-箱庭の少女side-
「ただいま」
「お父さん」が家から帰ってきたようだ。
私は自ら車椅子を押して出迎える。
「お帰りなさい、お父さん」
「ただいま、ミッシェル。今日もお仕事、頑張ってきたよ」
「お父さん」はそう言って微笑んだ。
「ねぇねぇ、今日は何をしたの?」
「・・・ミッシェル。外の世界は残酷だ。君のような“綺麗な人”は、外の世界に行って穢れてはいけないんだ。私は、少しでも外の世界のことを話したら、君が穢れてしまうんじゃないかと思っているんだ。
意味が、わかるかい?」
「えぇ、少し・・・」
「うん、完全に知らなくていいんだよ。ミッシェルにはまだ難しい話かもしれない」
「お父さん」──貴方は、外の世界を話してくれなかった。
それでも、よかった。貴方の傍にいられたから。
「『大罪の器』・・・見つからないな・・・」
貴方は呟いた。
「?『大罪の器』って?」
「い、いや何でもないよ」
ふふっ、隠し事しちゃって。私知っているんだよ?『大罪の器』を。
だって、私自身が『大罪の器』なんだよ?
私の本名は「クロックワッカーズ・ドール」。
「ミッシェル=マーロン」ではないの。
私は【怠惰】の器。
貴方の本当の娘ではないの。
貴方は、本当に私を「娘」だと思ってるの?
貴方は、どうして私に溺れているの?
そんな感情を押し殺し、私は貴方にいう。
「ねぇ、お父さん・・・」
「?なんだい?」
「歌っていい?外の世界に聞こえないように」
「いいよ」
微笑む貴方から承諾を得ると、私はるりらるりらと、唄を歌った。
***
「ミッシェル・・・話があるんだ」
「なぁに?」
「えっとね・・・」
貴方は言い辛そうに、口を開いた。
「外の世界は・・・“戦争”を・・・しているんだ・・・・・・」
「“戦争”?」
「うん・・・今、私たちの家は・・・・・・焼かれているんだ」
「焼かれている?」
「もうすぐ、この部屋にも火が回る」
「・・・」
「でも、大丈夫。二人一緒なら、どんなところでも怖くないさ」
口元がキュッと上に上がる。
貴方は私に溺れているのね。例え、最初はそうじゃなかったとしても。
火がこの部屋を包みだした。
徐々に熱くなっていく。
「きっと、燃え尽きた家から見つかるんだろうね。私たち二人の親子の亡骸が・・・」
貴方は勘違いしている。
燃え尽きた家から見つかるのは、孤独な貴方の亡骸だけよ。
やがて燃えざかる火は、私たちを包んだ。
***
「やっと目覚めたわね、『クロックワッカーズ・ドール』」
目覚めると、見知らぬ黒髪の美女が立っていた。
私は、どうやら車椅子に座っているようだ。
何故か、足が立ったり歩いたりするときと同じ痛みに襲われている。
「私は・・・?」
「ふふっ、焼け焦げた屋敷から見つかったのよ、孤独な男の亡骸と、やけこげた『ぜんまい仕掛けの人形』がね」
彼女は嗤うと、間髪をいれずに
「さて、『グラス・オブ・コンチータ』、『マーロン・スプーン』、『ルシフェニアの四枚鏡』も手に入れたことだし・・・映画館に行きますか」
「映画館?」
「えぇ。貴方の『お父さん』、ガレリアンが建てた小さな映画館──とはいっても、私が建てさせたのだけどね」
そう言って嗤った彼女の眸は、無邪気な子供のようだった。
「そうだ・・・せっかくだから、ガレリアンについて教えてあげましょうか?」
私は頷く。彼は外の世界について教えてくれなかった。
彼の口からではないが、この際教えてもらおう。
「いい?ガレリアンはね──」
私は、彼の生前について、全てを教えてもらった。
彼の妻と娘は事故で亡くなったこと。
彼が『法廷の主』──悪徳裁判官といわれていること。
彼が【強欲】の悪魔に憑かれていたこと。
「私が知っていることは、全て教えたわ。貴方は『大罪の器』だから、嫌でも映画館に連れてくわね」
そういって彼女は、私の車椅子を押し始める。
「ねぇ──・・・」
「何かしら?」
「貴方の名前は?」
「・・・Maと、呼んどいて頂戴」
「それじゃあ、Ma」
「何?」
「私・・・『法廷の主』になる」
「・・・・・・え?」
「『お父さん』も、そう思ってる気がするの」
「そう、『父』の意思をついで、勝手に『法廷の主』に──面白そうね、私的には」
私の後ろから、Maが嗤う声が聞こえた。
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ご意見・ご感想
友愛@in不可
ご意見・ご感想
グダ02なんかぢゃないですよ(/_\;)
私はピエロさんの小説(自己解釈)は、
結構近い気がします!!
2011/12/25 20:09:30
雪りんご*イン率低下
いえいえgd×2ですよw
近いでしょうか・・・?
自分的には、
「とりあえず公式に頼りに頼って、んでその小さすぎる脳でやる気のない神様が変な自己解釈を
思いつかせただけ」
の、宇宙の端まで遠い自己解釈だと思うんですけどねwww
2011/12/26 18:35:57