~第5章~
希望
私は目を覚ました
ここはどこだ?
窓辺では鳥たちがさえずっている
私は寝ていたベットから立ち上がろうとした瞬間
部屋のドアが開き男の子が出てきた
その時私は全て思い出した
彼の名前はサウル・ノヴァーリ
昨日彼がお菓子を食べてくれて
お代の代わりに家に呼ばれて
名乗ろうとしたときその場に倒れた
どうして名前が・・・
「っう!!」
私は立ち上がろうとしたが
また昨日と同じ頭痛が襲い
ベットに倒れた
昨日とは違い意識はなくなっていない
彼は私のために持ってきたスープをテーブルに置き
私に駆け寄ってきた
「大丈夫!?しっかりしろ!」
「うう・・・」
私はなんとか起き上がり
彼と同じ目線になった
そしたら彼が
「君に大事な話がある。その間に絶対自分の名前を思い出そうとするな。また頭痛が起こる」
彼は焦りながらも冷静に話した
「大事な話?」
「そう、君に希望を与えるかもしれない話」
希望・・・
私は頷き彼の話を聞くことにした
「ここに一冊の絵本がある。題名は『林檎』。読んでみて」
「うん」
私は彼の持っていた絵本を受取り
メルヘンチックな表紙を開いた
そこに書いてあったのはだいたいこんな話だった
昔々あるところに大きな時計塔が目立つひとつの国がありました
そこに住まう人々には代々伝わる「呪い」がありました
その呪いとは永遠に生きられる代わりに心をなくすという呪いでした
そして唯一その呪いを解くことが
街外れにある湖畔にある一本の木に実る
赤く熟された「林檎」という果実を食べること
そしてその木のすぐそこで生活をしていた一人の少女は
小さい頃その林檎を食べてしまい
この世界でたったひとり呪いがなく生きていた
その少女は自分以外の人々にも
林檎を食べさせ呪いをとこうとしました
しかし呪いのせいで少女に話しかけようとした者は一人としていませんでした
さらにひどいことに数年後
呪いがかかっているのは少女の方だと言う者が出てきて
少女に呪いがかけられていることになってしまいました
少女はそれでも諦めず
林檎を食べさせようとしました
しかし呪いのかかった人々は見向きもせず
少女の前を通り過ぎていきました
少女は泣いてしまいました
結局少女は世界の人々を救うことができませんでした
「・・・」
私は言葉を失った
「この物語の少女、君の事だと思うんだ」
そうだ
私は小さい頃から一人で
すぐそこにあった木に実っていた
赤い果実・・・「林檎」を食べてしまったんだ
そして私の名前は・・・
「イヴ・アルマ!」
「!?」
「私の名前・・・イヴ・アルマ!」
「おお!思い出せたか!」
私はようやく自分の名前を思い出すことができた
しかしどうして名前を思い出そうとする度
頭痛がおこったのだろうか・・・
そんなことより・・・
「呪われているのは私じゃなくて・・・周りの人々だってこと?」
「そうだよ。だから君に見向きもしなかったんだ」
「だけど、あなたはどうして・・・」
「僕の母は他国の人間で呪いがなかったんだ」
「うん」
「だから僕はハーフで呪いが薄かったんだ」
「だから私のお菓子を食べたんだね?」
私は納得した
しかしこの国でのハーフはすごく珍しい
昔は多かったらしいけど
呪いのことが他国まで伝わって
この国を恐るようになり
ほとんど他国の人がこの国に入ることはない
もしかすると彼のお母さんが最後の一人かもしれない
「あなたのお母さんはどこに?」
私は聞いた
さっきからこの家に彼以外の人影が全くないから
そしたら彼は人差し指を天に向けた
「もしかして・・・」
「両親は天国へ行ったよ。3年前に」
私はすごく聞いてはいけないことを聞いてしまった
「この本は両親の『かたみ』みたいなもの」
「えっ」
私はこのかたみの本を普通に触ってしまっていいのだろうか?
私はまだわからないことだらけだけど
大体はわかった
この本の通りに行くなら
結局私は
彼以外助けることはできない
どうすればいいのだろう・・・
私は・・・どうすれば・・・
林檎売りの泡沫少女 第5章
第5章です!
次かその次が最終回となりそうです
見てる人に感動を与えられたら嬉しいですね
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