茜色、お願い。
これ以上、誰かの未来を壊さないで――
≪アヤノの幸福理論 1【自己解釈】≫
――いつも、思い出すのは家族のことだった。
私の家は保育園だった。保育園とは名乗っているけれど、事故とかで親を失った子供もたまに連れてきてここで自立出来るまで暮らすこともあるんだという。
『楯山保育園』と書かれた看板を見て、私は小さく息を吸った。
思い返せば、彼女たちが来た時のことは、今でも覚えている。
『――アヤノはお姉ちゃんなんだから、皆のことをよろしくね』
お母さんに言われたその言葉を聞いて、彼女たちは照れ笑いをした。
楯山保育園は赤煉瓦の塀で囲まれている、小さな保育園だった。
彼女たちは、積み木を並べて遊んでいた。
「ねえ!」
私の声を聞いて、彼女たちは私の方をむいた。
私はまるで、秘密組織の団長になった気分だった。
彼女たちは――まだ詳しくは聞いたことがないんだけれど、様々な過去を抱えていた。すべての原因は、その赤い目――だということも、私は知っていた。
彼女たちの中の一人、ニヒルな笑いを浮かべる少年が呟いた。
誰かに拳でも向けられているのか、そんな怯えた顔で。
「――僕は化物、だから」
「そんなことはないよ」
私が答えると、彼は顔を上げた。そして、それと同時に私はあるものを見せた。パンフレットだった。そこに書かれているのは――ヒーロー。
私は話を続ける。
「よく言うじゃない。真っ赤な色って、主人公の色だって。あの戦隊だって、あの黄色い鼠を仲間にしているゲームの主人公だって。だから、怯えなくてもいいんだよ。ね?」
「……そうなのかな」
「そうだよ!」
アヤノは積み木を上に並べて家を作り上げた。
それを、三人に見せる。
「さ、積み木で遊ぼ?」
三人は、先程の怯えたような表情とは違って、とても輝いた笑顔で頷いた。
アヤノの幸福理論 1【自己解釈】
これは泣ける。
原曲 http://www.nicovideo.jp/watch/sm20671920
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