そして、ミクのワールドツアーが終了した。今日、ミクが日本に帰って来る日である。空港の入国ゲートの前では、雅彦が待っていた。雅彦は時計を見た。もうそろそろ、ミクの乗った便が到着するはずなのだが…。そんなことを考えていると、ゲートに飛行機から降りて来た客と思しき一団がやってきた。目を皿のようにして探す雅彦。すると、ミクがいた。ミクの元へ向かう雅彦。しばらくすると、ミクのほうでも気がついたのか、ミクが雅彦に手を振った。
 「雅彦さん、ただい…」
 ミクが言い終わる前に、雅彦がミクを思いっきり抱きしめた。
 「ミク、お帰りなさい」
 ミクを抱きしめながら話す雅彦。二人とも、お互いの体温を感じながらそのままの体勢でいた。
 「ミク、ワールドツアー、大丈夫だったかい?」
 「はい、特に問題はありませんでした」
 「ツアーでは問題なく自分のパフォーマンスが出せたかい?」
 「はい、問題なく出せました」
 「良かった。僕との喧嘩でパフォーマンスが落ちていたらどうしようかと思っていたんだ」
 ミクのことを聞いて、安心する雅彦。
 「雅彦さん、私はそこまで子供じゃないです。喧嘩のことを引きずったのは、喧嘩のあとの練習位で、それもほんの少しの期間だけで、ワールドツアーが始まった時には、歌や舞台上のパフォーマンスはいつもどおりだったわ、プライベートでどんなことがあっても仕事では引きずら無いのは、私たちが常日頃から、MEIKO姉さんに言われていたことだから。それはきちんと守りました」
 「それは良かった」
 「…雅彦さん、もうそろそろ、この体勢、解いてくれませんか」
 「やだ」
 「雅彦さん、そんなわがまま言わないで」
 少し呆れたように言うミク。
 「ごめん、ワールドツアーでミクとほとんど話すらできなかった反動が出ちゃったんだ。もう少し、このままでいさせて欲しいんだ。僕のわがまま、聞いてくれる?」
 「…分かりました。今回は特別です」
 「その代わりじゃないけど、今日の夕食は豪華だよ、ミクが喜ぶ様に、ネギも一杯入れたものを作るつもりだし」
 その言葉に、ミクの顔が明るくなる。
 「本当ですか?」
 「ああ、量だけじゃなくて、良いネギを使ってるよ」
 「今から楽しみです」
 「そう言ってくれると嬉しいよ」
 そんな会話をしていると、急にそわそわしだすミク。
 「ミク、どうしたんだい?」
 「…雅彦さん、周囲を見て下さい」
 そう言って周囲を見る雅彦。見ると、周囲に野次馬の集団ができている。雅彦とミクのことについてあれこれ言っている。
 「ねえ、あれって初音ミクじゃないかしら?」
 「初音ミクを抱きしめてるのって、安田雅彦じゃない?あの、ミクの恋人の」
 「初音ミクのワールドツアーが終わったから、その出迎えだろうな」
 「こいつは貴重だ。撮っておこうぜ」
 そんな声が聞こえる。見ると、この光景を記録しておこうとする人も見えた。
 「…まずいな、ミク、逃げるぞ」
 「はい」
 そういってミクをお姫様だっこする雅彦。その行為に、周囲からどよめきがあがる。そして、雅彦は脱兎の如くその場をあとにした。
 「…雅彦さん、恥ずかしいです」
 さっきまでいた場所が見えなくなると、流石にミクも恥ずかしくなったらしい。
 「でも、あの場所をあとにするにはこうするしかないよ」
 「…もう大丈夫ですよ。下ろして下さい」
 「分かった。ここからはゆっくり帰ろうか」
 「そうですね」
 そういってミクを下した雅彦。そうして二人はゆっくりと家路についた。

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初音ミクとパラダイムシフト3 3章28節

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投稿日:2017/03/06 22:45:52

文字数:1,477文字

カテゴリ:小説

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