―――――素晴らしい。血沸き肉躍るようだ。

 戦いこそは俺を生かす最大の糧。このあふれる力を試せる本気の戦いこそ、俺が求めていたものだ。

 ルカたちに―――――平和を好むあいつらに嫌われたくないなんて、俺らしくない感情を抱いたが故に、ずっと封じてきたが、やはり俺は戦いの中に身を置かなきゃな。

 ……それにしても、こんなに熱くなれる戦いはいつ以来だろう?――――やはりあの時以来だ。クロスケと初めて会った時以来。

 クロスケはいつだって俺に全力で挑んできた。俺に全力で迫ろうとしてきた。

 長々生きてきて300年……クロスケほど刺激的な戦いができるやつはやはりいなかったな。

 がくぽも強かった。暴走したカイトも悪くなかった。だがやはり俺の心を弾けさせてくれるのは、このバカな一番弟子だけだ。



 ……まったく、惜しいもんだよ。



 あんな馬鹿なことした馬鹿弟子でさえなきゃ、もっとこの戦いを楽しんでいられたのにな。



 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>



 『がはあっ!!』


 うめき声をあげて、クロスケが地面に叩き付けられる。

 それを血走った眼で見降ろすロシアン。もはや齢300年の猫又などどこにもいない。そこにいるのは、ただただひたすらに、戦いに浸って悦びを覚える一匹の化け猫だった。


 『……どうした!?これでおしまいか!!?』

 『ぐ………!!』


 苦しそうに立ち上がろうとするが、もはや足が利かなくなっていた。

 だがそれでも必死で立ち上がり、ロシアンを睨みつける。


 『ま……負けてたまるかよ……!!こんな……こんな簡単に、負けてたまるかよ!!!『紅蓮弾』っ!!』


 突如、ロシアンを囲むように紅い焔の球が現れた。―――――全方位360度に、数百個の火焔弾!


 『くらいなああああああああっ!!!』


 クロスケの叫び声とともに―――――それらが一斉にロシアンに襲い掛かる。

 ロシアンは微動だにせずににやりと嗤って―――――



 《―――――――――――ドンッッ!!!!》



 ―――――何も起きぬ間に直撃。爆発が起き、襖や畳が吹き飛んでいく。


 「ロシアンちゃん!?」

 「今の……よけられたはずじゃ!?」


 ルカたちが動揺する中、爆煙が晴れていく。

 そこには――――――――――――


 『……………!!』


 ルカたちの心配は杞憂だった。―――――無傷。煤こそつけど、全くの無傷のロシアンが変わらず佇んでいた。


 『……いい攻撃だ。だが、遠隔攻撃に頼るぐらいなら、直接叩き付けたほうが威力は高いぜ。こんな風にな……!!』


 そういって前足を構えると、周りを碧命焔が揺らいで―――――


 『焔槍!!』


 焔の槍を握りしめた右前脚が、クロスケの脇腹に直撃。そして爆発と同時にクロスケが天井にめり込む。


 『……つ……強い……!!』


 リンとレンの怯えにも似た声が、ロシアンの強さを一層際立たせる。

 天井の枠組みが崩れて地面に落ちたクロスケに、一歩、歩み寄るロシアン。



 『……そんなもんかよ?お前の本気は。』

 『……あ?』



 『お前はちょっと俺に小突かれた程度でぶっ飛んじまうような、そんな紙根性でこんな人間に迷惑かける仕事してやがったのか?元来猫又とは、人に深く干渉することすら許されぬ生き物だ。俺みたいに人間と馴染んじまう奴ですら、本来なら消されてもおかしくねえんだ。……その猫又でありながら!!お前は人間を迫害する道を選んだ!!なぜだ!?何がお前をそんな外道に変えた!?……お前は唯己が欲を満たすためだけにこんな道に走るやつじゃねえだろう?どんな理由であろうとおまえは許されねえ……だが!!その想いを!!己が力で示すこともできねえのか!!?……見せてみろよ。お前の想いの丈!!そしてその覚悟を見せてみろおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオッッッ!!!!!』



 ロシアンの恫喝に呼応するかのように、クロスケの焔が天井近くまで吹き上がる。


 『……だったら見せてやるさ……『あの子』のために、どれだけの覚悟をもって生きてきたかをなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!ギィオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』


 咆哮とともに、紅蓮劫火の勢いが増していく。天井を、壁を、床を削るように伸びていく。

 それを見て満足そうに笑ったロシアンも、碧命焔を吹きあげていく。ロシアンの身を包んで、垂直に吹き上がる碧命焔は、まるで光の柱だ。


 「すさまじいエネルギー量……!!」

 「こいつは危険だな……!!皆さがれ!卑怯プログラム発動『絶対バリア』!!」


 メイコ、カイトの合図で、蒼いバリアの内側に下がって弐頭の化け猫の様子を見守る。




 『焼き尽くしてやる!!何もかもすべて!!!!喰らえ!!『紅蓮突撃』ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!』

 『いいだろう!!貴様の本気、全力で受け止めてやる!!行くぞ!!『焔疾走』っっっ!!!!!!』




 ドン!!と強く地面をけった弐頭が―――――部屋の中央で激突した!!


 『ギャウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!』

 『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』


 弐頭の咆哮と、そして鬩ぎ合う弐つの焔が荒れ狂い、部屋を破壊していく。

 カイトの絶対バリアさえも揺らぐ莫大なエネルギー。

 ―――――メイコの豪腕で揺らされた地盤と、ここまでの戦いで破壊されてきた部屋が、耐えられるはずもなかった。


 「!!ルカ姉、見て!!天井が…………!!」


 ミクの声に反応して天井を見上げると――――――――――





 焔が、天井をぶち抜いていた。





 その頃。


 「おらぁおめーらこっちだ!!天空塔を全方向から包囲しろ!!今日が黒猫組の命日だ!!」


 捜査一課を総動員した松田が、天空塔の前でがなり立てていた。

次々と刑事たちが配置につく中、松田の妄想は膨らむばかりだ。


 「ぐふふふふふ……ここで黒猫組を一網打尽にすれば、俺の株はさらに上がること間違いなしだぜ!!ハハハハハハハハ!!」


 馬鹿笑いを響かせる松田。

 ……………と、その時だった。



 《……………ズズズズズズズズズズズ……………!!》



 突然の地鳴り、そして揺れ。

 いきなりのことに陣形は総崩れ、松田も腰を抜かしている。


 「ななななななななななな……なんだぁ!!?」

 「警視!!足元が……!!」

 「ああ!?……ぬ!!?」


 松田の足元に、大きな亀裂が走っていた。その亀裂は徐々に大きくなり、そこから紅と碧の光が迸り出していた。


 「警視!!!逃げてください!!!」

 「言われなくてもわかってらあああああああああああ!!!!!」


 叫びながらダッシュで逃げる松田。

 ―――――その直後。




 『ギィオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!』




 二つの強大な咆哮とともに、地面が弾け飛び、紅と碧の焔の柱が吹き上がった!!

 強大な焔が天を貫くように伸びてゆく。

 その焔の中―――――突如、灰色の影が天空へと打ち上げられた。

 それを追うように、漆黒の影が飛び上がる。―――――ロシアンとクロスケだ。

 地下から上がる焔をぎりぎりでかわしながら、ルカたちも地上に飛び出してきた。


 「今……何が起きたの!?ロシアンちゃんが先に飛んだけど、かわした……の!?」

 「……違う!!違うわミク……ロシアンちゃんが……跳ね飛ばされたのよ、クロスケに!!」


 紅蓮劫火と碧命焔。その力はほぼ互角か、若干ロシアンの碧命焔が勝る程度だった。だがそのハンデを―――――クロスケはインパクトの瞬間、ロシアンより多く一歩踏み込んで全力を叩きつけることで、ひっくり返したのだ。


 空中で体勢を直したロシアンが、クロスケに向かって嗤う。


 『やりゃあできんじゃねーか……!!』

 『ったりめーだ……!!俺はクロスケ……『紅蓮の猫又』のクロスケだ!!』


 再びクロスケの体から紅蓮劫火が噴き出す。その噴き出す焔は、激突でかちあげられた焔の柱を打ち破り、クロスケの周りを渦巻いてゆく。


 『数多の人間や……かつての兄貴を叩き潰してでも……守りたいものが俺にはあるんだ!!!あんたなんかに……負けらんねぇんだあああああああああああああっ!!!!!!』


 渦巻く焔がクロスケの体を包み込み、そして一つの形を形成していく。

 そして突然、紅い焔の腕がロシアンをつかんで―――――――――――――



 『これが俺の本気だ!!紅蓮劫火奥義!!『紅蓮竜』―――――――――――――――――――――――――っっ!!!!!!!』



 ―――――真紅のドラゴンが、天空へと飛び上がった!!


 「ロシアンちゃん!!」


 ルカの悲痛な声も、火焔のドラゴンが飛び回る轟音に掻き消される。


 《このまま地面に叩き付けてくれるわああああああああああああああっっ!!!》


 クロスケの叫びがこだまして、ロシアンを握る腕が地面に向かって振り下ろされ―――――――――――――




 『いいもん見せてもらったぜ、クロスケ!!』




 突然、ドラゴンの腕が爆発した。ロシアンが碧命焔を爆裂させたのだ。


 《ギャン!!?》


 クロスケの悲鳴と重なって、蒼い焔の塊が高速で飛び回る音が響く。


 『お前の本気はよく伝わってきた……!!ならば俺も本気で相手をしよう!!』


 クロスケの正面で、碧い焔が止まる。

 焔を噴き出し続けるロシアンは―――――今までにないくらいの、笑みを浮かべていた。




 『刻め!!クロスケ!!俺はロシアン!!猫又ロシアンだ!!』





 ―――――――――――――――焔龍!!!!―――――――――――――――





 突如、ロシアンから柱のような碧命焔が噴き出し、火焔のドラゴンと化したクロスケを握りしめた。


 ―――――否、それは柱などではなかった。




 ―――――大龍。碧い輝きを放つ、凄まじく巨大な、大龍……………!!!




 『ギィウウウウウウウウウウゥゥゥゥウウゥウゥゥウウゥゥゥゥ!!!!!』


 鋭い鳴き声を上げながら天高く舞い上がってゆく。

 その姿はまさに―――――神獣……………!!



 《これが――――――――――》



 クロスケが己の小ささを嘆き。



 (これが――――――――――)



 ルカたちがその大きさに畏れを抱く。



 ――――――――――――――その彼の名―――――――――――――――





 (これが――――――――――猫又……ロシアン……!!!!)





 『ギィィィウウゥウゥウウウウウウウウゥウウゥウゥウウゥウウウゥウウッッ!!!!』


 天地を揺らすような鳴き声を上げながら、隕石のように地面へと一直線に急降下するロシアン。

 そして―――――激突。




 《―――――――――――――ッドンッッ!!!!!》




 ―――――――――――大爆発!!碧い爆炎が、辺り一帯を呑み込んでいく。


 『わあああああああああああああああああああああああああ!!!!』


 強烈なエネルギーの波動がルカたちを、松田とその他の刑事たちを、そして辺りの建物を襲う。

 ありとあらゆるものを破壊して―――――エネルギーの波は収まった。

 静かに地を離れ、天空を舞う碧い大龍。そして螺旋を描くように、ロシアンの元へ舞い戻り、吸収された。

 特に疲れた様子もないロシアンは、伸びているクロスケに静かに歩み寄って―――――



 「……………!」



 ―――――その喉に、焔の爪を突き付けた。


 『さて……答えてもらうぜ、クロスケ。なんで暴力団なんかやってやがった……?』


 ほんの少し寂しげな、ロシアンの問いかけ。

 少しの間うつろな目でロシアンを見上げていたが、観念したように、クロスケがポツリつぶやいた。





 『……………娘の………ためだ………。』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ボーカロイド達の慰安旅行(15)~ロシアンとクロスケ‐肆【決着の時】~

決・着!!
こんにちはTurndogです。

この回はもうひたすらロシアンの強さを誇示するために作ったようなもんですwww
そして根っこは案外いつもと同じなロシアン。結局どっちが本性なんだお前は。

ただ頭の中で構成考えてた時はめちゃくちゃかっこよかったのに、いざ文章にすると迫力ねーなぁ……。前回の乱闘シーンのほうがよかったなぁ……。
アニメがどんだけすごいか、小説家の腕前がどんだけすごいかがよくわかる結果です。

子……この黒猫、子持ちだ……と……!?
俺なんか彼女いないのに!←

閲覧数:315

投稿日:2013/04/30 17:17:10

文字数:5,202文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

  • 関連動画0

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    ええ!? え? えええ!?
    え!!!??
    むっ娘!?
    娘って!!??

    2013/05/03 18:49:15

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    きっと、インフレ起こしてて、すごさがにじんじゃったのでは?

    アニメのすごさはわかりますねw
    服装やらの変化を人目でいけるのも、映像のいいところw

    子持ちは子持ちで大変なのですw
    あ……私は違いますよw←

    2013/05/02 19:54:38

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      かもしんないwww

      アニメや漫画で想像すると、小説にしたときに表現に困るんですよねー・・・。
      難しいw

      あれ?違ったんだ?
      ……冗談ですよwじょ?だん!やめてやめて触手はやめてぎゃあああああ(((

      2013/05/03 21:00:03

オススメ作品

クリップボードにコピーしました