「魔の会社…って、一体、何でしょうか？」
　りりィさんは、紙魚子さんの言葉を聞いて、尋ねる。

「あ、ご免なさい。ちょっと冗談っぽく言ってしまいましたね」
紙魚子さんは、ちょっと頭を下げて答えた。

「“魔の”…なんてオーバーですけど。でも、その会社と仕事をするとします」
りりィさんの方に向き直って、彼女は言った。
「すると、いろいろ変なことが起こるという噂があります。さっき、“出ちゃった”と言ったのは、そういう変なことが出ちゃった、という意味です」

りりィさんは、ちょっと興味あり気に聞き返した。
「それはどんな、変なこと、なんですか？」


●考えられない動きになる？

紙魚子さんは、メガネの縁を指で上げながら答える。
「あのー、今、雑貨の売場で大ヒットしてる『コップのプチ子』っでご存知ですか」

りりィさんは、大きくうなずいた。
「ええ、何でも急にものすごいヒットになった、カプセルトイの女の子の人形でしょう？」
彼女もうなずいた。
「そうです。あれ、あっという間に、100万個以上のヒットになりました。製品を企画・制作したのは“綺譚”っていう会社なんですが、売り出しのプロデュースに、その“月光企画”が、関わってるんです」

「へえ、そうなんですか」
りりィさんは、目を丸くした。

紙魚子さんは続けた。
「“月光企画が仕事にからむと、考えられない動きになる”。いまそういう、業界での噂があるんです」
彼女はまたメガネを上げて、腕組みをして首をかしげた。
「私、その月光企画さんと、よく一緒に仕事してまして、最近は、このニコビレにも、その会社の方がよく来るんです」

「ああ、それで“出ちゃった”と言われたのね、先ほど」
紙魚子さんはうなずいた。
「はい。でも、どうもあそこの会社、不気味なんです。スタッフの人が、言葉のはしで“ツクヨミ様が”なんてつぶやいたり…」


●あんまり真面目な話でも…

りりィさんと、紙魚子さん。
普段は落ち着いた感じの2人の女性が、熱心に語り合って、会話が盛り上がっている。

それを見ながら、ぱみゅちゃんは少々、手持ち無沙汰になった。
ところが、目の前にテトさんとレイムさんの2人が居なくなっているのに気づいた。
「アレ？レイムとテトさんは？」

部屋を見回すと、窓際で…
2人が腰を振りながら、ダンスをしている。

「…ちょっと、何してるのよ」
はみゅちゃんに言われて、レイムさんはこちらを向いた。

「ええ、あんまり真面目は話ばかりでも、体に悪いでしょ？」
ダンスをしながら、答える。
「気分転換に、“おちゃめ腰振りダンス”を、テトさんに教えたの」

テトさんも熱心に、彼女と並んで、ダンスをしている。
「ぱみゅちゃん。これ、面白いわよ!!」

「ヤレヤレ」

ぱみゅちゃんは、あきれて2人を見てつぶやいた。
「魔がとりついた方が、まだいいかも。おとなしくなるなら」┐(-。ー;)┌