夕食も取る気になれず部屋でぼんやりしていると、ノックと共にスタッフが呼びに来た。何処へ行くかは教えてくれなかった。俺は失格にでもなるんだろうか?

「こちらです、どうぞ。」

重々しい扉が開かれた。ソファに座っている浬音がこちらを少し見遣る。しまったな…こいつが証言すれば嘘がバレるか…?動きあぐねていると長身の男が奥から現れた。

「浬音ちゃん、体調は?一応点滴打ったけど。」
「大丈夫です…あの…密さんには…。」
「今こっち向かってる所、まだ報告はしてないよ。彼の話も聞かないとね。」

こっちに視線を向ける辺り、『彼』とは俺の事の様だ。促されて浬音の正面に座る。

「理戒フノオ君、報告では君は『自分が彼女を閉じ込めた』と言って皆を機材倉庫へ
 集めた、間違いないかい?」
「はい。」
「じゃあ、朝吹浬音さん、君は何故機材倉庫に居たのかな?」
「…自分で入りました。」
「え…?」
「ストラップが切れて機材倉庫の中へ落ちたので、それを拾う為に入りました。」
「それでドアが閉まったの?」
「はい。」

どう言う事だ?メオの話だと彼女は明らかにメオに閉じ込められた筈、庇ってるって事なのか?だけどメリットも無いのに庇うのも不自然過ぎる。

「…閉じ込められたのは私のせいです。誰も悪くはありません。」
「本人がこう言っている以上、今回の事はただの事故、と言う事になるね。」
「俺はお咎め無しって訳か?」
「実際、君じゃないでしょう?モニターに記録位残ってるよ。」
「…っ!!」
「君は当然無罪放免、メオさんもね。まぁ、そう言う事だから、行って良いよ2人共。」

優しい様で喰えない笑顔を見せると、男は奥へと戻って行った。嫌味な感じは受けなかったがその分強かさが滲み出ていた。ただの医者にしては随分場数を踏んでそうな奴だったな…。男が消えた扉を見ていると、浬音が無言で立ち上がり、スタスタと扉の方へ歩いて行った。

「あ…ちょっと、待てよ。」
「何ですか?」
「その…何であんな事言ったんだよ?俺でもメオでも居なくなれば、お前に取っちゃ
 ラッキーなんじゃねぇの?」
「…元々私のせいですから。」
「え?」
「失礼します。」

ペコリと頭を下げるとツカツカと出て行ってしまった。よく判らないけど首の皮一枚繋がったんだろうか?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-87.アヤメ-

多分ね

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投稿日:2010/08/24 12:00:20

文字数:963文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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