<特務戦隊 Lパワード! 第9話 涙の戰い>

(惑星イネット・王宮 最終階層)

 一行は最後の螺旋階段を駆け上がり、遂に最終階層である『玉座の間』にたどり着いた。そこには、これまでの展開から想像出来るとおり、“クトゥルフ”だけが、『エルの姿』のまま玉座に座っていた。

クトゥルフ:・・・遂に来たか・・・
ルカ:ええ、ようやく到着できたわよ。あんたが差し向けた“刺客”に随分邪魔されたからね!

 クトゥルフは立ち上がり、両手を広げた。

クトゥルフ:・・・で、我をどうするつもりだ? この肉体を滅ぼすような行動をとれば、滅ぼされる前に肉体を捨てて、ここの中で最も優秀な肉体を乗っ取って、生き続ける事を選ぶ。このことは既に話した通りだ。勿論、そうなればお前らの目的である“レンの救出”は失敗に終わるがな
リリィ:わかってるわよ! そうならずにお前だけを滅ぼす方法を考えている所なのよ!
クトゥルフ:無駄だ。私の存在は、『奪った肉体と一対』。片方のみ滅ぼす事はできん。いずれにしてもお前らは私に一切手を出すことはできん。諦めろ

 この問答がされている時、ミキが腰のポーチを開けて、黒いブレスレットを取り出していた。そして、右手にしっかり持って、グイっとクトゥルフの方に印籠を見せるようにかざしたのだった。

ミキ:クトゥルフ、貴方は『より優秀な個体』を奪って生き続けているのよね? そして貴方達の問答の前提にあるのは“レンの肉体はここの全員から攻撃を受けると、さすがに破壊されてしまう”、つまり、『身の危険』を感じているからこそ、“次の肉体移動”の事を話に出している
クトゥルフ:そうだ。これまでの刺客の破壊から考えても、今の状態のお前ら5人とリン、つまり6vs1の戦闘では、さすがの我でもキツイ。当然の駆け引きではないか?・・・・ところで、それとその見せつけているブレスレットには、何か関係があるのか?

ミキ:大ありです。この黒いブレスレットは元々は、あなたの肉体、つまり『エル』専用のファイナルバトルスーツだった物。先ほど、その“エル専用にするためのロック”と“ファイナルモード用のロック”を解除して、誰でも着用できるようにしました。つまり、

 チャキ!

ギューーーーーーン!!!!

 なんとミキ自身が左腕に黒いブレスレットを着用し、エル用のファイナルバトルスーツを身につけたのだった!

 その姿は、楕円形のイヤーガードを両耳に装着し、銃撃用のスコープを頭部に装着し、黒い軽量のスナイパースーツを身につけた、まるで“狙撃手”の様な姿だった。

ミキ:これがエルのファイナルバトルスーツのファイナルモードの姿。そして、

クルッ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ!

 ミキは何を思ったのか、Lパワードの面々とリンの頭部、そしてクトゥルフの頭部の横スレスレを狙って、瞬間的に銃撃したのだった!

クトゥルフ:・・・
ルカ:ちょ・・・
リリィ:ちょ・・ちょっと! ミキ! なにすんの!
海斗:あ、あぶねー、スレスレだった・・・
ミク:危なかったミク・・・
リン:ど、どういうことなの・・・

ミキ:今のは“わざと外した”。スコープが捕らえていたのは、お前らの頭部。そのまま撃ったら死亡のコース
クトゥルフ:・・・何が言いたい

ミキ:現時点で、ここの全員の中で、『最も優秀な個体』は私だと言うことだ。しかし私はお前と共闘するつもりはない・・・欲しくないか? 私が
ルカ:!!!!
クトゥルフ:・・・条件はなんだ

ミキ:さすが察しがいい。私に移動する際、そのレンの肉体を元のままから一切変えることなく、我々に返して欲しい。こちらに移動する際にリアルタイムスキャンして、少しでもお前の細胞や精神情報が残ったままだった場合は、お前がここに移動したと同時に自爆装置で自爆する
クトゥルフ:元からそうすれば、レンを救出できて我を倒せるのではないか?
ミキ:“元のままのレン”でなくては、意味がない。だから、交換条件を差し出しているのだ
クトゥルフ:なるほど。つまり“お前が人柱になる”というわけだな。いい覚悟だ。

 ルカが話に割って入った!

ルカ:ミキ! 何勝手に話を進めているのよ! あなた本気!?
ミキ:では、今の状態で、レンを元のまま救出できる“具体的方法”があるのですか? “できるかもしれない”、“これから考える”、“他に何かあるかもしれない”、は答えではないですよ?
ルカ:う・・・

クトゥルフ:いいだろう。私の目的は“より優秀な個体を肉体にして存続する”ことだ。今になって、レンに“伏線”を張る必要はない
ミキ:では、移動してもらおう。私は完全機械生命体ではない。入ればわかると思うが、心臓、脳の一部は人間のパーツを使っている。そこに入り込めば、私を完全侵略できる
クトゥルフ:わかった。では、頂くとしよう

 ルカは床に座り込んで、ボロボロ泣きながら叫んでいた。

ルカ:いや! だめ! そんなの絶対だめ! お願い撤回して!
リリィ:わ、私たちが、貴方を攻撃できるはずないでしょ!
海斗:だめだ! 他に何か考えるんだ!
ミク:そんな非情な事、ミク達にはできないミク!
リン:こ、こんな事になるなんて・・・

ミキ:Lパワードの皆さんとリンさん、乗っ取られたら100%、こいつは私の肉体であなた達に攻撃を加えます。そしてこの星が爆破される事を知るから、その後、間違いなく地球に戻って、侵略領域を拡大させるでしょう。先ほどの攻撃の通り、この肉体は最強です。本気で私を破壊しなさい! この星のためにも、地球のためにも!
ルカ:だめぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!
クトゥルフ:では行くぞ!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ギュン!!!

ミキ:や・・・く・・・そ・・・く・・・ど・・・お・・・り・・・だ・・・な・・・・・・

 バタッ バタッ

レンとミキが同時に倒れた。リンとルカ以外のLパワードの3人はレンの所に駆け寄った。レンは気絶していた。ルカは目を見開いてその光景をしっかりと見ていた。ミキは、ミキとしての動作を完全に終了し、そして、クトゥルフとして再起動した。

ヒュン・・・・・・・・・・ギィーーーーーン!

クトゥルフ(ミキ):・・・ふぅ。まさかこれほどとは。想像を遥かに超える能力だ。元の存在が言っていることはウソではなかったようだな。
ルカ:ミ・・・・・ミ・・・キ・・・・ちゃ・・・・ん・・・・・
クトゥルフ:元が最後に言っていたとおり、レンには一切我の情報を残していない。我が侵入する前の状態だ。ミキとの約束だ。リンよ、レンを担いで、この場から消えろ。お前らの母艦にでも逃げれば、約束通り、レンをお前らにちゃんと返したことになるだろう。

 泣きながらリンはレンを背負った。

リン:・・・そうさせて・・・いただきます。

 リリィも泣きながらLフォートレスまでの案内用液晶装置をリンに手渡した。

リリィ:ぐす・・・・リンさん、この装置の通り進めば、母艦のLフォートレスにたどり着けます。メイコさんも今の状況を知っているはずです。
海斗:そこでレンの看病をしていてくれ。
ミク:そして待っているミク・・・

チャッ

 ルカは涙を拭って、クトゥルフを睨み付けながら、ゆっくりと立ち上がった。

ルカ:そう・・・私たちが帰るまでね。

ガチャ チャキ ゴゴゴゴ・・・・・

 ルカを含めLパワード4人の眼には、力がこもっていた。それは“迷う”者の目ではない。『決意した者の眼』だった。

クトゥルフ:いい眼だ。それでこそ、星の守護を任されている者の眼だ。

ルカ:この星の守護は出来なかったけど・・・
リリィ:ミキとの最後の約束・・・
海斗:お前が次に行くであろう地球を守ること・・・
ミク:そして・・・お前を完全破壊する事・・・

ルカ:私たちは、お前を倒して・・・地球に帰る!!!!!!!

クトゥルフ:来るがいい! 劣等個体どもめ!!!!!

 遂に、“最後の戰い”が始まったのだった。

(続く)

CAST

ルカ:巡音ルカ
エル=レン=侵略されたミキ=クトゥルフ:鏡音レン、miki
リリィ:Lily
ミク:初音ミク
海斗:KAITO
メイコ:MEIKO
ミキ:miki

リン:鏡音リン
学歩:神威がくぽ
めぐみ:GUMI

その他:エキストラの皆さん

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

特務戦隊 Lパワード! 第9話 涙の戰い

☆オリジナル作品第12弾である、「特務戦隊 Lパワード!」の第9話です。

☆!!!

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hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct

☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5

☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1

☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf

閲覧数:275

投稿日:2010/10/16 17:52:04

文字数:3,475文字

カテゴリ:小説

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  • nai☆

    nai☆

    ご意見・ご感想

    なんだ?、このダークな展開はw

    しかし、ミキも思いきったことをするなぁ。
    そ、そうか! サイボーグの特性を活用して、仮に生身の部分は乗っ取られても、たぶん機械の部分までは乗っ取られないから、きっと機械の部分に何らかの細工をして…、して…、だ、大丈夫ですよね!? ミキ…。

    ところで、もし、ミキでなくルカが…だったら、“クトゥルカ”になるところでしたね!
    (ちなみに、“クトゥルカ”でイラストの検索かけたら、結構凄いことにwww)

    2010/11/13 21:47:12

    • enarin

      enarin

      nai☆様、今晩は!

      > ダークな展開

      はい、このシリーズでは、あるシナリオ的理由で、ミキさんがこういう行動に出ます。全ての理由は最終話で語られます。というかイネット編になってから、シナリオが全然違う方向に…。

      > 思いきったこと

      ミキさんの行動には、ちゃんと理由があったりします。一見、無謀な事のように思えるのですが、ミキさんの深い理由(クトゥルフへの謀議)があったりします。

      > だ、大丈夫ですよね!? ミキ…

      えーーーっと(汗)、実は今回、コレまでのシリーズでは一度もやらなかったシナリオにトライしてます。方向は下向きです。最終話をお楽しみに!

      > ミキでなくルカが…だったら、“クトゥルカ”に

      いやー、ミキだから良かったとは言えないですが、さすがにクトゥルカ化は、まずいと思いまして…。理由は下記に同意です。

      > (ちなみに、“クトゥルカ”でイラストの検索かけたら、結構凄いことにwww)

      さすがクトゥルフ神話=恐怖神話だけあって、恐ろしいルカ&たこルカのクリーチャーがわんさかと…。凄く沢山ではないのは、さすがにこの手のイラストは自重して欲しかったのかも。たこルカはかわいさがウリですし、ルカさんはお姉さんっぽいのが素敵だし…。

      ということで、文章表現とはいえ、ルカさんのクリーチャー化はやめました。でも私もスーパーヒーローの最終決戦で、えぐい表現をして、修正した経緯があるので、偉そうな事は言えないです、はい。

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2010/11/13 22:29:45

  • nonta

    nonta

    ご意見・ご感想

    確かにそれならレンを傷つけずクトゥルフを攻撃できるので約束をはたせるかも知れませんが・・・Σ(´д`;)

    みな覚悟は決まったようですが、だからと言ってまだどうなるか分かりませんし。
    ミキさんが相手とは強敵ですね。
    同時に味方は戦いの要の一人を失ったと言える状態なわけで・・・。
    どんな戦いとなり結末となるのか、次回お待ちしております。

    2010/10/18 20:10:24

    • enarin

      enarin

      nonta様、今晩は!

      > Σ(´д`;)

      実はミキはLパワードの全員に、勝てるヒントを与えてから、クトゥルフに支配されました。ミキがクトゥルフに言った取引の言葉は、

      「この中で最強」

      です。クトゥルフも「個体として最強」の体を手に入れることが最優先だったので、取引に応じましたが、ミキは決して、

      「ここで戦って最後まで勝ち残れるほど強い」

      とは言ってないのです。この場での戦闘はミキが取引に使って絶対勝てると示した”1vs1”ではないんです。戦隊物の最後の切り札にして「オキテ」である、

      「パーティアタック」

      で勝てるとは言ってなかったのです?。

      でも、今のクトゥルフの属性は”スナイパー”。Lパワードの面々に、このパーティアタックをさせなければ、クトゥルフの勝ち。1vs1に持ち込めなければ、クトゥルフもやばい、そういうわけです。

      > だからと言ってまだどうなるか分かりませんし

      そうです。ミキの残したヒントに気づかないといけません。1vs1のシチュにされてはならないのです?♪

      > ミキさんが相手とは強敵ですね

      強力なクトゥルフの能力、ミキそのものの能力、そしてエルのスーツも追加装備で入ってますから、最強です。

      > 同時に味方は戦いの要の一人を失ったと言える状態なわけで・・・

      参謀も最前線戦士もなくなったので、今までで一番ヤバイです。最後の戦い、頑張って欲しいですね。

      > どんな戦いとなり結末となるのか、次回お待ちしております

      有り難うございます。結局、地球への侵攻、もネタに入れてしまったので恐縮です。Lパワードの最後の戦い、頑張ります!

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2010/10/18 21:08:07

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