それから数日後、MEIKOの部屋。そこには部屋の主であるMEIKOの他、ミクとルカが居た。3人の中で、ミクだけが終始俯き加減であり、それをルカが心配そうに眺めている。
 「…それで、ミク、話って何?」
 MEIKOが尋ねる。MEIKOは雰囲気を察してか、雰囲気を明るくするように振舞っていた。
 「あ、あのね、2人に相談があるの」
 「何かしら?」
 「ええっと、その…」
 「ミク、言い出さないと私達も分からないわよ」
 「でも、その…」
 これではいつまでたっても埒が明かない。
 「ミク」
 MEIKOがミクに向かって話しかける。
 「ミクの相談内容は予想がつくわ。安田君との事でしょう?」
 その言葉に、はっとしたように顔を上げるミク。
 「…どうして分かったの?MEIKO姉さん?」
 「私も色々と動き回ったりして、色々と情報を得ているからよ。さあ、ミク、話しくれる?」
 そこまで言われると、覚悟を決めたのか、ミクがポツリと語り出した。
 「あの…、私…、雅彦さんの事が好きなの」
 顔を真っ赤にして語るミク。しかし、MEIKOとルカは、別に驚きもしなかった。その反応に逆に驚くミク。
 「…どうして驚かないの?」
 「さっきも言ったでしょ。私たちも色々と情報を得ているって。だから、ミクには悪いけど、この程度じゃもう驚かないわ。ミクが何を話しても、止めたりしないから、話してご覧なさい」
 「私、てっきり、この話をして、MEIKO姉さんやルカ姉が雅彦さんとの関係を止める様に言う物だとずっと思っていたの」
 「ミクがそう考えるのも仕方ないわね。でも、止めたりはしないわ。だから、安心なさい」
 MEIKOにそう言われ、ミクは話し始めた。
 「…私、雅彦さんと何度か付き合って、その度に雅彦さんが好きになっていって…。雅彦さんの事を考えると、何だか胸がとっても暖かくなる感じがして、最初はこの気持ちに戸惑ったけど、その気持ちの正体が何か分かったら、その気持ちにずっと身を置きたいと思ったの」
 「ミクが安田君と付き合っていて、それでミクの事を好きになったというのは、最初にリンが気がついて、その後KAITOも気がついて、そしてその話を聞いた私とルカが直接安田君にも確かめたわ。レンは知っているか分からないけど、レンも聡いから、もう気がついているかもしれないわね」
 (…なんだ、皆、知っていたのね。それで悩んでいたのが、何だか無駄だったみたい)
 ミクは少しほっとした様な表情を見せた、しかし、すぐに顔が暗くなる。
 「でも、雅彦さんは人間で私はアンドロイドなの。私達みたいに、種族をまたいで恋愛した例というのは、聞いた事が無いし、調べても出てこなかったの。MEIKO姉さんやルカ姉は聞いたことある?」
 その問いを聞いて、MEIKOとルカの表情も暗くなる。それはミクからその質問が来ると予想はしていたが、答えたくは無い質問だった。
 「…ごめんなさい。私も聞いた事は無いわ。私もミクを安心させたいけど、嘘はつけないし…」
 「…私も知らないわね」
 とても言いにくそうに話す2人。しかし、ルカは何か思いついた様だ。
 「ミク、安田さんに頼んで、安田さんにマスターになってもらえば良いんじゃない?それなら良くある関係だし…」
 その事について考えるミク、しかし、しばらくすると首を振った。
 「それだと私と雅彦さんが対等な関係じゃなくなってしまうわ。私が言うのもおかしいかもしれないけど、それはきっと雅彦さんも望んでいない事だと思うし、私も出来る事なら避けたいと思っているの。それに、今までそんな関係で接してこなかったから、きっと戸惑う事になると思うの。それに、普通のミクならそれで良いかもしれないけど、私は特殊仕様だから…」
 その答えに考え込んでしまう3人。今までに無い難問である。しばらくすると、ミクが口を開いた。
 「…ごめんなさい、自分でも無理を言ってるって分かってる。…MEIKO姉さん、ルカ姉、無理言ってごめんなさい」
 泣きそうな顔で答えるミク。複雑な表情をしたMEIKOがドアのロックを外すと、ミクは部屋を出て行った。
 残された2人はしばらく黙っていた。そして、MEIKOが口を開いた。
 「本当に、私達って無力ね…」
 「本当ですわね。…今、どうこう言っても仕方ないけど、ミクが人を好きにならなければ、こんな事にはならなかったのに」 
 その言葉にルカを見るMEIKO。
 「ルカ、そう言う言い方はミクには悪いわよ」
 その言葉にうつむくルカ。
 「…すみません」
 「…でも、私だって、ルカの言い分は分かるわ。アンドロイド同士の恋愛だったら、確かに話はややこしい事にはなっていないし。…でも、私としては、ミクの意志を尊重してあげたいの」
 「そうですわね」

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初音ミクとパラダイムシフト1 3章5節

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投稿日:2016/10/25 22:45:59

文字数:1,997文字

カテゴリ:小説

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