「あれ? なんだろ?」
小さく独り言を言ってしまったのはいつものクセ。
いつも隣にレンがいるから、たまに一人で行動する時もつい、隣にいるように話しかけちゃう。
ま、それはいいとして。
あたしがなんだろ? と呟いたのは、妙なモノを見つけたから。
道の真ん中でもぞもぞとうごくそれは、遠目に大雑把に見れば楕円形。だけど、常に境界がぼやけている感じ。曇りガラスを通して見たような変な感覚がして、一瞬慌てて目をこすっちゃった。
黒っぽいかとおもえば、瞬きしたらカラフルにも見えて、進むかと思えば後退したり、まるでもぐろうとするように片方の端を地面にすりつけたり、へーんな動きを繰り返している。
なんか、キモチワルイ。でもなんか、面白そー。
ああでも、今日はやっぱ駄目。気分が乗らないの。
いつもなら、いつもならね。
手を引っ張って行くよ? アレ何アレ何? って興味深々で。あたしが駆け出したらぜったいついてくるって自信あるし。だから、あたしはどこにでも駆けて行けるんだし。
でも今は駄目ー。
覇気がない。
やる気がまるでなし。
いつも喧嘩した後に来るこの嫌な感じ。
もうやんなっちゃう。
後悔と自己嫌悪とがぐわぁって襲ってきて、それでもどこかで意地を張りたくて謝りたくないそんな自分がまたキライな嫌な気分。最低最悪最悪。こんな気分のときは歌だって上手く歌えない。知っているから歌わない。
奇妙なモノをスルーして、そのまま進もうと思った。道は結構広いし、注意して歩けば触れないで歩けるし。キミに構ってあげる気はないの、バイバイってつん、と頭を逸らして通り過ぎようとしたのに。
にゃあ。
って、モザイクかかってるみたいにいまいち境界があいまいなその物体がいきなり音を発するから不意をつかれて脇を通り様に思い切り見下ろしてしまった足元。なんだろ、この感覚。近くで見ても境界はまるではっきりしていなくて、強いて言うなら細かい粒子のようなものがたくさんたくさん集まって、一つ一つ色々な色をしているけれど、それが集まって遠くからは黒っぽい一つのものに見えるけど、個々に別々のもので、それが常に移動してい場所を定めないでいるような感じなのだとおもう。なんかの集合体。って気持ち悪いよね。大抵。毛虫の集合体とか……。そんな感じで近くで見ても大変キモチワルイ。っていうかなんか、酔いそう。うぇっ。
でもこれ、いまの音、何の音?
一瞬、鳴き声に聞こえたの。だから、足とめた。生き物って言うか、猫の声。
でもコレ、猫じゃなくね? どう見ても猫じゃないよねぇ?
と硬直して考えていたら、それがもぞってひときわ大きく動いて、あ、なんかやばいかんじ、と思った瞬間まるで……なんというのだろう、あの、漁師とかが使う投網のように突然広がって、あたしの目の前に広がった。
ってナニコレナニコレぇぇぇぇぇ!?
ちょっとぉ、誰か。助けてよー!
助けて!
助けに来てよ!

レンっ!!!

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ライセンス

  • 非営利目的に限ります

リンが猫になる話

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投稿日:2008/11/16 19:17:39

文字数:1,224文字

カテゴリ:小説

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