葉月に暮れた想いを焦がして。
最後だね。
空っぽな日々の中、足跡を辿った。
夏の匂いが漂う海辺に浮かぶのは。
星の降り注ぐ藍の夜空。
葉月に暮れた想いを焦がして。
繰り返し今も歌うのは。
もう言葉じゃ届かないから。
夜凪の内に記憶を手繰って。
花火みたいに咲く、貴方の声がした。
(「久しぶり。」)
(目の前の非現実な情景とは相反する、何気ない声色が聞こえた。)
(音楽の生まれたきっかけは、祈りを捧げるためだったとか。)
(そんな話を聞いたことがある気がする。)
(もう言葉では届かない場所にいる貴方へ向けて。)
(取るに足らない私は、祈りにも似た、色の無い旋律を紡いでいた。)
(どれだけ時間が過ぎようと、あの八月に今も囚われたままの私。)
(そんな自分との決別のため、音楽を書き残し、想い出を一つずつ消していくように足を動かしていたはずだった。)
(変に賑やかな星空。夢でも視ているのだろうか。)
(なぜ、浜辺に貴方が佇んでいるのでしょう。)
(目と目が合う。声が聞こえる。)
(その刹那、まるで吸い込まれるように、私は過去の記憶と後悔の波に飲まれてゆく。)
狭い視界。死骸みたい。
具体のない暗い未来。
出会い。期待。甘い。利害。
痛い。嫌い。誤解。理解。
怖い。辛い。不快。苦い。
忘れられない。
まだフラフラしていた不埒な心。
夜凪の内に記憶を手繰って。
葉月に暮れた想いを焦がして。
目の前に声は消えていく。
その涙の意味を知っている。
貴方を目掛けた右手が空を切る。
見下す月灯り。ひとつの影法師。
葉月に暮れた想いを焦がして。
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