溢れ返る想いがある。何かを伝えたい、けれどその手段が分からない。どうすればいいのか分からない。どうしようもできない。目の前で起こっている事象に対してなすすべもなく、ただ見つめることしかできない。
 けれど、だからこそ。無力だからこそ。「次」を拓くために私はあがきもがくように、手を伸ばし前を見て、何かを探しているのだろう。

――――――

 ふと目を覚ました瞬間、言いようのない衝動を私は感じていた。
 息苦しいほどまでに張り詰めたもどかしい感覚と、それを糧に前へ進もうとする力。
「なにか、、、そんな夢でも見たのかな」
そう呟きながら身体を起こし、私は枕もとに置いてある目覚まし時計を見た。
 と、時計の針はいつもの時間をとうに過ぎた時間を指していて。
「っ、、マスター、起きてっ、寝坊っ」
声にならない悲鳴を上げながら、慌ててベッドから飛び起きた。
 目覚ましを無意識で止めてしまったようだ。それにしても時間になっても起こされなかったということは、マスターも自分と同じように寝坊してしまっているだろうか。慌てふためきながら部屋から飛び出した私だったが、しかしそんな私と違い、マスターはきちんと時間通りに起きたようだった。
 広いリビングに置かれたテーブルで、我がマスターはきちんと身支度を整えて優雅に朝ごはんを食べていた。
「メイコが寝坊なんて珍しいわね」
綺麗な形に仕上がったオムレツを涼やかな表情で食しているマスターに脱力しながら、ていうか起こしてください。と私はぼやいた。
「もー、先に起きているなら、起こしてくださいよマスター」
「だって気持ちよさげに眠っていたし、朝食くらい自分で作れるもの」
そう年齢に似合わない大人びた口調で言うマスターの向かいに腰を下ろし、確かに美味しそう。と私は呟いた。
「オムレツ、美味しそう」
「メイコの分も台所にあるから。まず顔でも洗ってくれば?」
くすりと笑ってそういうマスターに、そうします。と私は苦笑しながら再び腰を上げた。
 私の設定年齢よりもはるかに年下のマスターなのだが、時々こうやって立場が逆になったりもする。一応、私は姉キャラなんだけどなぁ。そんな事を思いながら洗面所に向かいかけた私の背中に、そういえば、と何かを思い出したようにマスターが声をかけた。
「なんですか?」
「うん、メイコ、さっき寝言言っていたわよ。一体どんな夢を見ていたの?」
くすくすと切れ長の瞳を細めてそう言うマスターに、私は寝言まで聞かれたのか、と頬を染めながら、覚えていませんよ。と言った。
「そんな、夢なんか覚えていられるものじゃないですよ」
ていうかそんな寝言なんか言っていたなんて、と顔を顰める私に、綺麗な声だったわ、とマスターは何かを思い出すように中空を見上げながら言った。
「とても短い、呟きというか旋律というか。印象的なフレーズだった」
そう言いながらマスターはジュースが注がれたグラスの縁を、チリン、とフォークで叩いた。

―――――

 短い抑揚。素早く、けれど軽やかに呪文を紡ぐ。そうすればきっと大きな魔力が発動する。
 けれど、私を含めて多くの術者の力では、魔力を百パーセント引き出す事が出来ない。
 小さくため息をついて、補助のための魔法陣を石板に書いてみる。シンプルな形でないと実践では使えない。けれど大きな力を生み出そうとすればするほど、複雑な陣を書かなければならない。
 これは駄目だわ、普通の術者じゃ使えない。本当に上級の、それこそ彼のような術者じゃないと使いこなせない。
 石板に描いた中途半端な魔法陣をチョークで塗りつぶし、少し気分転換でもしよう、と私は立ち上がった。
 戸棚からグラスを取り出して、作り置いておいた甘酸っぱいシロップを注ぐ。水をくみ上げてその中に注ぎ、きちんと混ざり合うようにかちゃかちゃとスプーンで混ぜる。日常の、体に慣れしたしんだ一連の行動。かちゃかちゃとスプーンでグラスの中身をかき混ぜながら、ぼんやりと先ほどの呪文の配列を考える。
 素早く、けれど力み過ぎないように。軽やかに、けれどふわふわしている感じではなく。
 いつの間にか深く思考を巡らせていたようで。手元がおろそかになってしまっていた。混ぜるその手に知らず力がこもり、かちゃん、ちりん、とスプーンとグラスが触れ合う音が大きく響いた。
 チリン、チリン、チリン
 奇妙に響いたその硬質の音に、ふと私は手を止めた。
 素早く、けれど軽やかな。
 今のこの感じ。

 作ったばかりの飲み物を置き去りに、私はまた机へ向かった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

重なる音  【シェアワールド】響奏曲【異世界×現代】

もうひとつ、うp

重なる世界ならば、こういうのもアリかな?と思いつつ^_^;
無意識の重なり、的なイメージで

…夢、というか寝言を言うのかな、メイコさんって…

読んでいただきありがとうございました☆

※そして直そうと思っていたところを直し忘れていた!!
ちょっと修正

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閲覧数:359

投稿日:2011/05/17 20:47:06

文字数:1,889文字

カテゴリ:小説

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  • 藍流

    藍流

    コメントのお返し

    うわぁ、なんか凄いわかる……!
    今これ言わせちゃったら後のあれの印象が薄れるから……とか考えるよ?!
    意図的に繰り返す単語とか、逆に避ける単語とか、計算しますよねw

    石盤&チョークはホントGJ、ファインプレイですよ≧∇≦b
    何となく、紙とペンというより「羊皮紙と羽ペン」だなぁと思ってたんですが、違ってはないんだけどもうひとつ何か、う?ん?となってたのです。
    物凄いしっくりきたよ……! 目から鱗ってこんな感じか!!

    なんかめーちゃん、携帯用に特製の石盤作って持ち歩いてそうだな。
    薄く軽い石板を術で強化して(そもそも「薄く軽く」石を切り出す時点で術じゃないと無理っぽい)、書いた字が擦れて消えないようにカバーする蓋付けて(コンパクトみたいな感じで)
    これもやっぱり考案はめーちゃんがして、実際作ったのは兄さんに違いないw
    2,3回は加減がわからなくて石駄目にしたりしながら……あれやばいこれも萌えるわw
    ってすみません、脱線しました☆←

    2011/05/18 23:37:33

  • 藍流

    藍流

    その他

    こちらも投下乙ですー!
    今読み返したらさっきとちょっと違ってて吃驚したw

    うわぁ、もう、うわぁ。凄い好き……!
    こういう、気付かないところで同調して影響しあってるのとかね、美味しいですよね!w
    冒頭の、もがいてる、けど顔はちゃんと上を向いてる感じとか。
    寝坊するめーちゃんとか(w
    凄い好き……!(大事な事なので2回言いました)

    あとあれ、細かいことなんですけど、「石版」に「チョーク」っていうのが!
    流石は副官、ベストチョイスだ! エクセレント……むしろマーベラス!
    ちょっともう、色々と漲りすぎてやばいですよw
    なんかかなりあれこれ浮かんでて書くの追いつかない! 誰か私の代わりに仕事行って!w

    2011/05/17 23:36:48

    • sunny_m

      sunny_m

      >藍流さん
      あわてて投稿したから、変更前の方をうpしてました^_^;
      細かなところだけど、今後の展開とかを絡めて文字選びをしたくなっているw

      こういうのもアリかな、とやってみたのですが。喜んでもらえてうれしいです?☆
      知らないうちに影響し合っている。というか、現代と無意識化で繋がっていたらかなり美味しい!と、ホントそんな感じw
      めーちゃんは「開拓者」なイメージが前面に出ているかもしれません。

      やったよ長官に褒められたよ!!wてか副官wなんか照れますなぁ(*^_^*)
      石版とかチョークとか、これもまた私の趣味全開ですよww
      こういう小道具って、些細なものだけど、ツボでもあるよね…!
      重要な事だけ紙に記して、普通のメモとかは石板に、かつかつ書き込むイメージで。
      そして、このメイコさんは常にポケットにチョークとかをポケットに入れてそう…w

      2011/05/18 23:07:29

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