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 夜が白む。食いさしのサンドウィッチを齧り、車道の真ん中で目指す街の方角を見ていた。

 「蒼音の奴、どういう指示をしたんだ」

 重音テトはエルグラスで「VOCALION」を失ってから、敵の捜索を掻い潜って脱出路を探していた。
 エルグラスは比較的前線に近く、奇襲としてはそこそこの成功を収めた。「VOCALION」一機もそんなに安くないが、第一世代の「VOCALOID」を撃破出来たのは儲けた。
 そういう訳で前線には直接向かわずに、最初から逆の国境を目指し、中立国から船で帰るルートを選んでいた。
 だから、味方の「VOCALION」がノコノコと空を飛んでいるのを見て、それなりの豪華ランチを中座せざるを得なかった。
 恐らく数キロメートル先、「VOCALION」は至極当然に堕ちた。ところが。

 ――――――――――gggggggggggggggg........ffffffffffffff.....werererererererrrrrr.......♪

 墜落する直前、薄く聞こえる「VOCALOID」同士の共鳴、その声色にはハッキリと聞き覚えがあった。
 初音ミク、と亞北ネルである。前線にいないと思ったら、過去の攻防戦で多くの敵を殲滅したその場所で、暢気に基地を構えているようだ。
 軍務には不向きだと敵味方共に評判であったから、更迭か退役だろうと思われていたが、クリフトニアもなかなか「VOCALOID」遣いが荒い。
 それにしても、良い場所に置いたものだ。行路の間に敵戦力の配置なども探っていたが、空白地帯と思われていた地域の多くをカバーしている。これでは前線の戦力を後送する必要がなく、重音テトが先だって行った強襲作戦が、今後はかなり効果が薄れることを意味していた。
 センスで完全に上を行かれた。クリフトニアが将校レベルを次々と「VOCALOID」に仕立てていると聞いていたが、かなり軍事慣れした奴が「VOCALOID」になって運用に関与しているようだ。

 ――――――――――蒼音。私だ。

 その瞬間、空全体が凍りついたかのような、大きな緊張が走った。

 SOUNETAYA――――――――――テトか!脱出……、したという訳ではなさそうだな。
 KASANETETO――――――――――まあね。初音ミクをみつけた。
 SOUNETAYA――――――――――そうか。当然聞かれてるのは分かってるよね。
 KASANETETO――――――――――うん。悪いけど、「VOCALION」また送ってくれる。今度は無人で。
 SOUNETAYA――――――――――分かった。だけど、分はあるんだろうね。
 KASANETETO――――――――――ない。まあ、なんとかなるでしょ。
 SOUNETAYA――――――――――はいそうですかと、届けさせてくれたらいいけどね。
 KASANETETO――――――――――10kmの誤差なら問題ない。いつでもいいぞ。
 SOUNETAYA――――――――――今年に入って一番の無茶振りだ。適当で良い?
 KASANETETO――――――――――動けば何でも良い。いつでもどうぞ、だ。なあ?
 YOWANEHAKU――――――――――位置を補足しました。
 KASANETETO――――――――――やべ、喋りすぎた。とでも言うと思う?
 YOWANEHAKU――――――――――後ろの正面、

 「だあれ」

 KASANETETO――――――――――亞北ネル。

 「正解」

 サンドウィッチが飛んだ。空中で弾け飛んだ。ネルが舌打ちし、テトの姿は消えていた。

 AKITANERU――――――――――くそ、こんだけ近づいても避けやがる!化け物が!
 YOWANEHAKU――――――――――はいロスト。お疲れ様でした。
 AKITANERU――――――――――お前、そっちちゃんと見張ってろよ!陽動かもしんねえんだからな!
 YOWANEHAKU――――――――――眠い……。
 AKITANERU――――――――――黙れ!猫村司令とこそこそいちゃつきやがって!お前全部知ってたって何の話だ!
 YOWANEHAKU――――――――――おやすみなさい。
 AKITANERU――――――――――このバカハク!基地に帰ったら全部吐かせてやる!首洗って待ってろ!
 KASANETETO――――――――――相変わらずだな……。
 AKITANERU――――――――――どこだ変態三十路!

 ドン。

 KASANETETO――――――――――また会いましょう。

 「あいつ、石ころでスナイプして来やがった……」

 地面にはナイフでえぐったバターの切り込みのように、引き裂かれた傷が穿たれていた。

 YOWANEHAKU――――――――――ネルの正面、500メートル先らへんにいますよ。追いますか?

 「ちっ……、今度は覚えとけよ」

 流石に石スナイプで精確な射撃は無理なようだが、間違いなく狙っていただろう。ちょっと言っただけでマジギレするのは、余裕があるともないとも言える。ハクの援護もあるので、堂々と飛んで帰る事にした。

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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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機動攻響兵「VOCALOID」 2章#2

情報戦描写。と言い張ってみるテスト。申し訳程度のバトルシーンもあるよ!

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投稿日:2012/11/06 05:57:54

文字数:2,175文字

カテゴリ:小説

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