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かくかくしかじかこんなことがあって、と昨日の流れをざっと説明する。聞き終えたリンはあー、と気の抜けた相槌をして腕を組んだ。
「それで逃げちゃったと」
「情けないわ……」
しゅんと肩を落とす。昨日の朝の決意はなんだったのだと自分でも思うけれど、でもやっぱり怖いものは怖くて。仕方ないのだと自分に甘い私自身が敵である。
「それにしても、ミク先輩がカイト先輩をねぇ……」
なんだか感慨深そうにリンが言う。
「リン、ミクさんを知ってるの?」
「ああ、合唱の先輩なんです。歌は上手いですし普段はいい人ですよ。まあ、恋する乙女は怖いですからね」
むぅ、と唇を尖らせるリン。その姿は同性の私から見ても可愛らしかった。
「私もリンくらい可愛かったら良かったのかしら」
ミクという少女も、容姿は申し分なく可愛らしかったことだし、とふと漏れた一言に、リンが予想以上に食いついてきた。
「何言ってるんですか!メイコ先輩可愛いですよ!すっごく!!!」
両手を握り締めて力説するリン。こうも真正面から褒められると照れる。特に、私は背も高いし勝気な性格も相まって「可愛い」とは評されない人生を送ってきたので、可愛いと言われるとすこし混乱する。
「そうやって赤くなっちゃうところもすごく可愛いです!ぷりちーです!!」
「リ、リン、とりあえず落ち着いて……」
ふしゅーふしゅーと鼻息の荒いリンを宥める。すっかり話題が逸れてしまった。
「でもやっぱり、チョコは渡さないと勿体無いと思います。てか寧ろ私がメイコ先輩手作りチョコ食べたいです」
「でも……」
やっぱり怖い。緑髪の彼女から言われたことに加え、私とカイトは幼馴染みだ。毎年戯れのようなチョコはあげてきたが、今年は気合を入れたので見るからに本命と分かる出来になっている。なんてったってハート型のチョコだ。渡してしまったら、私とカイトの関係は間違いなく変わってしまう。
「…………」
うじうじ悩むのは性に合わない。悩んでいる自分自身に腹が立つ。それなのに恐ろしさで身が竦むのだからどうしようもない。
「メイコ先輩のそういうとこ、すごく可愛いと思います」
驚いて顔を上げるとリンは真顔だった。
「絶対カイト先輩もそう思ってます。私はそう思います。私はメイコ先輩の味方ですから!」
がしり、と私の手を掴む。
「もし振られたらまたこうやってお話しましょう!?その時はレンでも使って復讐してやりましょう」
「…………リン」
「だから、ね?チョコ、渡しましょう?」
にこりと笑う。それにつられたのか、私はこくりと頷いていた。
「頑張りましょうね、メイコ先輩!」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

君の音楽 #6

こんばんはご無沙汰しておりますうたかたです。

前回の投稿したのいつだったっけと思って見てみたら昨年の9月でした。ざっと5ヶ月ほど経ってます。バレンタイン過ぎちゃってるし。
前回の切り方見て頭抱えました。これからどう続けろと……何が書きたかったの去年の私。
ミクちゃんひどすぎるのでフォローしますと彼女は恋する気持ちが暴走してあんなこと言っちゃっただけです(でもそこまで酷くもない)。けして作者のミク嫌いが発動したわけではありませんけして。断じてありません。
一応はハピエンのつもりですのでお付き合いくださいませ。なる早で完結させます……

鏡音兄妹のスピンオフ書きたい(黙れ)。

閲覧数:220

投稿日:2014/02/28 02:44:11

文字数:1,136文字

カテゴリ:小説

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