遠い昔のある日、町外れ森の中。
永遠(とわ)に生きる魔女は、
誰とも会おうとはしませんでした。
心優しい少年は、魔女の元へ通い続け、
何度無下にされても扉を叩き続けました。
「隠れてないで、出ておいで?
僕と一緒に、話をしよう」
姿も見せず、魔女は一言、
青い薔薇を摘んできて。
歩き出した少年は、
はてない夢の宛て無き放浪者。
世界の半分を、希望と共に進みます。
誰も見た事ない、
不可能を見つけに行く。
たった一人の笑顔を見つけに。
月日は消えてくように
通り過ぎて行きました。
赤や白はあっても、
青は見つけられません。
あるわけ無いのに馬鹿だよな。
周りはそう笑いました。
理想論など、壊れてしまえばいいのに。
「大丈夫なんて言葉、
一体どこにあると言うんだろう」
独りごちた少年は
押しつぶされそうな闇夜と
同じ色に染まった瞼を下ろしました。
「きっと、あの人も同じ気持ちさ」
希望の星は、夜を跨いで、
青い空の、虹になりました。
春夏秋冬を通り抜け、
その少年は帰路につきます。
世界のもう半分も歩いて、
孤独の三文字を知りました。
青い薔薇の咲くその土地は、
未だどこにも見当たりません。
死ねない魔女が願ったもの。
それは薔薇の形をした不可能でした。
誰かと笑い合う、くだらない日々。
崩れるからこそ輝く時間。
当たり前で当たり前じゃない奇跡。
「歩き出したその先に
願ったものがあるわけじゃないけど
一つだけ一番
大切なものを見つけたよ。
未来を怖がるよりも、
今を踏み出せたら、ほら」
少年は魔女の手を取りました。
流れ込んだ暖かさは、
固まった心を溶かします。
絶望は、孤独は、
またたく間に去っていきました。
不可能を笑顔に変えた二人を包む光に
一輪、幸せの色がありました。
「ほらね、大丈夫。僕らなら」
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