「ゆかりちゃん、いいかな?」
変な雰囲気の女子フットサル同好会。今日は先日の練習試合に出たメンバーとそうでないメンバーに別れ紅白戦を行う為、ウォームアップが今日の活動の大半を占める。まずは各自ストレッチの後、校内のマラソンコースを三十分掛けて十周する。ストレッチはいつもは心咲と一緒なのだが、会長の新垣らと始めてしまい、孤立しかけていたゆかりに声を掛けてきたのは短髪低身長の桐間つばさだった。
「今日はつばさちゃん?宜しくね」
人があぶれてしまった時は三人組みとなりフォローし合う事になっている。
「いつもマネ監とやってるのに、今日はどうしたの?」
横に並んでお互いの手を引っぱり合いながらゆかりは言った。
「そうだねぇ」
反対側を向いて再び手を引っぱり合う。
「ゆかりちゃんの上達っぷりが凄いから、私もいろいろと参考にしたくて」
「参考って言っても、皆のアドバイスを聞いてやってるだけだよ」
照れながらも、ごく当たり前と言った調子で言った。
「言われて直ぐにできるんだから白木高のキャプテンに目を付けられるんでしょ。数か月前まで病欠で休んでいたとは思えない」
この同好会に入る前。ゆかりは昨年末まで学校を休みがちだった。幼少期より身体が弱く入退院を繰り返してきたが、時間を掛けることにより今のような健康的な身体を作り上げた。それでも時々検査で病院に行くしかなく、今回は時間だけではなく身体に負担を掛ける検査であった為、学校が休みがちとなってしまう。
「でも昔に比べたら欠席日数は減ってるし、もう検査しなくて良いっていうから、卒業式まで皆勤狙って行きます」
「これがフラグにならないようにね」
冗談めかすゆかりだったが、これだけ何でもこなしてしまう彼女をみるとそれが不可能に感じないから不思議だった。ストレッチもほどほどに、マラソンコースに入るとどちらからともなくジョギングの姿勢に入った。ちょっと走ったところで、つばさは意を決したように喋り始めた。
「心咲ちゃんと何かあった?」
単刀直入な質問だった。だがそれよりもこの状況を聞きたいのがゆかりだった。
「いや、別にこれと言って心当たる事はないんだけど・・・」
だがつばさの口ぶりはゆかりに非があるような調子だった。拭いきれない不安感を抱えながら彼女は尋ねた。
「なんかやっちゃった?」
「まあ・・・あなたのせいだよね。百歩譲っても」
彼女なりに遠慮気味に言ったつもりだろうが、それでもゆかりは気付いている様子はなかった。
「大ちゃん・・・、早良大智に心咲ちゃんが告白してフラれたの」
「馬鹿な・・・早すぎる・・・」
空を見上げて驚き戸惑う様子でゆかりは言った。
「来て早々二人の様子がおかしいから、先輩たちが心咲ちゃんに聞いたんだって。そしたらゆかりちゃんの名前が出て来て」
ゆかりにしてみたらもう少し時間を掛けるであろうと思っていたが、ふんわりとゆったりした彼女の雰囲気からは到底想像もつかないような行動力だった。
「やっぱり・・・アドバイスしたの?」
控えめながらも真っ直ぐな眼差しはゆかりの心に刺さるばかりだ。その原因が目の前にいるからだ。間を置きつつもゆかりは答えた。
「そうだね。私が煽ったのは素直に認める。でも・・・聞いて欲しい。アドバイスしたのは、この間の練習試合の時。数日と経たないうちに告白するって、物凄い行動力と勇気だよ。あの子、早良くんの事で結構思い詰めてた所もあったみたいだし、そうならざるを得なかった理由、桐間さん思い当たらない?」
「・・・ああ。私か・・・」
遠回しながらもゆかりの言葉がつばさに刺さる。
「別に心咲ちゃんに悪気があるわけじゃない。アイツとは付き合いは長いし、心配なんだよ。去年の夏の大会の大怪我の事もあるからさ」
話には聞いていた。それでしぶしぶ女子フットのマネージャー兼監督を務めるようになったと。ゆかりはうなずいてみせた。
「実は私が誘ったんだよ。大ちゃんにはサッカーを続けるモチベーションが必要なの。私は中学時代に助けられたから、今度はこっちの番だなって」
「どういうこと?」
「家が近くて親同士も仲が良くて、うちらは幼稚園の頃から近所のサッカークラブに通ってた。小学卒業までは一緒に通えたんだけど、中学に上がってから女子サッカー部が無くてさ。だけどアイツは簡単にサッカーを辞めさせてくれなかった。仲間想いなんだよね。だから中学時代はアイツの部活が終わってからも私との練習に付き合ってくれたし、伝手で社会人のフットサルチームを紹介してくれた。その中でこの高校の同好会を知って入学した。そしたら今度はサッカー部に入った大ちゃんが怪我をして療養するようになった」
「それであなたがフットのマネージャーに誘ったわけね」
「本当に素直じゃないから、誘っただけじゃ来ないんだ。お願いって言って頼むの。そうすると渋い顔しながらノコノコやってくるの」
「うわぁ。面倒臭い男」
邪険にしたゆかりに対して、つばさは笑いながら言った。
「まあまあ。うちらの監督さんの悪口は言わない。性格はああだけど、一年でベンチ入りしただけはあるよ」
そっか、とゆかりは理解した。
「今度から部になって部室が貰えるようになったのも、先輩たちのお陰もあるけど、白木高以外のチームと練習できるようになったのもアイツの伝手が大きい。それにウチの子が他チームの男とお付き合いに発展した話もあるしね」
「そういう恩恵もあるのね。単に口うるさい人だと思ってたけど、サッカーに対する情熱は良く分かった」
「うん。ゆかりちゃんへの風当たりが強いから、嫌気がさしているんじゃないかって心配してたんだ。でもアイツの事を分かってもらいたかった」
しばらく黙って走っていたが、ゆかりはふと思う事があり、つばさに尋ねた。
「心咲ちゃんは早良くんがマネ監として入ってきた経緯は知ってるんだよね?」
「前の会長さんには伝えてるから、知ってると思う」
「でも桐間さんが今私に話した彼の経歴までは知ってるの?」
少し考えた挙句、戸惑いながらも答えた。
「どうだろ。少なくとも大ちゃんと心咲ちゃんが話している所は見た事がないんだよなあ」
それはゆかりも同じだった。最初から遠くで見ているだけの片想いである事は分かっていた。
「今の話、心咲ちゃんにしてあげた方が良いと思うな」
今のゆかりの提案につばさはぎょっとした。
「ああ・・・、それはどうだろう。私じゃきっと目の敵にされてるだろうし、心咲ちゃんと仲良いあなたが伝えるべきでしょ」
「え?いいんじゃない?なんか昼ドラみたいで」
「え、なにそれは・・・オバサン臭い」
「華のJK捕まえてオバサンとはなにごと!」
「だって昼ドラなんて華のJKのする話じゃないでしょ」
「一人の男を取りあう二人の女。一人は何でも出来る才女でもう一人はちょっとドジな主人公。女子力の足りない才女は主人公をあの手この手で攻め抜くけれど、傷を残しながらもゆくゆくは主人公と男が結ばれハッピーエンド。ロマンじゃない?」
「いや・・・ないわ・・・」
熱く語るゆかりに少し距離感を覚えながらもつばさは話を元に戻した。
「まあいずれにしても心咲ちゃんが怖くて話が出来ないよ」
「それじゃあちょっと意地悪な質問しちゃおうかな」
勿体を付けながら、ゆかりはなんだか楽しそうに言うのだった。
「桐間さんはどうしたいの?どうなって欲しいと思ってる?」
「どうって。私は関係ないし、成るようにしかならないと思うよ」
「そうか。関係無いか」
間を置きつつ、ゆかりは更に続けた。
「それじゃあ、早良くんにはどうなって欲しい?」
「大ちゃん?」
「さすがに関係無いとは言い切れないよね」
「そうだねぇ。早くサッカー部に復帰して欲しいと思う」
「恋愛関係は?」
「恋愛?んー・・・アイツの事だからサッカー部に戻るのが最優先だと思う。昔から浮いた話も聞かないし、治療とリハビリ頑張ってるからそれどころじゃないっしょ」
「そっか・・・。今のやりとりで私の仮説は確信に近づいたかな」
「なによ・・・」
「桐間さん、早良くん好きでしょ?」
つばさは否定の意を伝えるべく言葉を発しようといたが、直ぐ様ゆかりの言葉に遮られてしまった。
「友達としてではなく、一人の男として早良大智が好き」
「そんなことは・・・無いよ・・・」
「そもそも幼なじみはデフォで好き合っているってのが仮説の原初だけど、彼に恩のあるあなたなら、序列化するとかなり上位なのは直ぐに分かった。その序列で友情を利他的、愛情が我利的と考えるなら、彼の幸せを考えるべき発言が少なかった。決定的だったのが心咲ちゃんと話すのが怖いって言った所。友情が強くて利他的になれるなら、心咲ちゃんに身の潔白を証明するチャンスだった。でもあなたはそれを拒んだ。少しでも彼に対して想いを寄せていると思ったの。後は早良くんに対しての無関心さは完全に装いでしょう。付き合いが長くて、部活では彼をコントロールしようと割と一緒にいるし、早くサッカー部に復帰して欲しいと願っているにも関わらず、そこだけ将来性を潰すのは不自然だなって」
「それで?」
「最後の質問の答えがやけにリアリティがあった。具体的過ぎる。そこで私は思った。あなたは以前、彼に告白をしているがフラれた経緯がある、って」
「ゆかりちゃんってさ・・・ほんと意地悪だよね」
走っていたつばさは急に減速し、立ち止まってしまった。
「意地悪なのは前もって言ってあるでしょ」
つばさはとぼとぼと歩いてきたので、ゆかりも彼女の足並みに合わせた。
「本当の事を話すよ。と言っても、全部あなたの言う通り。フラれてからもアイツへの想いと恩がないまぜになって、ずっと一緒にいたいと思う気持ちは変わらない。でも一つだけ教えてあげる。告白したのは中学二年の夏、それから一カ月だけだったけど、付き合ってはいたんだ」
ゆかりは内心驚いてはいたが、決して表情には出さなかった。だがその時の思い出が今でもつばさの中でくすぶっているのだと分かった。
「一学期の終業式が終わった後、いつものように二人で練習してて、好きな人の話を吹っ掛けたんだよ。あの時なんて特に大ちゃんの事が気になって仕方が無かったから、最初は興味本位だった。でもいつもの調子で口論っぽくなったんだけど、流れと勢いで告っちゃったら、そのまま付き合う事になったんだ。夏の間は一緒に宿題を片付けるって名目で、毎日お互いの家に行くのが日課になってた。元々親同士も仲が良かったし、家に行き来するのは特に違和感なんてなかった。自由研究なんかで一緒に出かけた時に初めて手を握ってくれた時は、もう研究どころじゃなかったよ。宿題もほとんど片付いて、夏休みの最後の週は初めて宿題に追われない有意義な最後だった。でも夏の終わりに別れを告げられた。お前は大事なサッカー仲間だけど、やっぱり大事な友達でしかないって。それからは夏休みに入る前と同じような生活に戻っていった」
「その後、彼とは?」
「いや、何も無いよ。それに私たちが夏の間に付き合っていた事は誰にも気づかれなかった。まあ普段から一緒にいたせいもあるから、特に囃し立てられる事も無かったし」
「じゃあ、心咲ちゃんと早良くんがくっ付くのは本意ではない?」
「付き合って欲しい、って言ったら嘘に聞こえるよね。でも正直分からないんだ。大ちゃんと友達のままで満足しちゃってる自分もいるし」
つばさはランニングを再開すると、それに続いてゆかりも走り始めた。
「だから、今の話は私とゆかりちゃんの秘密にして欲しい。あなたの推理があまりに見事だったから要らん事まで話しちゃったけど、これが広まって大ちゃんとの距離が変わるのは本意じゃない」
「・・・つばさちゃん。あなたも大ちゃんも変わるべきだよ」
「いや、いいんだ。今のままで。変わるつもりなんて毛頭ない」
「そんなのダメだよ。このままじゃ大ちゃん振り向いてくれないよ」
懸命に説得してくれるのは分かったが、つばさはその一言に苛立ちを覚えた。
「ねえ。あなた誰の味方なの?」
その問いに、ゆかりは至極当然とばかりに答えた。
「二人のだよ!」
「私の事からかってる?」
もちろんつばさの腑に落ちるはずもなかった。
「引っ込み思案の心咲ちゃんは勇気を振り絞ってスタートラインに立ったんだよ。つばさちゃんだって後ろ向いてばかりじゃなくて、前見てスタートラインに立たなきゃ。二人が正々堂々競って欲しいと思ってる」
「無責任な事言わないでよ!」
そう怒鳴ると、つばさは急速にペースを上げて先に走っていってしまった。
【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん! THE PHANSY #3【二次小説】
2.悩める少女の恋愛相談 前編
本作は以前投稿した小説怪盗ゆかりんの前日譚にあたる作品で、
主人公が怪盗になる経緯を描いた物となります。
前回出てきたラブストラックチーズケーキのアイスは
一ヶ月間違う味のアイスが楽しめるでお馴染みの
有名なお店に実在する期間限定のフレーバーです。
作中通り面白いアイスではありますが、
同じく作品に出したラムレーズンにはマジでハマった。
恥ずかしながら、チョコミントを一途に愛するあまり
他の味にはほとんど手を出した事が無かったんですよ。
そんなラムレーズンやらアイスやらをググってたら、
高級アイスでお馴染みHGDSのラムレーズンが
期間限定ながらも美味しいらしい。
これは是非一度食さなければ!(使命感)
作品に対する感想などを頂けると嬉しいです。
2.悩める少女の恋愛相談 後編
http://piapro.jp/t/ai9U
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※※ 原作情報 ※※
原作:【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!【ゲームOP風オリジナルMV】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21084893
作詞・作曲:nami13th(親方P)
イラスト:宵月秦
動画:キマシタワーP
ご本家様のゆかりんシリーズが絶賛公開中!
【IA 結月ゆかり】探偵★IAちゃん VS 怪盗☆ゆかりん!【ゲームOP風MV】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm23234903
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【※※ 注意 ※※】
当作品は動画「怪盗☆ゆかりん!」を原作とする二次小説作品です。
ご本家様とは関係ありませんので、制作者様への直接の問い合わせ、動画へのコメントはおやめ下さい。
著者が恥か死してしまいます。
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Y=Yuzuki Yukari I=IA
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