

頭の中を、映画のダイジェストのように、記憶が流れていく。



「…あぁ、そうか」





『非現実? こんなの現実の範疇を超えていないくだらないことよ』

笑いながら冷たい目をした初音。




『あのー。ここって……、MGR団、でいいんですか?』

スマホを弄りながら淡々と告げるグミ。




『私だよ。私があんたを影神にまで育てたんだ。感謝しろよ?』

皮肉めいたように笑うリリィ。




『リンの にらみつけるこうげき!
 ミクたちの こうげきりょくが すごくさがった!』



「そこ思い出すところじゃないでしょ!?」

「おぉ、初音はしっかりツッコミをしてくれるね」




シリアスな雰囲気をコメディに変えていくのは、やっぱり初音。


「変わらないな…“前”からずっと」

「ふーん…思い出したんだ?」

「あぁ。僕は…“断片”だろう?」

「そ。結局、世界はリセットされた。そしていくつかに分かれる」

「つまり、ここみたいな世界もある。平行世界説ね」



全てがわかったわけではないけど、今の僕なら箱庭とかは理解できる。




「今のあんたは、以前の私みたいな現象が起きてた。『自分の使命に関する記憶』の引継ぎ…前に私自身が初代神管だってこと、わからなかったことがあったでしょ?」

「あぁ。つまり僕もそれが起きて、なんかその辺の記憶がまた引き継がれなかったってことだろ?」

「うん。でも変なのよね」

「何がだ?」

「普通、こういうバグは何度も起きるものではないのよ。記憶の引継ぎってのは通常、『引き継がれない(バグ)』ってことは起きないように、あらかじめ設定されてるのよ」

「…で?」



「……何か、異変が起きてるわ。私達の知らないところで」


「もしかしたら、以前の箱庭の関係者の仕業かもな」



僕と初音が話をしていると、カイトが勝手に話に入ってきた。



「あんたは入ってこなくていいのよ、バカイト」

「それも酷くないか?」



再びバカイトと言われたからか、ちょっと落ち込んでいるようにも見える。

よく聞いたら「バカって言われた…バカって言われた…そんなにバカに見えるか…傷つく…」とかぼやいていた。

そんなカイトを気にも留めない初音。いや、ちょっとは気にしてやれ。



「で。この鍵なんだっけど~」



初音はメモから落ちた鍵を拾い上げる。

心なしか、楽しそうに見える。

もしかしてカイトを落ち込ませたことが嬉しいとか、そんなんじゃないよな。

決してそんなんじゃないよな。僕は信じないぞ。



「あ、そうか。で、それってなんの鍵だ?」

「ん?そうね、なんの鍵かしらねえ……?」

「実は知っていたりするんじゃないのか?」

「実は知らなかったりするのよ?」



初音は笑いながら答える。

本当に知らないのか、その表情からは窺い知れない。

大体初音はいつも何を言っているか解らない。

冗談も言うし、というかいつも冗談しか言わないような気がする。



「本当は知っているんだろ?」

「知らなーい」

「…冗談を言うのも大概にしろ。怒るぞ」

「怖い怖い。つれないわね」



やーねー、と近所のおばさんが言いそうな台詞を笑いながら言う初音。

お前、どっかおかしいんじゃないのか。



「教えてほしい?」

「当たり前だろ、知らなきゃ進めない」

「…そうね。私もしっかりと理解しているわけではないけど…ゆかりさん解る?」

「もちろん!」



おぉ、初音よりは頼れそうだ。

ゆかりさんは満面の笑みを浮かべ、チェーンソーを大きく振りかざし、



「知らない」



声のトーンを大きく落とし、そうはっきりと告げた。

どうしてそんな無表情で、低い声で、しかもチェーンソーを振りかざすのか。

この世で一番幸せなバスツアーでもするんだろうか。

すごく怖い。



「だよね。というわけで、私が説明するわね」

「いや、わかってたなら最初から自分で説明してくれ…」



初音って、やっぱりいつもふざけてると思う。

そこはもう、どうしようもないんだろうか。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リレー】僕と彼女の不思議な夏休み 14

かなり遅れてしまい、申し訳ありません。
マイページでもしばらく更新していませんでした。

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投稿日:2013/07/07 18:52:38

文字数:1,737文字

カテゴリ:小説

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