全てが終わった。
けど、なんだかよくわからない終わりを迎えてしまった。

アカイトさんが犯人かよく解らないけど、あのとき教会で
確かに彼の姿を見たんだ。
なぜあの場所にいたのか聞きたかったのに、彼は書類を盗んで
失踪してしまった。
まだ彼の行方は解っていない。

初音ミクちゃんは、まだ意識不明状態だ。
夢から覚めても、彼女の夢はまだ覚めていない。
あれから私は帯人とリンとレンと、そしてネルとハクを連れて
見舞いに行くようになった。
たくさんのお花を持って行って、部屋に敷き詰めてあげた。
そしたら、白雪姫みたいでとってもきれいだった。
またいつか、話せたらいいな。

リンちゃんと、レン君は再びクリプト学園に通うようになった。
前から有名だってけど二人は「天才双子」と呼ばれていた。
それぐらい頭が良くて、学校に復帰するなり本領発揮。
飛び級に飛び級を重ねて、なんと現在同級生になりました。
おいおい、って感じだよぉ。
自分より頭のいい後輩を持つってかなり複雑な心境だ。うぅ…。


うちの学校のボーカロイド率も上がってきた。
だんだんボーカロイドの権利が認められてきた気がする。
いいことなんだろうけど、まだやっぱりとまどってしまう。

だって。

「雪子…」

「あ、お、おはよ！」

「うん…おはよ…」

帯人もクリプト学園に通うことになったから。
毎日楽しいけど、ドキドキして勉強どころじゃないよっ！

帯人は相変わらず包帯をやたら巻き付けるものだから、
周りから視線が集まる。
それに口数も少ないから、一部では「ミステリアス」なんて言われて
女の子にキャーキャー言われてる。

最初は「恋人じゃないよ。お友達だよ」って紹介したはずなのに、
そんな女の子の前で私にくっついてくるから、すぐにばれた。
なんか知らないけど、帯人と一緒にいると私まで女の子に
キャーキャー言われてしまうようになった。

「はぁ…」

嬉しいような、悲しいような。でもまあ、公認って感じでいいのかな。

「…どうした」

「え？　ああ、なんでもないよ。大丈夫」

「そう……」

キーンコーンカーンコーン

「あ！　予鈴が鳴ってる。ほら、早く行こう♪」

ガシッと私の腕を掴む。

「…無理はよくない。……遅れてもいいから、歩こう」

「え、あ、いいんだよっ！　私は大丈夫だから」

「…じゃあ……あ。そうだ……」

ピコン。と、頭の上で電球がついた。
そんなイメージそのままの反応をして、帯人は嬉しそうに笑む。

「な、なにすんの……！？」

「ふふ…」

「こ、怖いよ…！？」

「ふふふ……えいっ」

「うわあ！」

雪子を抱きかかえ、帯人は勢いよく走り出す。
このまま学校に行くつもりだ！
こんなの見られたら、恥ずかしくて死んじゃうよっ！！

「お、降ろして！」

「……だーめ…」

「こらぁあ！」

ぽこぽこ帯人を殴る雪子。帯人はベロを出して「やだ…」と言う。

「……灰猫の…まね…」

「あ…」

「あのときは守れなかった…でも、今度は僕が……そばにいるから…」

帯人は口元に小さく笑みを浮かべた。

「帯人…」

って感動してたけど、それでもこの状況で学校に行きたくない！
そこはゆずれないの！

「でも降ろして」

「…だめー」

いっこうに降ろす気配がない。
私が折れるしかない、か。私のことを思ってしてくれてるんだし。

「しかたないなぁー、今日だけなんだからねっ！」

「…うん。絶対に雪子を守るよ。これからも、ずっと……」

「もー、恥ずかしいから言わないで」

「……ふふ」

「なによ」

「……………大好き…」

やっぱりこの人にはかなわない。そう改めて思った。
雪子は帯人の腕の中で、小さくなっていた。




　新しい日々が始まる。

　私たちはまだ未来に向かって歩き出したばかりだ。

　道のりは長くて険しいかもしれない。

　けど、どうにかなる気がするの。

　あなたがいるから。




「……お姫様だっこ…」
「写メって一斉送信だしー♪」


「こらぁああ！　ハク！　ネル！　見るな！　撮るな！
　一斉送信するなぁあああ！！」


あなたとの新しい日々が始まる。

楽しくて、すてきな、かけがえないのない日々が。