DNを決めたあたし達は2人を捕まえる方法を8人で相談してみる事にしたんだけど…。

「取り敢えず追い着けないのが問題だよな…。」
「足撃っちゃうとかは？ほら、モデルガンって結構痛いし。」
「却下に決まってるでしょ！」

全然纏まらない、そもそも知り合って間も無いので誰が何を出来るかも不明、協力するにしたって無理があるのよね。

「何か案は？鳳仙花。」
「う～ん…追い着けないなら向こうがこっちに来てくれれば良いんだけど。」
「そんな都合の良い話は…。」
「なぁ、あのウサギはニンジン見せたら寄って来るか?!」
「…来ないと思う…。」
「何かエサで釣ると言うのはありかも知れないわね。」
「エサって言っても、そもそもあいつ何が好きなんだよ？」

また堂々巡りに陥っていた。と、そこで口を開いたのは意外にもシャルロットだった。

「そう言えばさっきロビーでウサギの方に向かって『髪フェチ』って言ってませんでした？花壇が。」
「は？髪フェチ？」
「あ、うん、ウサギの人自分で髪フェチって…。」
「てか、お前で良いじゃん！エサ！昨日あの帽子の方とイチャ付いてたろ？そんで
　ウサギの方は髪フェチ。ならお前エサにすればどっちかは釣れるって！な？決まり！」
「ええええぇぇっ?!」

かなり酷いけど確かに1人位は寄って来そうな気がする。花壇は最初半泣きで嫌がっていたが背に腹は代えられないと言う無理矢理な説得で折れてくれた。あたし達は幾つかに分かれてどっちかがエサに喰い付いたら捕まえる、と言う方法を取る事にした。

「…でも具体的にどうするの？ぼーっとしてても出て来ないわよ？」
「よし、花壇、悲鳴上げろ。」
「無理です。」
「叫べば帽子の方は多分来る！」
「それは幾ら何でも無理でしょ。」
「そうですよ！無茶言わないで下さい！」
「良いから、ホラ!!」

そう言うとクラムは、花壇の服の前ファスナーを全開にした。

「ちょ…っ?!」
「…きぃやぁぁぁああああああああああああああああああああああっっ?!」

耳がキーンとなる様な悲鳴から数秒と経たぬ内に、黒い影が飛んで来た。目にも留まらぬ動きで強盗を取り押さえるかの様にクラムが腕をねじ上げられていた。

「いってぇ!!痛い痛い!!腕が折れるって!!ギブ！ギブ！」
「ほんとに来た?!」
「全員かかれー!!」
「捕まえろ――!!」

帽子屋はクラムを取り押さえたまま、ほぼ無抵抗で捕まった。集まったプレイヤーに当然クラムは集中砲火を浴びせられた。

「酷い！最低！痴漢！変態！ファスナー壊れたし！」
「女の敵だな、近寄るな、あっち行け。」
「大丈夫か？災難だったな。」
「ひそ…帽子屋さん、大丈夫ですか？」
「…服。」
「え？」
「これ羽織ってろ。」

脱いだ上着を当然の様に花壇の肩に掛けた。その仕草は無駄が無くてごく自然。さり気無くあんな事が出来るって言うのも凄い気がするけど。

「紳士ねぇ～、クラム見習いなさいよ！」
「理解不能…キザ過ぎ。」
「事実痴漢行為かと思うんだけど…。」
「あー！もう！結果捕まえたんだし良いだろ？」
「次はウサギか。」
「私もうエサ嫌ですからね?!」
「やっぱり撃った方が…。」

また話し合いが始まった。意外と皆楽しんでない？あたしは不覚にもちょっと楽しくなって来ちゃったわよ…。