「はー…」


九月に入って数日経ったある日。
少し頑丈になったドアにもたれかかり、私は呟いた。


「…暇だ」


さっきまで勉強をしていたはいいが、だんだん手が痛くなってくる。
あと、単純に飽きただけである。
だって背中も痛くなったんだもん(理由になってない)。

というわけで、やることがなくなったのである。


無意味にピアノの鍵盤の絵を描いたり、紙に落書きしたり、無意味にラジオ体操をしたりする。
しかし筋肉痛で足が痛いので(理由:省略)体操を諦めた。
他の人の迷惑にならない程度に歌ってみたりする。
高音をどこまで出せるか挑戦してみる。
でも、暇である。

部屋にいてもやることがないので、立ち上がる。
……やっぱり足が痛い。
だけど暇。
でも足が痛い。
だけど暇。
それでもやっぱり(ry


結果、部屋を出ることにした。
ドアをそっと開けて、周りをきょろきょろ見回し、誰も廊下にいないことを確認する。
そしてそっと部屋を出て、そーっとドアを閉めた。

そしてドアをじーっと見る。
うん。やっぱりアレだよね(どれだよ)。

ドアの「202」と書かれたプレートの下に、さっき落書きをした紙をセ○テープで一箇所貼る。
説明しよう!二回レベルアップした後のかなりあ荘のドアは、しるるさんの優しさにより少し頑丈になったのだ!
そんなドアにガムテープを貼ったら絶対に怒られるけど、セ○テープなら跡も残らず簡単にはがせるのだ!
以上、無駄な説明終了。うん、多分怒られない。多分。
きっと一部の人にだけわかるであろうテンションでお伝えしました。


階段を上る。
ちなみに、私が三階へ行くのはこれが初めてである。
そして301号室のドアをノックする。


「てぃあちゃーん!いるー?」


しかし返事はない。
……いや、予想はしてたよ。別に無視されたかもしれないとか、思ってないよ?
今すごく虚しくなったね。


そして階段を降りる。
もうギシギシいわなくなったな。
だけど、やっぱり私が転ぶときだけなんか音がするんだよね。
……あ、私がどっかぶつけたときの音か!
絆創膏がかかせないね!何このドジ…どんくさい人!


とりあえず共同リビングに行く。
中は誰もいない。
だがしかし、謎の「ぶいーん」という音が!
そしてその方向を見ると!……扇風機の電源がつけっぱなしである。

最後に電源入れたの誰だろう。
しかも「強」のままだ。
とりあえず寒いから「弱」に設定。

…今思ったけど、この扇風機、張り紙があるんだよね。
「あー禁止」って書いてある。
多分、「ワレワレハウチュウジンダー」もできないね、これ。
多分しるるさんが書いたんですね。
誰もいないからやろうかなって思った私涙目。


そして今になって、数日前から私の本をリビングに置きっぱなしだったことを思い出す。
確か読みかけだったな、あれ。読もうかな。
どこにあるかなー…
あ、あった。

どうでもいいけど、今日やけに静かだよね。
皆いないのかな?
ま、いいか。本でも読みながら静かに過ごそう。
そもそも騒ぐメリットがないからね(しかもそうしたら、しるるさんに怒られます)。
そんなことを考えながら、ふかふかのソファに腰を下ろした。




*




「…このヘタレ」


ツッコミを入れながらしばらく読書に没頭していると、かちゃりと音を立ててリビングのドアが開いた。
誰かが入ってくる気配がする。
てぃあちゃんだったら、間違いなく私めがけて飛んでくるから、対処が面倒だ。
だけど静かに入ってきたみたいだから、きっとてぃあちゃん以外の人だろう。


「…お、ゆるりーさん。今日は一人ですか?」


少し低めの聞き慣れた声が聞こえる。
このかなりあ荘には、男性は少ない。
そして私の知るかなりあ荘の男性は一人しかいない。
顔を上げれば、そこには紙袋を抱えたターンドッグさんが立っていた。


「はい。そうですよ。…こんばんは、ターンドッグさん」


私は読んでいた本をパタンと閉じた。


「なんか読書の邪魔しちゃいましたね。すんません」
「いえ、丁度キリがいいところだったので大丈夫ですよ」
「そうですか。…そういや、さっき『このヘタレ』って聞こえた気がしたけど、どんな本読んでたんですか?」
「どう言えばいいのかなー…なんか、主人公がフラグを立てまくる話だったような…」
「どんな話だ!?w」


主人公が「俺は幽霊なんて怖くないもんね!へっへっへ」と言った後、「うああああお化けだあああああ!!」って叫ぶような話だからな。
あと「俺がこの謎を解明してみせる!…あれ、誰か来たみたいだな」とも言ってたな。
絶対フラグでしょ、こんなの。
なんでこんなヘタレが主人公なんだろうね?
もうちょっとかっこよくなってくれ。


「ところでその紙袋は何ですか?」


私が尋ねると、ニヤリとターンドッグさんが口角を上げた。
いいことがあったみたいだな。


「ゆるりーさん、よくぞ聞いてくれた!実は…とうとう『シルルスコープ』を手に入れたのです!」


ターンドッグさんは紙袋からそれを取り出す。
脳内に秘密道具登場の音が流れる。


「おお!念願のシルルスコープ!さっき受け取りに行ったんですか?」
「受け取りに行ったというか、ネルに作ってもらったんですよ。で、グミ達といろいろあって…すぐ戻る予定だったんですけど、ここの部屋の扇風機つけっぱで行ったんで…」
「そうでしたか」


グミちゃん達と何があったのかは、あえて聞かないでおこう。
ということは、だ。


「これから清香ちゃんを見ることができるんですね」
「まあ、すぐには使いませんけどね。もう少し様子を見てから使おうと思ってます」


そしてターンドッグさんはシルルスコープを紙袋にしまった。
そういえば、なんで紙袋…?


「そういやさっき、ちょっと自室に用があって上に行ったら、ゆるりーさんの部屋のドアに『失踪中』って張り紙があったんですけど、あれなんですか?」
「ああ、あれですか。特に意味はないですよ(ドヤァ」
「ないのかよ!w」


そう言って、私の隣に座るターンドッグさん。


「どっこいしょー…あー、俺は明日もコインランドリーかなー…男は俺一人だしなー」
「洗濯機、朝七時くらいだと誰も使ってないみたいなので、そのときがきっとチャンスですよ」
「マジで!?明日使ってみますね」


洗濯機の話題が終わって暇になったのか、ターンドッグさんはさっきまで私が読んでいた本を読み出した。


「シルルスコープ…幽霊…あ、そうだ」


ふと思いついたことがあったので、ノートを引っ張り出し、文章を綴りだす。
急に何かを書き出した私を見て、ターンドッグさんが言葉を投げかける。


「どうしました?」
「小説のネタです。書かないと忘れるので」


そうですか、と読書に集中するターンドッグさん。
ちらりと見た時計は、午後六時を指していた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

夕暮れ時【かなりあ荘】

オチなし山なし意味なし、何も進まない感じ。
ゆるりーです。

ランクアップしたので書いてみました!
ちなみに、洗濯機の話を書きたかっただけです←

許可をくださったターンドッグさん、ありがとうございました!
あとシルルスコープGETおめでとうございます!

「高音をどこまで出せるか~」については、「高音厨音域テスト」という曲のことです。家の人とご近所の方の迷惑にならないように気をつけながら歌ってみてくださいw
ちなみに私はhihiGまででした。

かなりあ荘と清香ちゃんシリーズ、に…これは入るのかな?w

9/9 追記
「dogとどっぐとヴォカロ町!~改造専門店 ネルネル・ネルネ出張版②~」
の内容に合うように、少し書き直しました。

閲覧数:186

投稿日:2013/09/09 18:17:35

文字数:2,878文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • しるる

    しるる

    その他

    あー
    というか、アイテム忘れてたー
    催促してくださいよーww

    【ゆるりーは、忘れられた石版(10)を手に入れた】
    古代の何かの石版……なんとなく日本語で【肉じゃがの作り方】と書いてある気がする

    2013/09/10 21:35:17

    • ゆるりー

      ゆるりー

      あ、私も忘れてましたw

      肉じゃがの作り方!?
      謎の石版ですねw

      2013/09/10 22:01:55

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    あー、確かにずっと勉強してると指痛いよねー……
    私も提出日前日の夜に課題のワークとか泣く泣くまとめてやって、指が痛くなるからその気持ち分かるよ……(ぉぃ受験生
    あと私は扇風機の設定は「弱」にするかな?
    節約なのと、「強」にしてずっと当たってるとそのうち寒くなるから……(苦笑)

    何故張り紙を「失踪中」にしたし
    どうせなら「開かずの間」とか書いたほうが面白い←※この人は患っています。※

    そして本の内容がもの凄く気になる私がいる←
    そ、そそその本リアルにあるなら題名教えて! メチャクチャ読んでみたい!

    2013/09/08 15:19:35

    • ゆるりー

      ゆるりー

      同感だぜ…(おい受験生
      私も寒くなるのさ…

      いや、なんとなく←
      その手があったか…!

      あ、えーと…ごめん、リアルにはない…。
      私が考えて書いたやつ…実は私も読みたい。。。

      2013/09/09 00:18:55

  • しるる

    しるる

    その他

    ゆるりーさんがかわぁいぃいーw
    これをみると同い年くらいに思ってるのがなくなるww

    みててほんわかすると思うw
    こんな妹もほしいと思うしるるであった←そろそろ危険

    2013/09/07 18:48:12

    • ゆるりー

      ゆるりー

      かわいい要素がいったいどこにw
      ただのどんくさい学生ですねw

      危険w

      2013/09/07 19:46:58

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    おお、いい感じwww
    想定してたより俺らしさが出てて思わず
    「あれ? 俺執筆協力してたっけ?」とか思ったwwww
    この似てる感じいいですよー、ありがとですー!
    特にツッコミ上手なところと(自分で言うか?
    扇風機「強」なところ!(そこか?
    今これ書いてる最中も扇風機「強」ですww
    ……あとつけっぱなところ(駄目じゃねえか!?

    因みに私は男としては声が高いほうです。
    でも高音厨はhihiAが限界でした←
    女声売りにしてカラオケ行ってる俺ざまあwwww

    (……言えない……まだネルちゃんに作ってもらうシーン【改造専門店シリーズ②】を書いていないなんて……)

    じゃあ『かなりあ荘と清花ちゃんシリーズ(番外編)』でww

    2013/09/07 15:38:25

    • ゆるりー

      ゆるりー

      似てましたか?ありがとうございます!
      これまでの会話での雰囲気から、いろいろ考えて書きました。
      なんだか毎回ツッコミをいただいている気がしたので、入れてみましたw
      あと、扇風機については、以前「暑さに弱い」とテキストにあった気がしたので。

      逆に、私は女としては声が低いほうですね。
      地声も少し低めなので、よく「機嫌悪いの?」と聞かれますw
      ポーカーフェイスを女子なのにオク下で歌うが、高音厨は女子なのにhihihiすらいかないという微妙な音域←
      ところで、低音厨音域テストというのもあるのですが、最初の音から出ませんでした。

      言えない…実はシルルスコープをネルちゃんに作ってもらったという部分も書いたのに、そこのデータが消えたなんて…

      番外編w

      2013/09/07 17:04:23

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