モニターと機材の山の中、キーを叩く音がカタカタ響いている。
「あ、お疲れー。」
「お疲れ様でーす。」
「昼間の反応どう?停電で規模縮小したから地味になっちゃったけど。」
「そうね、少し反応が薄い感じかな。コメントもちょっと少ないし。」
「ま、この辺は予想内だな。」
「あ、そうそう、報告入ってたんだ!憐梨さん、今妊娠3ヶ月目なんだって!」
「え?!じゃあ啓輔さん、7ヵ月後にはお父さん?!すごーい!!」
「電話でもすっごい喜んでたよ~。今から親バカ確定だよね。」
「…ん?」
ふと、目の前のモニターに視線を落とした。キョロキョロと辺りを見回しながら歩いている人影だった。
「あれ、ハレルさんだね?」
「何か落し物でもあったのかな?」
「今近くに居るスタッフに連絡して、何を探してるか聞いてくれ。」
「夕方以降は物探しに向かないからねぇ。」
―――Piririririririri…Piririririririri…Piririririririri…
数分と経たない内に携帯が鳴った。
「はいはーい、あ、お疲れ様で…え?…何だって?!」
ノアが弾かれる様に立ち上がった。
「どうしたの…?」
「…朝吹浬音がどこにも居ないって…!昼前から誰も姿を見てないらしいんだよ!」
サーッと全身の血の気が引く音が聞こえた。早鐘の様な心臓を抑えて、ぎゅっと唇を噛み締める。
「全員に緊急連絡、手の離せない者以外は捜索開始、2人はモニタースキャンと動体
目視確認頼む、俺はプレイヤーに連絡を取って来る。」
「判った!」
「了解。モニター、カメラ設定切り替えお願い。」
歩きながら時計を見る。PM.18:20、昼前…例えばゲームクリア直後からならAM.11:40から居なくなってる。そんな長時間姿を見ないのはおかしい…。
「茅ヶ崎さん。浬音さんを知りませんか?」
「報告は受けた、彼女は今捜索中だ。」
「私が最後に見たのはゲームの指定ポイントだった中央花壇です。その後の昼食にも
来ていませんでしたし、自分の部屋で休んでると思ったのですが戻ってもいません。」
「他のプレイヤーで誰か見かけた者が居ないか聞いてみよう。」
「判りました。」
念の為携帯に連絡を入れてみるが返って来るのはアナウンスだった。
「お掛けになった番号は電波の届かない場所にあるか、電源が…。」
「…クソッ…こんな時に…!!」
無機質な声すらもどかしかった。何処に居る…?勘違いであってくれ…無事で居てくれ…頼むから…頼むから…頼むから!
「浬音…!」
DollsGame-82.ルバーブ-
さっがせー
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