れおんさんのいる「ハミングス」1階のカフェ、「カフェ・ドナ」で。

ミクさんのはっきりとした言葉を聞いた、オサカモトさんは、黙って彼女の顔を見つめていた。
しばらく、2人は静かに見つめ合っている。

やがて、オサカモトさんは口元に少し、笑みを浮かべて、ミクさんとれおんさんに言った。
「わかりました。あなたがそう言われるのなら、この仕事は止めにしましょう」

そういうと、手元の企画書を静かにたたんで、テーブルの隅に寄せる。

「パートナーの方から、お断りされることは、私たちにはあんまりないんですけれど」
そう続けると、意味ありげに笑ってうなずいた。
「でも、ま、あの方も、お怒りなさることはないと思いますし。なぜなら、“はっちゅーね”はとても優れた商材ですので」

れおんさんは、また首をかしげた。
よっぽど、「あの方って、一体誰ですか」と聞こうと思ったが、けっきょく黙ったままだった。


●「家に帰る」って…!

いっぽう、りりィさんのお店「上海屋」では。

店に寄ったレンくんの話を聞いて、りりィさんがいろいろと考えを巡らせていた。
その時。
「あ!」
スマホを見ていた、レンくんが小さく声を上げた。
「あいつから連絡だ。“いまから、家に帰るよ”って」

「リンちゃんから?」
りりィさんの問いに、彼は大きく頷く。
「ええ。それだけですけど。」
レンくんは、スマホで返信しながら、言った。
「ボク、とりあえず、帰ります。ホントにあいつ、帰ってくれればいいけど」

「ええ、それがいいわ。無事に戻ってくれれば良いわね」
りりィさんは、うなずいて言った。


●異界につながっていそう!

パタパタと、急ぎ足で店を出ていくレンくんと入れ替わるように、1人のお客さんが入ってきた。

「こんにちは。あれ、へええ、とても素敵なお店ですね」
それは、ニコビレの紙魚子さんだった。
「あら、いらっしゃいませ。よく来てくださいました」
りりィさんは、彼女を出迎える。

紙魚子さんはにっこり笑って、店に置いてあるアートや、人形や、ちょっと古そうな骨董品などを眺めている。
「こういうお店、私、好きです。なんだかホントに、“星を売る店”ってカンジですね」
紙魚子さんに言われて、りりィさんもうれしそうに微笑んだ。
「どうも、有難うございます」

紙魚子さんは、楽しそうな声で続ける。
「こういうお店に来ると、いつもいろんな“妄想”をしちゃうなぁ。ここがどこか不思議でステキな、“異界”とつながっている、みたいな」

「まぁ。そんな不思議なところへは、残念ながら続いてませんよ」
笑って、りりィさんは答える。が、ふと、真面目な表情になった。
彼女は、紙魚子さんに尋ねる。
「そういえば、紙魚子さんは、不思議な現象とか、ミステリアスな事柄について、お詳しいんですよね」

お店の棚にある、アジアのトラの張子の人形を手にとって見ていた紙魚子さんは、振り向いて言った。
「ええ。いちおう、そういう方面?って変な言い方ですけど。詳しいつもりですヨ」

それを聞いて、りりィさんは言った。
「ちょっと、いま気になることがあるの。ある会社のことで。それは、例の“月光企画”のことです」 ~(・・?))

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(244) “はっちゅーね”と、不思議な世界

リンちゃん、無事に帰ってくるかな? オカルトに詳しい、紙魚子さんもきました。

閲覧数:85

投稿日:2014/07/27 11:36:18

文字数:1,340文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は♪ 本編の方も1つコメントしますね

    紙魚子さんへの”オカルトが怪しまれる会社への密偵”かな!? 郷に入っては郷に従う、怪しい会社への偵察は、怪しい事に詳しい人の方が良いですよね!

    たまーに、ミイラ取りがミイラになる、ケースもないではないですが…

    ただ、今回はリンちゃんの事も絡んでいて、そう、話は軽いものではないですからね。

    頑張って! 紙魚子さん!

    ではでは~♪

    2015/07/11 17:12:53

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、メッセージを有難うございます!

      >たまーに、ミイラ取りがミイラになる、ケースもないではないですが

      ファンタジーや神話とかでは、そういう展開もありますよね。

      古事記とかでも、高天原から地上に降りて、なかなか帰らないので、
      天上の神が探ってみると、敵方のしもべになってたり。

      まあ、考えてみれば、デビルマンの設定もそうですけどね(笑)


      >怪しい会社への偵察

      そのアイデアも面白いですね!
      ミステリーやサスペンスの世界では、ダブルスパイとか、そういった設定もありますし。

      敵か、味方か、という展開。書いてる方もはまりそうです。
      そういうのもけっこうスリリングかもしれません。

      また感想を聞かせてください!
      では、また。

      2015/07/20 02:26:10

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