最後の余韻が高い天井に吸い込まれていく。
誰も何も声を発さず、ミクは手を握り締め恐る恐るルカのほうをうかがった。
冷たい目がミクを見下ろしていた。
「それは、本当にお前の歌か」
硬質な声に身がすくむ。
「わ、たし、は」
今歌える歌を歌った。
それは間違いない。
けれど、自分の歌かといわれると、うなずけない。
「己の歌も歌えぬ口ならばいらなかろう。
そのものの首を刎ねておしまい」
「く、び……?」
何を言われたのか一瞬理解できなかった。
首を刎ねろと、そういったとわかったとき一気に血の気が引く。
「ま、待ってください」
「歌を歌わぬものに興味はない」
追い出すように手を振る。
ルカに近づこうとするミクを控えていた兵士たちが拘束した。
「歌います! 自分の歌、歌いますから。
待ってください、お願いします」
必死に咲けんでルカを見つめる。
ルカがじっとミクの瞳を覗き込んだ。
「今ここで?」
「ここでは、無理です。まだわたしはわたしの歌を見つけてない」
ルカの目から逃れたくなる気持ちを抑えて、見つめ返す。
「見つけたら必ず歌いに来ます」
怖い、けれど目をそらしたら本当に首を刎ねられる。
そう思ってミクはルカを見る目に力をこめる。
「では次の機会までに見つけて来い」
ルカがそういうと拘束が解かれる。
よろよろと立ち上がったミクにリンとレンが駆け寄ってきた。
ミクを支えるように二人がぎゅっと手を握ってくる。
「行こう、ミク」
「探しに行こう」
二人に力強くうなずき、ミクは玉座に背を向けた。
城を出る前に一度だけ振り向き
「いってきます」とつぶやいた。
★
再び二人に連れられていろんなところを回る。
今度は前とは違う、自分の歌を見つけなければと心が逸る。
闇雲にぐるぐると回り続ける。
けれど何も思いつかない、見えない、聞こえない。
早くと、さらに焦ってしまう。
「ねえねえ、そんな焦ってたら聞こえるものも聴こえないよ」
「ねえねえ、そんな怖い顔してたら見えるものも見えないよ」
二人の声に足を止める。
そう、聞こえていたはずのいろいろな歌が、今は聞こえていなかった。
風も木も花も水も、みんな歌っているはずなのに。
何も聞こえていなかった。
溢れる歌を聞くことができずに、自分の歌が見つかるわけもない。
「でも、次に女王様が歌うまでに歌を見つけないと」
「女王様は気まぐれだから、いつ歌を召されるかわからないよ」
「女王様を気にしてたら、いつまでも自分の歌は見つからないよ」
「わかってるけど……」
見つけなければと思えば思うほど、遠ざかってしまう。
遠ざかるほど、見つけなければと焦ってしまう。
「どうしたら、わたしの歌が見つかるのかな」
「ミクは何を歌いたいの?」
「ミクはどうして歌いたいの?」
立ち止まったままのミクの周りを二人はぐるぐると回る。
「何を……」
形はわからない。
でも、ルカのように、二人のように。
そう、心を振るわせる何かを。
あふれ出る想いを、歌いたい。
「どうして……」
それは簡単なこと。
歌が好きだから。
歌うことが、大好きだから。
思うままに、歌いたい。
さあと風が軽やかな歌をかなで頬を撫でていく。
水のせせらぎ、木の葉ずれ。
世界に満ちる歌が聞こえてくる。
音は、歌は、きらきらと輝いて世界を彩っている。
「きれい……」
今この胸を震わせているもの。
形をとり始めているもの。
何も考えずに口を開く。
音が旋律を作り、言葉が詩になる。
世界に満ちる歌と溶けあい一つになるような。
解放されていく感覚に身を任せて、ミクはただ歌った。
→歌6へ
コメント0
関連する動画0
オススメ作品
永遠に咲かぬ桜を寂しく待ちわびる貴婦人がいる
彼女はそこに封印された何かを確かめたい
しかし桜の樹の下には屍体が埋まっている
彼女がそれに辿り着いた時
何も起きないとは保証できない
その彼女の命を受け春の温もりを集める刀使いの彼女
彼女は主人の真意を知らないが彼女は主のために遂行する
伴う結果が桜の...Stairway to the Withered

出来立てオスカル
6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)

時給310円
[Intro]
「ガイ! ガイ! ガイ! ガイチュウジャー!」
「ガイ! ガイ! ガイ! ガイチュウジャー!」
[Verse A]
都会の闇に カサリとゆれるキッチンの影
鋭く光るまなこ ヒトが寝静まる
真夜中のダンス 冷蔵庫の陰が
俺たちの秘密基地だ
[Verse B]
空から来るぜ 巨...奇快戦隊ガイチュウジャー 『不滅のいのち!ガイチュウジャー』

まほうびん
怖い夢を見たせいだ
握るシーツででくるまってる
膝関節が軋む
毳立ちだしたほうきは何ゴミだ
部屋の隅で闇が囁く
そうなのか。と
人里遠く離れ森に居る
エナメルパンプスは腐葉土に向いてない
八卦に光る炉は多少焦げてる
人の目に侵されがちなあいつは...Happiness Is a Warm Spectrum

出来立てオスカル
Hello there!! ^-^
I am new to piapro and I would gladly appreciate if you hit the subscribe button on my YouTube channel!
Thank you for supporting me...Introduction

ファントムP
The Lone Heaven 歌詞
この世の理を求めてた それは最初の世界の終わり
巨人の理老いて果てる 新しき世界の始まりよ
人々ただ 争い合い 神々ただ見捨てるだけ
悪霊の瀬 地獄開き 死神たち 見つめている
明日の幸せを求めずして 明日のそれはやって来ない
他人の幸せ見捨てる者 ただ一人孤独...The Lone Heaven 歌詞

Artistrie
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想