黒のボールペン こんなものどう使えばいいんだ
最初はそう そんな程度に持て余していた
ただ彼女がそう シフトレバー 立て掛けれるくらいの
真っ新なノート 今日から日記を つけることにする

いつものルートに ようやっと慣れてきた気がする
訓練と違う 公道はやっぱり緊張するな
カーナビゲーション 【Set the destination.】 …公園でいいのか?
親とのことだろう つまらない顔するから スローイン

フロントフェンダー フロントドア 彼女の手
忘れない初めて握ってくれた日
どこまでもゆこう
どこまでも連れてこう
その手は離さないで 離さないで
ハーフスロットル
このまま

白いステッカー フランス語 小さなドラゴンの絵
出はフランスだけど… ウインカーオレンジに照れるだろ
「冷たいんだね!」と 臍曲げたから しぶしぶフロントドアへ
昔からそうだ 安定してる感情 VSC

やっとこっち向いた 彼女は本を三冊もくれた
「語彙を増やしなさい。」 ごめん。テレビラジオっ子だもんで。
クラッチが力む 地図にない場所の冒険活劇
それとあとあれだ 男女の活塞、喞子、吸鍔の……

俺にはわからない 重心が低いからか?
機微に疎い俺さ それでも彼女は…
どこまでもゆこう
落ち込む事あっても
いつでもここにいる 共にいる
モータリゼーション
このまま

様子がおかしい 黙ったまま引き攣り笑うだけ
何かあったのか 何かしたいことはないのかって
ただ彼女がいう 帰りたいと 故郷へ あの海へ
知らなかった事 彼女と親とか 名前のこととか

花火をしないか その持ち掛けに頷いてくれた
家の広い庭 花火は魔法みたいに舞ってた
笑顔に戻った 線香花火 色とりどりの火
彼女の目の中 弾け光ってた 俺はずっと見てた

ステッカーの文字 エテルニテの 永遠を
あのときに初めて願った気がする
いつまでもいたい
いつまでもこのままで
この火よ消えないでと 消えないでと
フェンダーミラーに
写した

「死んだらどうなる?」「人の魂はどこへゆくかな?」
「もしもあるのなら…それはどこかに移動するだけだ」
「魂のままで、行きたい場所で生き続けるだろう」
「……そうかもしれない。」「死んだら行きたい場所があるんだ。」

「それはどこなんだ?」彼女は封筒を渡してきた
「何かが起きたら、中を読んで誰かに伝えて?」と。
縁起でもないよ 話し終わり 彼女はキスをした
俺は驚いた 立ち尽くしていた 彼女が去ってく

翌日未明に 彼女は部屋で死んでいた
異常ない紛れもない自殺だった
友達は泣いた
父親は青かった
取り返しのつかない、仕出かした、と
青パトみたいな
真っ青

彼奴を殺した 手紙は破り下水に流した
内容を読んで 俺は彼奴を殺そうと決めた
憎しみや怒り というよりか、条理のおはなしだ
彼女の選択 肯定はしない されない だけれど

彼女の生き方 それは真っ当な生き方だった
だけど父親は 彼女とは つまり違っていた
それなのにどうして 彼女が死に 彼奴が生きている?
正しくない者 罰を下す事 バーンアウトしてた

俺は走り出す 彼女が行きたがってた
場所まではナビしないといけないんだ
閃光が走った
何もかも透明に
道路だけを残して 俺も透ける
オーバーレブでも
走った

殺した夜から 飲まず食わずで逃げ続けている
彼女の故郷へ 頭が痛い割れそうに痛い
エンジンも 全部 フロントリア アーム サスペンション
バラバラに痛い 花火が落ちてる どうして 花火が 

花火花火花 火花火花火花火花火花
はなびはなびはな びはなびはな びはなびはなびはな
花火花火花火 花火花火 花火花火花火
花火ってなんだ? 花火ってなんだ 花火って なんだ?

そういえばあの日 あの絵を描いてもらった
あの時に彼女は俺にくっついた
腕を絡ませた
彼女の小さな手が 俺を握る
フロントドア ノブ
しっかり

目的地に着いた 内部記憶装置がいかれてる
どうやってきたか 思い出せない けど 海に着いた
彼女の海だと 海の中に 彼女がいるんだと
そう気付いた時 抵抗が下がり 回りが軽くなる

もうオシャカだろう フューエルシステム 排気もダメだ
エンジンにヒビが あるみたいだ もう 故障じゃない
彼女の海には 俺は行けない 俺は人殺しだ
それでも彼女は この海にはいる 本当に良かった

ヘッドライトの下 バンパーとの継ぎ目から
飴色のエンジンオイルが流れる
目の前が霞む
ボンネットから煙 ひどい歪み
海だけが青い
「ありがとう。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

Set the Destination.

SCP-1340-JP - エンジンにヒビが入ってしまった車
執筆者: crow_109
本家記事: http://scp-jp.wikidot.com/scp-1340-jp
ライセンス: CC BY-SA 3.0

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閲覧数:31

投稿日:2026/05/16 07:23:46

文字数:1,912文字

カテゴリ:歌詞

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