此処は色の無い世界。決して比喩では無かった。
荒廃した大地に根深く突き刺さる鉄柱。がんじがらめに巻かれた有刺鉄線。
粗末な服に粗末な食べ物。色の無い世界。
その日僕が見たのはこんな場所にはおおよそ不釣合いな女の子だった。
空より少し淡い色をしたワンピースに揃いの帽子。
帽子にかけてあるリボンは久しく見ていないような鮮やかな桃色。
ふわりと風に飛ばされそうになる帽子を手で押さえながら可憐に笑う女の子だった。
まるでセピアの中に浮かぶ1つの鮮やかな影。
その時の事を僕は死ぬまで忘れない。
一歩一歩此方に近付いてくる少女。
僕の視線に気付くと彼女は笑った。
僕と似た、母と似た、輝く金の髪。
日の光に照らされたそれが今の僕には眩しすぎて少し目を細めた。
微笑みはまるで母のように穏やかで、優しくて、
溢れ出す涙を止める事が出来なかった。
僕の異変に気付き更に有刺鉄線に近付こうとする彼女を大きな手が遮る。
彼女が不安げに見上げる先には、国家軍の将校らしき男がいた。
その瞬間に悟った。生きている世界の違う子なのだと。
嗚呼、僕はなんて愚かな。
乱暴に目を擦り、有刺鉄線に背を向け僕は走り出した。
振り返りはしなかった。きっともう二度と会う事はないから。
その日の夜はなかなか寝付く事が出来なかった。
けれど、それは満足にもらえない食料のせいでも、固いコンクリートのベッドのせいでもなくて。
少女の笑う顔が浮かんでは消え、消えてはまた浮かんだ。
母のように暖かな笑みが、優しい笑みが、僕の心を捕えて離してくれなかった。
もう一度、会いたい―。
生きる希望などとうに捨てていたはずだった。
それは行き過ぎた願望だと自分でも知っていた。
その日見た夢の中で、僕と少女は楽しそうに話していた。
目が覚めてから気付いた頬に残る軌跡は、より一層僕の虚無を増大させた。
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