そして…、
「マスター、どうしたんですか?」
「え、ええっと…」
一方神波の部屋。先ほどまで出かけていた神波が戻ってくるなり量産型のミクに話しかけたのだが、何か様子がおかしい。
「…マスター」
神波に詰め寄る量産型のミク。
「え、ええっと、これをミクにプレゼントしようと思って…」
そういってラッピングされた小さな箱を量産型のミクに渡す。ラッピングはプレゼント用のラッピングだった。
「マスター、どうされたんですか?いきなり?」
「…とにかく開けてみて」
(…何のプレゼントだろう?クリスマスには早いし…)
そう思いながら包装を開ける。予想通り小箱が入っていた。
「開けていいですか?」
「ああ」
そう言われて小箱を開ける量産型のミク。
「わぁ…」
小箱の中には、髪留めが二つ入っていた。
「これ、今年のミクさんのバースデーライブに展示してあった…」
「うん、いくつかあった髪留めの中で、ミクが特に気にしていた髪留めだよ。今日が発売日だったから、ミクにプレゼントしようと思って。…本当は、他の髪留めとか、服とか、他にもミクが欲しかったもの、沢山あったと思うけど、今の僕には…」
「マスター!」
「うわっ」
感激のあまりマスターに飛びつく量産型のミク。申し訳なさそうな表情をしていた神波は困惑している。
「…マスターの想いは、私に十分伝わりましたから」
彼女には笑顔が浮かんでいた。その笑顔に引き込まれる神波。そうして量産型のミクを抱きしめ返した。
「…どうだい?」
「はい、身に着けました」
早速神波からプレゼントされた髪留めを身に着ける量産型のミク。
「…マスター、どうですか」
「うん、似合ってると思うよ」
プレゼントした髪留めを身に着けた量産型のミクを見てこたえる量産型のミク。
「マスター、嬉しいです」
「…ミク自身が見立てた髪留めだからね。僕が選んだわけじゃないよ」
「…でも、嬉しいです!」
嬉しそうに言う量産型のミク。神波が彼のミクにここまで自主的に動いたことがなかったからだ。今までは量産型のミクにねだられたり、はやっているからという、どちらかといえば受け身の立場でミクに対して買うことが多かった。
(…マスターも、安田教授に色々と聞いたのかな?)
ワンオフのミクから聞いた話を思い出す量産型のミク。ワンオフのミク曰く、雅彦はワンオフのミクのために自分から動いているらしいと聞いていた。そこから、神波も雅彦に何かアドバイスをもらったのかもしれない。
(…ミク、嬉しそうだな)
一方神波は量産型のミクの反応を見て嬉しかった。量産型のミクの予想通り、神波は雅彦から量産型のミクとの関係について、アドバイスを受けていたのだった。
(ミクを大切にしないといけない…、それは、木下さんも仰られていたな)
雅彦からの言葉をかみしめる神波。そういう観点で自身の行動を顧みると、自分も変わらなければ、と思っていた。今回の量産型のミクへのプレゼントは自分が変わるための第一歩だった。
(…今回は成功したけど、次をどうするかだな…)
実は雅彦からはそこまで具体的なアドバイスをもらっていなかった。雅彦は何点かの指針を述べたにすぎない。どちらかというと自主性を重んじる雅彦だけあって、神波に対しては考えることを重要視するように言われた。今回の量産型のミクへのプレゼントは、そこから自分なりに考えた結果だった。
(次は大丈夫かな?そして、僕はミクにふさわしい存在になれるかな?…いや、今は考えるのは止めよう)
この先、ミクとの関係がどうなるかは分からなかったが、今はうれしそうなミクの反応を喜ぶことにした神波だった。
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