君の音楽

 1

 今日はバレンタインデー。乙女たちが意中の相手に気持ちを伝え、あわよくば交際に持ち込もうと奮起する日であり、私の幼馴染の誕生日でもある。そして私も、自分に似合わないことは重々承知していながら、ちゃっかり手作りのチョコレートをカバンに忍ばせたりしているのである。
 今までは義理だからとか幼馴染だからとかで誤魔化してきてはいたが、今年で私の高校卒業ということもあり、今度こそは隠さずに本命チョコとして渡したい。
 と、密かに気合を入れ直していると、カイトが家から出てきた。
「めーちゃんごめん、寒い中待たせちゃって」
 彼こそが、私の幼馴染であり想い人の始音カイトである。一歳年下だが、家が隣で母親同士仲が良かったこともあり、幼い時から一緒にいる腐れ縁だ。頭がよく性格も温厚で、ピアノも上手く、顔立ちも比較的整っているから、身内びいきと恋する乙女フィルターを引いても彼はいわゆる優良物件だろう。
……当然、彼に想いを寄せる恋敵も少なくはないのだが。
「僕の都合で早い時間にしてもらってるのに、ほんとごめん」
「別に平気よ、待ったって言ってもほんの二三分だし」
 私達は同じ高校に通っていることもあり、一緒に登校している。カイトの所属する吹奏楽部の朝練があるので、普通より早くに待ち合わせているのだ。
「そう……?」
「そうなの。昔の習慣でつい早く起きちゃうし、早く行って勉強も出来るから良いのよ」
 そう、かくなる私も引退した身ではあるが昔は吹奏楽部に籍をおいていたのだ。その習慣で目が覚めるというのはけして嘘ではない。一緒に登校して少しでも一緒にいる時間を増やしたいという乙女の打算も含まれてはいるが。
「でも遅刻したのは許せないわね。帰りに何か奢りなさい」
 さり気なく、帰りも一緒に帰る約束を取り付けてみる。カイトは穏やかに微笑んで了承してくれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

君の音楽 #1

久しぶりのアップになります。
今回は曲等からの二次創作ではなく筆者の妄想100%になっております。学園モノです。
もうしばらく続く予定なので、お付き合いいただけると嬉しいです(*´ω`*)

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投稿日:2013/09/16 22:24:33

文字数:788文字

カテゴリ:小説

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