何故桜はそんなに美しく咲くの
其れは根の下で彼方を喰らって居るから

浅くも無く深くも無く
未だ何も知らない私達で良いでしょう
彼方（あなた）の其の胸の奥
覗き込んでしまう愚かな私を許して

何故桜はそんなに美しく咲くの
私の頬の桃色映したかの様に

嗚呼　可愛い人よ　如何か
桜の華に紛れて
笑っておくれ

手の平にこびり付いた
未だ温もり残る彼方の血液舐めて
狂気宿った眸（ひとみ）が
永久（とわ）に鈍い光を放つ迄後少し

何故桜はそんなに艶やかに咲くの
其れは根の下で死体を喰らって居るから

嗚呼　恋しい人よ　如何か
桜の華に隠れて
消えておくれ

嗚呼　愛しい人よ　如何か
桜の華に埋もれて
死んでおくれ

嗚呼　愛しい人と　如何か
桜の華と為って
咲き誇りたい

何故桜はそんなに美しく咲くの
其れは根の下に二人が眠って居るから