「ねえルカちゃん、誰のせいでお兄ちゃんはあっちに行っちゃったのかな」




遊びに行った帰り道、私は彼女と昔話をしていた。

今はもう、遠いどこかへ行ってしまった兄のことを、

彼女はどう思っているのか―――それを確かめたくて。



「そんなの、今じゃ分からないわよ」



目を逸らしながら回答を述べる彼女は何を考えているのか。

その言葉は、もうあの日のことを知る術が無いからか。

私には見当が付かないのだ。

…何一つ知らされていないから。



日も暮れてきたところで、私は彼女と別れて帰路に着いた。



兄と最後に会ったときは、違和感なんて感じなかった。

論文進んでる?そこそこね、そうだお兄ちゃんの気に入りそうなお店見つけたよ、じゃあ今度一緒に行こうか―――

何の変哲も無い普段どおりの会話だった。

それで世間話を少しして、二人で軽くお茶(と言っても兄はコーヒーを飲んでいたのだけれど)をして、それで?

そのまま私は家に帰った。

それが私の知る兄の最後だ。



次に見たのは花に囲まれて箱に横たわる兄の姿。

その瞳は固く閉じられていて、普通に眠っているようにしか見えなかった。

よく見ると手に何かを握っていた。それは水溜りのせいで文字がかすれて読めなくなった小さな小さなメモ用紙だった。





ねえお兄ちゃん。

私お兄ちゃんの気に入りそうなお店見つけたって言ったじゃない。

まだ一緒に行ってないじゃない。

妹に何も言わずにどこへ行っちゃうのよ。

せめて何か一言言ってから、それから出かけてよ。

他人は救えても自分自身は救えないの?

そうだよね、自分を救うなんて出来っこないもんね。

でも私救われてないよ。

周りの人たち皆みんな、誰一人として笑ってないんだよ?

この世界には救えない人なんていない、だから俺は見捨てることはしない、って言ってたじゃない。

嘘つき。

お兄ちゃんの嘘つき。

お兄ちゃんは自分自身を見捨てたんだよ。

バカ兄貴。




どうして?

どうしてお兄ちゃんは眠らなきゃいけなくなったの?







ネエドウシテ?















腹部に刺し傷があった。

知ってる、誰かにやられちゃったんだよね。

でも誰がやったんだろうね?





誰なの?

ねえ誰なの?

私の大好きなお兄ちゃんをこうしたのはいったい誰なの?




恋人だったルカちゃんもすごくつらそうだった。

いつもの優しくて頼れる「おねえちゃん」ぽさはどこにもなくて、涙はぼろぼろだった。

お兄ちゃんに縋りついて言葉にならない叫びを上げて、ようやく喋れるようになったときにもやっぱり声は震えてたんだよ?




「どうして、どうしていっちゃったのよ!」





それだけ言って、その日はずっとずっと泣き続けてた。

勿論私だって大泣きだったよ?

もう近年まれに見るほどの泣きっぷりだったよ?

それだけ大きすぎる出来事だったんだよ。







あのさ。

もしも時が戻せるとしたら、どうすると思う?


私は絶対にやり直す。

それで今度は逃げ出さずに、兄を奪った悪しき犯人を見つけ出してやる。





















あの日。

どこか暗い場所でくすりと笑った人影。



その姿は、誰も知らない。

そのときのその言葉は―――永遠に漆黒を彷徨う。






「ったく、これじゃ死に切れない。やっぱりどこか甘いんだから」


「いいさ。お前の要望は叶えないでおいてやる。……絶対に逃がしやしないさ」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

「Front side」

悲しみと後悔の海に溺れる彼女。
彼女は周りを疑わない。だから大切なことを見落とした。


七夕ですね。時間が無いので何も出来ませんありがとうございました。
これ単発扱いにしてください。



ててれてってれー!もしもボックス!
「もしも棚から白衣と眼鏡が出てきたら」!
決まってる!私とみせかけてルカさんに着せる!
あ、意外といいかも知れない。

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閲覧数:273

投稿日:2014/07/07 21:11:35

文字数:1,501文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    その他

    「Both sides」のグミちゃん視点…ですよね?

    【白】衣着る、【黒】ルカしゃん(/・ω・)/


    「羽のない新しい形の扇風機(10)」

    2014/07/09 21:59:21

    • ゆるりー

      ゆるりー

      そうです。

      それでも天使には変わりないと思います!

      「ワレワレハウチュウジンダー」ができないのが難点です。
      あれどこから風出てるんですかね?

      2014/07/10 18:01:06

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