機材倉庫のドアを開けると、夕方だと言うのにまだ蒸し暑い空気が吹いた。倉庫の中を見ると、隅の方で蹲っている姿があった。三月ウサギは慌てて駆け寄ると、ぐったりとした浬音を抱き起こした。

「…浬音!!」
「おい!居たぞ!」
「脱水症状起こしてるわ!誰かお水!早く!」
「医務室連絡して、タオルと氷嚢、それに冷却シートと点滴の用意を。」
「浬音さん?浬音さん!」
「駄目、意識無いよ…どうしよう…?!」
「貸せ、飲ませる。」
「……っ!…うっ!ゴホッ!…んっ!ゴホッゲホッ!!…鳴…兎…?」
「浬音…浬音…!」

心底ホッとした顔で、心底愛おしそうに、その腕に彼女を抱き締めて、それが判らない程帽子屋も浬音も馬鹿じゃない。だけど多分、三月ウサギは自分を偽って隠し続けるつもりなんだろう…。理由は知らないけど難儀な人だ。

「大丈夫か?熱中症起こしてる、医務室運ぶよ?良いね?」
「季琳さん…あの…私…。」
「大丈夫、今は休んで。」

数名に抱えられて医務室へと運ばれるのを見届けると、そのまま『彼』へ向き直った。

「何か言う事は?理戒フノオ君。」
「…別に。」
「ああ、そう。まぁ、興味無いけど。」
「…正直言って今回はやり過ぎよ、悪戯の範疇越えてるわ…メオさんまで脅して…
 信じられない…。」
「私は貴方を軽蔑します。」
「悪い人だとは思いたくないけど、ちょっと勘弁だね…フォロー無理。」
「見損なったぞ…。」

蔑む様な目を向けると、皆その場を去って行った。と、ツカツカと強い足音と長い髪がふっとすれ違った。あの服…リトルフラワーか…手を振り上げたと思うと銃声みたいな乾いた音が響いた。

「…何やってんのよ…。」
「………………………。」
「馬鹿っ…!!」

予想通り過ぎてドラマのワンシーンでも見てるみたいな錯覚に陥る。気を抜くと笑ってしまいそうだ。

「孤立しちゃったね。」
「黙れよ。」
「下手したら失格とかになるんじゃない?」
「黙れっつってんだよ!このヲタ野郎が!」
「生憎、俺は厄介な相手を敵に回す馬鹿に、遠慮する程プライド低くないんでね。」
「…猫かぶりが…!」
「何とでも。ま、せいぜい頑張って。理戒フノオ君。」

このメガネもちょっと飽きて来たな…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-84.ハイドランジア-

性格良いなんて一言も書いてませんよね?

閲覧数:267

投稿日:2010/12/14 17:26:49

文字数:937文字

カテゴリ:小説

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