最後の余韻が高い天井に吸い込まれていく。
誰も何も声を発さず、ミクは手を握り締め恐る恐るルカのほうをうかがった。

冷たい目がミクを見下ろしていた。

「それは、本当にお前の歌か」

硬質な声に身がすくむ。

「わ、たし、は」

今歌える歌を歌った。
それは間違いない。
けれど、自分の歌かといわれると、うなずけない。

「己の歌も歌えぬ口ならばいらなかろう。
そのものの首を刎ねておしまい」

「く、び……?」

何を言われたのか一瞬理解できなかった。
首を刎ねろと、そういったとわかったとき一気に血の気が引く。

「ま、待ってください」

「歌を歌わぬものに興味はない」

追い出すように手を振る。
ルカに近づこうとするミクを控えていた兵士たちが拘束した。

「歌います! 自分の歌、歌いますから。
待ってください、お願いします」

必死に咲けんでルカを見つめる。
ルカがじっとミクの瞳を覗き込んだ。

「今ここで?」

「ここでは、無理です。まだわたしはわたしの歌を見つけてない」

ルカの目から逃れたくなる気持ちを抑えて、見つめ返す。

「見つけたら必ず歌いに来ます」

怖い、けれど目をそらしたら本当に首を刎ねられる。
そう思ってミクはルカを見る目に力をこめる。

「では次の機会までに見つけて来い」

ルカがそういうと拘束が解かれる。

よろよろと立ち上がったミクにリンとレンが駆け寄ってきた。
ミクを支えるように二人がぎゅっと手を握ってくる。

「行こう、ミク」
「探しに行こう」

二人に力強くうなずき、ミクは玉座に背を向けた。
城を出る前に一度だけ振り向き
「いってきます」とつぶやいた。



再び二人に連れられていろんなところを回る。
今度は前とは違う、自分の歌を見つけなければと心が逸る。

闇雲にぐるぐると回り続ける。
けれど何も思いつかない、見えない、聞こえない。

早くと、さらに焦ってしまう。

「ねえねえ、そんな焦ってたら聞こえるものも聴こえないよ」
「ねえねえ、そんな怖い顔してたら見えるものも見えないよ」

二人の声に足を止める。
そう、聞こえていたはずのいろいろな歌が、今は聞こえていなかった。
風も木も花も水も、みんな歌っているはずなのに。
何も聞こえていなかった。

溢れる歌を聞くことができずに、自分の歌が見つかるわけもない。

「でも、次に女王様が歌うまでに歌を見つけないと」

「女王様は気まぐれだから、いつ歌を召されるかわからないよ」
「女王様を気にしてたら、いつまでも自分の歌は見つからないよ」

「わかってるけど……」

見つけなければと思えば思うほど、遠ざかってしまう。
遠ざかるほど、見つけなければと焦ってしまう。

「どうしたら、わたしの歌が見つかるのかな」

「ミクは何を歌いたいの?」
「ミクはどうして歌いたいの?」

立ち止まったままのミクの周りを二人はぐるぐると回る。

「何を……」

形はわからない。
でも、ルカのように、二人のように。
そう、心を振るわせる何かを。
あふれ出る想いを、歌いたい。

「どうして……」

それは簡単なこと。
歌が好きだから。
歌うことが、大好きだから。
思うままに、歌いたい。

さあと風が軽やかな歌をかなで頬を撫でていく。
水のせせらぎ、木の葉ずれ。
世界に満ちる歌が聞こえてくる。

音は、歌は、きらきらと輝いて世界を彩っている。

「きれい……」

今この胸を震わせているもの。
形をとり始めているもの。

何も考えずに口を開く。
音が旋律を作り、言葉が詩になる。

世界に満ちる歌と溶けあい一つになるような。

解放されていく感覚に身を任せて、ミクはただ歌った。

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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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【物語】うたをさがして 6

歌とお話でのお話のお話部分その6
歌詞はあとでまとめて書く予定

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投稿日:2010/08/30 16:41:10

文字数:1,545文字

カテゴリ:小説

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