BATTLELOID「STAGE7 混沌の舞台」-(2)

投稿日:2014/07/13 22:29:27 | 文字数:4,084文字 | 閲覧数:125 | カテゴリ:小説 | 全3バージョン

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※詳細はBATTLELOID「BEFORE GAME」を参照してください


七人目の参戦者、そしてついにデフォ子たちも乱入!

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 ドカン、と表しても小さすぎるほどの爆音があたり一帯に鳴り渡る。
「うわああ!!」
「きゃああ!!」
 とてつもない爆風が六人を襲い、爆音の中に悲鳴が溶ける。
 ミクは体を持っていかれまいと、必死で地面を踏みしめ、前かがみになる。
 だがさらに、大きな地響きが襲いかかる。それは、以前起こった地響きと全く同じ感覚だった。
 足を取られてミクは転ぶ。だが右手で地面に生える草を掴んで何とか風に流されないようにしつつ、左手でマイクが飛ばされぬようしっかり握っていた。
 言葉通り、藁にもすがる思いだった。
 十数秒くらいだろうか。爆風、地響きともにおさまった。
「…なんて…」
 ミクは呟いた。それほどに状況は悲惨だった。
 爆発が起こったと思われる場所は、地面が深々とえぐられクーデターのような大きな穴が開いている。
 その周りも、緑だったはずなのに、一瞬で茶色になってしまっていた。
 そして…見渡す限り…みんながいない。双子を始め、戦っていたグミたち三人も。
 一体どこへ、とミクが思考を始めた瞬間、フォンのバイブを感じた。
 …まさかみんな、やられたのか。
「…ゴホ…ごほっ…」
 不意に誰かがせきをしているのが聞こえた。その方を見ると、誰かが今起き上がろうとしていた。
「…何よ、今のは…」
 グミだった。彼女は無事だったらしい。
 よく見るとグミのさらに後方にリリィが倒れているのが見えた。右に視線をそらすと、崖付近にピコが倒れている。近くにマイクが一つだけ転がっていた。
 後ろを見ると双子がそろって倒れている。
 そして視線をグミに戻すと、彼女は右…ミクから見て左を睨んでいた。グミの見る方に視線を向けると…そこには新たな参戦者がいた。
 お互いの拮抗していた戦いに横やりを入れ、この戦況を一気に狂わせた張本人。
「…私も、混ぜてもらおうかしら?」
 ルカが、静かに、冷たい笑みを浮かべて、こちらに歩いてきた。


「ルカさん…」
 グミが声を漏らした。
 ルカは二人と適当な距離に立つと止まった。
 ミク、グミ、ルカを頂点とした三角形が生まれる。一触即発の、ピリピリと表現しても物足りないくらいの空気が三角形の中に漂い始める。
 ミクは腹をくくった。ここはやるしかない、と。
 おそらくグミも同じ心境だったのだろう。目を閉じて深呼吸をし、再び目を開くと括目してミクとルカの動向を窺っていた。
 ルカは相変わらずの隙の見えない体勢で待ち構えている。
 そして誰からともなく静寂を破ろうと、三人が息を吸った時だった…。
「『恋は戦争・カバー』!!」
 空から光線が降ってきた。ただそれは誰かを狙って放たれたものではないらしく、三人の形成する三角形の中心に着弾した。
 途端土煙が上がる。
「…!」
 ミクは思わず目をふさいだ。
 ルカは落ち着きはらって誰がどこから来てもいいように身構えた。
「いったい…?」
 グミは光線が降ってきた上空を見上げた…。そこには。
「はい、そこまで!これ以上ここでの戦闘は禁止するよ!」
 マイクを持ったリツと、ルコ、それにデフォ子が、ヘリコプターからこちらを見下ろしていた。


 煙が晴れてきた。
 再び目を開いたミクは、グミ同様上を見上げた。
 ヘリコプターはだんだん高度を下げ、ある程度の高さまで降りると、縄梯子が垂れてきて、そこからデフォ子たちが降りてくる。しかしミクはヘリコプターではなく、その空に…目をやっていた。
 空は裂け、青空の間に暗黒の何かが見えていた。まるで…ブラックホールのように。
 それを背景にヘリコプターが降りてくるので、ミクは彼らが異空間から現れたのかと思った。
「ふう…」
 地上に降り立ったデフォ子、ルコ、リツは、ミク、ルカ、グミにそれぞれ向いた。
 ミクは視線を空からデフォ子に戻す。だが彼らがなぜ現れたのか、理解ができなかった。
「戦闘を禁止…ですって?」
 ルカが先ほどの体勢のまま尋ねる。目は殺気がうかがえる。
 だがルコはそれに臆することなく言った。
「ああ、そうだ」
「…どうしてよ?」
 今度はグミが尋ねる。
「…上」
 リツが上を指差しつつ、ボソッと言った。
 グミとルカは上を見上げる。そこにはさっきミクが驚愕した空の裂け目がある。
「きゃっ!」
 グミは声をあげる。ルカは顔をしかめた。
「…お前たちがあまりに激しい戦いを繰り広げるからな。空間の壁が壊れて、あんな穴ができちまったんだよ。…あと、おまえらもさっき大きな地響きを感じたろう?あれも、それが原因だ。この空間は、外部との接触が絶たれているからな、それを区切ってる壁が壊れるとなると、相当の衝撃がこっちにくる」
 デフォ子が説明をするが、いろいろとミクは理解できなかった。ただ、地響きとあの空は、私たちが戦いすぎたからできた、ということが分かった。
 ということは。ミクは類推する。あの時のあの地響きも、どこか(おそらくグミの)戦いが激しさを増したためにおきたんじゃないか…?
 なるほど、一つ疑問は消えた。
 だが、新たな疑問が出てくる。
「あなたたちは…このゲームと何のかかわりがあるの?」
 ミクは疑問を直接ぶつけた。
 彼らはボーカロイドとはまた別物。なのになぜ、彼らは乱入してきた、いや、乱入してこれたのか?
「…答えは簡単だよ。私たちは…あの方と精通してるんだから」
「!!!」
 ミクは息をのんだ。グミは信じられないといった様子。ルカは目を細めた。
 三人それぞれの反応を見たところで、デフォ子は言った。
「…とりあえず、今本部と連絡をつなぐ」
 デフォ子がパチン、と指を鳴らすと、そこに透明なスクリーンが現れた。
「あーあー、聞こえてるかな?」
 声とともにスクリーンに表れたのは、健音テイだ。
「ああ、頼む…って、おまえさっきまでどこにいたんだよ!」
 ルコが声を上げたが、テイは澄ましたまま、
「ちょっと釘を刺してきたの」
 と訳の分からない発言をした。
「…まあいい。とりあえず、こいつらに詳しい状況を説明してやってくれ」
 デフォ子がやれやれといった調子でいう。
 スクリーンからテイが消え、代わりにテト…重音テトが現れた。
「はーい。えっと、ごめんね三人共、水を差しちゃって、さ。でも本部上の都合、勘弁してね」
 三人は黙って話を聞く。テトが続けた。
「とりあえず、しばらくE区画を戦闘禁止ゾーンにして、エリアの修復と、あと全体の空間のさらなる強化作業を行なうから、次回以降はたぶん邪魔は入らないよ、安心してね」
「…あの方からの指示は?」
 ここでリツが尋ねた。
「…いや、間違いなく今指示は来ないだろ」
「あ…そうだったね」
 何のことを言っているのか、ミクは全く分からなかった。
「とにかく、そういう事だから。じゃあ、移動よろしくねー」
 お気楽な声とともに通信が切れ、スクリーンも消えた。


 デフォ子とルコは、ミクたちが話を聞いているうちに、吹き飛ばされて倒れた四人、リン、レン、リリィ、ピコをこちらに引きずってきた。
 その様子を見て、ミクはあ、と思うとフォンを取り出した。彼らは誰一人として目を覚ましていない。まさか…?

『K‐1 歌手音ピコ
 C‐3 初音ミク C‐5 巡音ルカ I‐2 GUMI により脱落』

 フォンが受信していたのはそれだけだった。
 ミクは胸をなでおろす。よかった…。
「しかし、あれだけ吹き飛ばされといて、脱落者が一人ってのも、ある意味奇跡だな」
 デフォ子が言った。そうして、リン、レンの身体をミクに放った。
「え…?」
「今までのを見る限り、そいつらはお前の連れだろ?持ってけ」
 それだけ言うと、デフォ子はミクに背中を向けた。
「あとはこいつか…」
 デフォ子がリリィを抱えた。
「いいんじゃね、適当なところ連れてっといて目が覚めるまで放置しとけば」
 この適当な発言はルコだ。それが聞き捨てならなかったのか、
「ちょ、それは…」
 とグミが口を挟んできた。
「…なんだ?」
 と、デフォ子が聞き返すが、グミは口ごもった。
「いやその…えっと…」
「はっきりしないな。連れてくなら勝手に連れていけ」
 デフォ子はリリィをグミに放った。
「じゃあ、連れて行くのはこの子だけだね?…あれ、マイクは?」
 リツがピコを担ぎながら言った。
「…ああ、どうやらマイクが海に落ちたっぽいんだ。脱落原因はそれだなきっと。致命傷になるような外傷はないし」
「ふーん…」
 リツは特に興味を持って聞いたわけではないらしく、ルコの言葉を聞き流しつつおーい、とヘリコプターに向かって手を振った。
 いったん高度を上げ上空で待機していたヘリコプターが再び降りてきた。操縦席にも人―桃音モモがいた。
「さて、私たちはこれで帰る。ちゃんと言ったことは守れよ」
 そのデフォ子の言葉を最後に、ヘリコプターは彼らを乗せると、そそくさと去っていった。


 気が抜けたように、ミクは座り込んだ。思えばさっきからずっと意外な展開が起こりすぎてドキドキだった。ドキドキ、と表すには軽率だはあるか、それほどにミクはつかれた表情をしていた。
「…ふー…あれ?」
 ミクが一息ついてあたりを見ると…いつの間にかルカがいなくなっていた。
 このわずかな時間でどこかに行ってしまったのか、あたりを見ても去っていくルカらしき人影は見当たらなかった。
「…ミク」
 ふと名前を呼ばれてそちらを向くと、そこにはグミがリリィを背負って立っていた。
「次は…負けないから」
 そう言い残すとグミはくるりと背を向けて歩き出した。その足は少しおぼつかない、千鳥足にちかい状態だった。彼女もかなり疲弊していたようだ。
 残されたミク。目の前にはリンとレンが横たわっている。
 …ちょっと休憩してからここを離れよう。
 草原に寝転んだミクの視線の先には、すっかり元に戻った雲一つない青空があった。

しがないボカロ小説書き。生粋のミク廃。
書くものはなぜかバトルものばかり。
みんなを楽しませることができればなあと、思う。

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