マフラーに埋もれながら白い息が煙みたいに
何かを燃やしているんだとしたら間違いない
私の想いは今も密かにパチパチと爆ぜている
不思議なくらいにずっと消える事無く熱を帯びる

いつもよりもかなり早く家を出て川沿いを歩く
この時間に来るって分かったのは半月くらい前
ちょっとヤバい行為とは思ったけど仕方なかった
もう時間が無い形振り構ってなんかいられない

走る彼の脈拍よりも私の方がきっと遥かに速い
絶対に私の方が全速力なんだって言い切れる
ぶつかって砕けるの覚悟できてたって怖いよ
無防備なまま壁に向かってまぶたも閉じずに


上がりかけた暁のリレーバトン繋げるように
彼の足を止めたりはしない私が全力で並ぶ
名前も知らないのに大声で呼び止めて
邪魔にならない大きさの包みを渡す

「応援してます」なんて何も知らないのに滑稽
何も言わず軽く片手上げて走り去って遠ざかる
放心状態で足取りが遅くなる私を朝日が突き刺す
彼も見ていないのに片手を振ったパーがグーに

渡せたって何度も呟いて涙が止まらなくなる
そこはゴールでもスタートでも無いのに可笑しいな
笑いながらボロボロ泣いて川沿いを歩いて行く
誰も見てないからってバンザイなんかしながら


アカウントもアドレスも番号も入れてなかった
下心がまるで無いかって言うと嘘になるけど
砕ける前に消えたい逃げ腰で消極的な言い訳
今ごろ中身眺めてたりするかなって妄想で十分

卒業式が迫って慌ただしい暖かい日の夕暮れ
忘れていた一ヶ月後に呼び止められて振り返る
「応援ありがとう、卒業おめでとう」を呟いて
小さな綺麗な箱を差し出した何だこれ夢かな?

「これも」って千切ったメモ書きも押しつけて
走って去って行く姿はあの時の川沿いと同じだった
どうしよう立ってられない震えて声が出てこない
世界中の時間が止まったみたいに私の時間が動き出す


って三つ下だったのかよ!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

バトンショコラは駆け巡る

閲覧数:958

投稿日:2021/06/05 21:37:34

文字数:805文字

カテゴリ:歌詞

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