町はずれの小さな港
1人佇む凛(リン)
背後から近づく私
懐からナイフ取り出して
王女様の背中に向けて
振り上げた――
――教会の鐘が3回鳴っていた――
「あなたに謝らなければいけない事があるの」
私は前のように1人砂浜を歩いている。別に、誰に話しかけているわけではない。ただ、天にいる彼女に向かって…
私は、申し訳なさそうな顔で上を、空を、天を向く。
「私結局あなたの、仇は取れなかった」
私は、昨日結局ナイフを振り下ろす事は出来なかった。でも、それは正しかったと思う。偽善と言われるかもしれないけど、憎しみなど持ってはいけない。仇を取ると自分に言い訳して人を殺しても、殺人を起こしたことに変わりはない。
かつての王女と、同じだ。誰かの愛する人を殺して、憎まれる。私が断ち切らなければ、憎しみの連鎖は止まらない。
それに、未来(ミク)が最期に言った言葉――
『ごめんね、白(ハク)。そして、今までありがとう。それと――』
『それと、私がいなくなっても、誰も憎まないで。誰も、』
「殺さないで――」
私は声に出して呟く。
最後まで、最期まで彼女は正しかった。そして私が道を間違えないように、道しるべを付けていってくれた。
「白ー!」
それに、彼女は振り向く。すると、凛が走ってきていた。手には、何か持っている。無邪気に笑い、
「見て見て、ブリオッシュを作るの成功したの!!」
彼女の言葉通り、いい色に焼けていた。
そして、凛の言葉遣いが、あの堅苦しいものとは違った。
凛は、昨晩全てを打ち明けた。
自分が黄の国の王女である事。
双子の召使がいたという事。
青の王子に求婚を断られ、緑の国を滅ぼしてしまったという事。
それに当然国民が起こり、革命を起こした事。
そこで弟が――召使が、王女の格好をして捕まったという事。
自分は召使の格好をして逃がされたという事。
そして8日前、弟が処刑されたという事。
その光景を見て、ふらふらと歩いていたらこの砂浜にたどり着き、白に教会に運び込まれたことにつながっている。
そして、弟を殺してしまった事をひどく後悔して、白が気付く前にも毎日、夜から明け方まで懺悔室に居たという事。
流石になぜ砂浜に居たのかは明かしてくれなかったが…
そこで、私は凛の持ってきたブリオッシュを頬張る。
「あ、おいしい」
「本当!?」
途端、凛の表情がぱあっと明るくなる。
「うん、本当においしいよ」
そしてもう1つブリオッシュを食べる。
だが、いきなり凛が驚愕の表情になる。まるで心に傷が残る現場を見たような表情で、言った。
「わ、わ、私の分のブリオッシュまで食べちゃった…!」
「え!?」
見ると、彼女が持ってきたブリオッシュは2つ。きっと砂浜で1つずつ分けるつもりだったのだろう。
「あ、えっと、ご、ごめん!」
見ると凛が泣きそうな顔になっているので、私はますます慌てる。
「あ、そうだ!もっと作ろう、ほら、シスター達にも分けてあげようよ!本当すごくおいしいから、喜ぶよ!」
すると、凛がまた笑顔になる。
「うん!じゃぁ白姉さん材料持ってきてね!」
「はいはい」
すると凛は教会に走っていく。白は一度苦笑するようにため息をつき、それから彼女の後を追いかけていった。
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BPM=156
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「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
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あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞
じん
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