海に近い老舗の旅館に泊まって二日目の朝、リンは波の音で目が覚めた。それほど大きくは無い波の音だが普段聞き慣れていない所為か、或いは眠り慣れない場所だからか微かな音にも身体が反応してしまった。
まだ少し眠い身体をゆっくりと起き上がらせ、ゴシゴシと目を擦る。ふぁ、と欠伸をしてふと横を見てみると隣で眠っていた筈のレンがいない。如何したのだろうと思いつつもリンはまだ眠っているミクとネルを起こさない様にゆっくりと布団を抜け出し、荷物の中から服を取り出してさっと着替えると特に行こうと決めていた訳ではないが海岸まで行こうと思い立ち、部屋から出た。
ザザ・・・ ザザ・・・
「あれ? リン起きたんだ」
海までは走っても五分程しか掛からなかった。そして海岸に辿り着いてみると何故かレンが其処にいた。
「此処にいたんだ。珍しいね、レンが早く起きるなんて」
「ん~、まぁ、な。波の音で目が覚めた。まだ朝早かったし皆起こすのも癪だから此処に来た、て訳」
「へぇ・・・」
リンはそう呟いて波打ち際まで近付いた。ザパ、と少しだけかかった水は程よい冷たさでとても気持ち良かった。次に両手の平をつける。寝覚めの身体にこの冷たさはとても心地良く、気持がすっきりする様だった。
「やっぱ冷たいね、水。まだ泳ぐには早いもんね」
「まぁ、ミク姉は何時でも泳ぐ気満々だろうな。ネルは・・・やっぱセーブ係?」
「でしょうね」
クスクスと笑ってリンは海水につけていた両手を取り出した。ポタポタと指から落ちていく雫は朝日に当たってキラキラと輝いていた。
「あ、こんなとこにいた! リンちゃん、レン君、探したよ! もう朝御飯だって! 行こ!」
後ろから呼ばれ、振り返ってみるとミクがパジャマから着替えた状態で此方にかけて来ていた。因みに、裸足である。
「何で裸足?」
「裸足の方が足腰鍛えるのに良いんだよ! それに砂浜は地面みたいにしっかりしてないからね! それとも相まってかなりな効果が得られるんだって。ほら、剣道って足運びとかが重要じゃない? 空手とかも足腰とかさ。それで此処、良いかな~って・・・」
『強化合宿って嘘じゃ無かったんだ!?』
「いや、嘘だけど。これは私がやりたいからやってるだけであって、ね? まっさかそんな、皆に無理強いなんてさせないよぉ」
あっはは~、とあっけらかんと笑って見せながらミクは言った。そして自分が此処に来た本来の目的を思い出し、二人を連れ、旅館に戻っていった。
そして、夕暮れが近くなって来た時――
「じゃ、ちょっと出掛けて来るね」
「いってらっしゃーい」
いってきまーす、と返してリンは部屋から出て行った。襖の閉まる音がして、ミクはフゥ、と息をついた。
「でも大丈夫かな・・・リンちゃん一人で・・・」
「大丈夫だろ。リンだって伊達に空手やってない・・・」
呆れた様な様子でネルはミクに言い、なぁ、とレンに振った。
「ん? あぁ・・・大抵の奴ならリンの相手にもならないだろうし・・・でもなぁ・・・」
そう言ってレンは胸元をギュ、と握る。その様子にミクとネルの目が鋭くなる。
「・・・如何した?」
普段よりも低い声でネルが問う。
「何か・・・胸騒ぎがする・・・んだよなぁ・・・」
「・・・・・・・・・・・・七年前の・・・事故の時・・・・・・みたいに?」
言いたくないが、だがしかし、振り絞る様な口調でミクが言った。七年前の事故、言わなくとも分かる、レンがトラックに轢かれそうになったリンを助け、大怪我を負った事故。その事故が起こる直前も、レンは何故か、胸騒ぎがした、とネルとミクに言っていたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
少しだけ、悲しそうな表情をしつつもレンはコクリと頷いた。
「でも、前みたいに強くは無いんだ。気の所為って感じる位の・・・」
「て事は・・・まだリンちゃんは危険に晒されてない・・・て事・・・?」
「多分・・・な・・・」
「その多分、程信頼できる多分は無いな」
フ、と不適な笑みを浮かべながらネルはそう言った。
丁度、その頃、リンはと言うと――
「誰? あんた等・・・」
不良に囲まれていた。
「こんな人気の無い所、良く来たなぁ・・・姉ちゃんよぉ・・・」
「地元の人間もこないっつーのに・・・物好きだなぁ・・・」
(・・・だからか・・・。まぁ、人気の無い方をわざわざ選んだあたしもあたし、だけどね・・・)
フゥ、と息を付いて目だけを動かし、周りを見てみる。相手は十五人程。男ばかりだ。年は中学生から高校生位までだろうか。リンと同い年に見える男子(?)が多かった。手には金属バット、竹刀、木刀、等々の武器を持っていた。だがしかし、その武器を使う様子は見られない。やはり女子だからと油断されているのだろう。
「まぁ、俺達も無駄な争いは嫌いなんだ。出来れば女に手は出したくない。だからよぉ、有り金全部置いていきゃぁ、許してやっても良いぜ」
「嘘でしょうね」
ハァ、と溜息を付いてリンは即答する。不良達が一瞬、どよめいた。
「だって、あたし、無一文だもん。荷物持ってきてないし。見りゃぁ分かんじゃん。あんた等馬鹿?」
リンの言うとおりだった。リンはここら辺を探索しに来ただけで、別に何かを買いに来た、と言う訳ではない。
「っ・・・! ならこうするしかねぇな・・・」
突然、リンの近くにいた一人がリンの腕を掴んだ。何をされるかなど、既に分かり切っている。リンは悲鳴の一つも上げずにその捕まれた腕を引っつかみ、足払いをし、そのまま背負い投げた。
瞬間、輪が乱れる。
「背負い投げ、いや、一本背負い? まぁ、どちらにしろ、柔道の技である事には変わりないよね・・・。作者もさ、もう少し空手の技調べてから書いた方が良かったんじゃないの?」
それは否めない。
「・・・っ! このくそ女っ・・・!」
仲間が倒されていきり立ったのか、一気に不良達がリンに向かって来た。一対複数人、か・・・大丈夫かな・・・? と思いつつリンは不良達を足払い、鳩尾を殴り、竹刀をへし折り、地面に突っ伏させた。
「何だ・・・コイツ・・・つえぇ・・・!」
「いや、隙をみりゃぁ大丈夫だろう・・・」
「?」
一時、攻撃は止み、不良達はヒソヒソと何か話し始めた。思わずリンも動きを止める。それが罠だという事にリンは気付かなかった。リンの後ろからは、木製バットをその手に持った男が息を殺しながらリンに歩み寄っていた。
それよりも、少し前、旅館では――
「・・・・・・・・・・・・」
「レン・・・君・・・?」
先程からレンが一言も発しない。少し不安になったミクが話しかけても反応は無い。ギュウ、と握り締めた拳には力が入りすぎているのか少し白く見えた。
「リン、か・・・」
ネルが小声でそう言うとレンはコクリと頷いた。そして、ス、と立ち上がり、出口の方に向かった。
「え? え? レン君?」
ミクが慌てている間にレンは靴を片手に戻ってきた。そして、不意に窓を思い切り開け放った。
「ちょ、レン!? ・・・まさか!?」
「ミク姉、ネル! 後から援護頼む!」
それだけ言うとレンは窓の縁で靴を履き終えると其のまま飛び降りた。
「レン君、此処三階! ・・・もう、それじゃ、行こうか、ネルちゃん」
「あぁ・・・。まさか、これの出番が早々にあるとは、思いもしなかったけどな・・・」
フ、と笑い合うと二人は自分の荷物から何かを探しだす。そして、その手に握られていたのは、ミクはスラリと伸びた一本の木刀、ネルは長さ五十センチ程の木刀を、両手に其々一本ずつ握っていた。
「じゃぁ、いきますか」
「そうだな」
そう言って、二人もレンと同じ様に窓から飛び降りて行ったのだった・・・。
その頃、リンは――
「おらっ!」
「!」
振り下ろされた木製バットを避け、そしてそのまま回し蹴りを繰り出しバットもろとも相手の頭を蹴り飛ばした。
そして、息を付く間もなく、リンは後ろから羽交い絞めにされた。
「っ・・・!」
しまった、そう思ったがもう既に遅い。直ぐに数人の男に囲まれた。悲鳴を上げるなどと言う事はしない。隙を見て、逃げ出す。
「へぇ・・・良く見りゃ結構可愛いじゃねぇか・・・」
「金髪碧眼・・・。外人か?」
「親も完璧な日本人だよ・・・」
少しむっとしてぶっきら棒にそう応えた。へぇ、と言う驚きの声が聞こえたがこんな時には如何でも良い。
「まぁ、そんな事、如何でも良いんだけどよ・・・」
そう言って、男の手がリンの腿を触った。ゾクリと嫌な感触が身体中を走った。
一人の男が始めると次々を男達の手が伸びてくる。それらがリンに触れる前に――
誰かに、身体を引っ張られた。
後ろの男ではない。後ろの男がリンを抑えていたのを誰かが引っぺがし、其のままリンを引っ張った感じだった。
そして、この感触。この匂い。間違えるまでも無い。間違えるはずなど無い。
あぁ、来てくれたんだ。助けに来てくれたんだ。
「俺の女に、手を出すな」
レンはリンを不良達から引き剥がすとその背にリンを庇う様にして、相手をきつく睨みつけながら、そう言った。
戦闘、開始
何か前置きが長くなった・・・。取り合えず・・・何だろうなぁ・・・これ。
書きたかったシーンばっかりで結構有頂天になってますね。
そしてリンが・・・あばば。これ以上は無理なのでその前にレンに助けに来てもらいました。危ない危ない・・・。フゥ・・・
まぁでも此処から先、まだまだ戦闘シーン一杯入ると思います。だってタイトル戦闘開始だし・・・(区切りあるけどね
ミクとネルも戦う予定だし・・・。書けるかしら・・・(頑張れよ
それでは読んで頂き有難う御座いました!
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