気がままに小説を書いている男子高校生 絵師さん募集中です Twitter yesryuunosuke
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傷つけるように言ったわけじゃない。ただ、口が滑っただけだった。
ばあちゃんをあんな顔にさせてしまったのは初めてだった。
ばあちゃんだけは傷つけたくなかった。
今日の朝は、ばあちゃんはいつもの顔で朝ごはんを用意してくれていたけど、お母さんはいなかった。早...20、当たり前の日常に2
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20、当たり前の日常に
私は短気だ。よく周りから冷静って言われるけれど、その上短気でもある。冷静と短気は対義語と思っていたけれど、全く違うものらしい。
私は完璧主義者だ。何事も完璧にできないと気がすまない。昔した問題が解けなくなると、イライラしてしまう。
一回したから完璧に覚えたんじゃないの?...20、当たり前の日常に
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19、次の日の話
「珍しいな」
康永はそう言って家の戸を開ける。
「ちょっとね」
俺は康永を家の中に入れる。ここは俺の家。造りは和風で縁側などが風流漂う家だ。この家は嫌いじゃない。
「いつものところに行っててよ。お茶持ってくるから」
俺がそう言うと、康永は玄関から入って突き当たりの部屋に入...19、次の日の話
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18、金曜日
亮は、一週間のうち水、木、金の三日間来てくれる。
その日は完全に家では一人らしい。なので買出しをさせたり、宗助と遊んでもらっている。宗助は完全に亮のことを気に入っていて、「お兄ちゃん」と呼んで親しみを持っている。
「今日のご飯何作るの?」
「親子丼」
「やったぁ。俺丼系好きなんだよ...18、金曜日
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17、私の想いと彼の想い
「大友さん」
蝉の大合唱の最中、後ろから声が聴こえる。声に反応してしまい、体がピクッと動いた。
「今いい?」
そう声を掛けられたのは授業の十分休みだった。時計の長針は授業の始まりを告げる時間の十一に近づいていたころ、亮から声を掛けられる。
思わずドキッとしてしまう。声...17、私の想いと彼の想い
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夏祭りは楽しかった。
鹿野君の甚平姿は格好良かったし。
美味しいものは食べれたし。
満足!
まぁ、ここに権弘がいればもっと満足なんだろうけどなぁ。
なんて思うと、鹿野君に失礼だから想いは埋めておく。
「楽しかったね」
「うん!」
鹿野君の言葉に思...16 一歩出して
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やっぱり、人ごみは蒸し暑い。甚平を着てきたのは正解だった。僕はそう思い、屋台でもらったウチワを一扇ぎした。
「楽しい?」
祭り会場に入った途端、マドは何回か同じ質問を投げかけてきた。
「うん。楽しいよ」
僕はその数だけ笑顔を浮かべ、明るく答えているつもりだ。自分の中でベストな返答をすると、マド...15,5 半歩だして
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夕方だというのに人口密度が高いせいか、夏のせいかはわかりもしないが蒸し暑い。もう、夏なのだから蒸し暑いのは仕方が無い。外気に露出している肌には、ベッタリと湿気がついている。
もう、帰りたい……。松江亮はため息をつきながらそう思う。
もともと、...15.心の準備は万端です
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15、心の準備は万端です
だんだん、蝉の鳴き声がツクツクホウシの声へと変わっていく時間帯に、俺は坂倉記念公園の時計台で加治屋を待っていた。ここが一番目立つので、集合場所はここにした。
ふと、周りを見てみると、提灯がほんのりと灯りを灯していて風情がある。それだけに目を奪われていたわけでもなく。周り...14.5 心の準備は万端です
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14、背景、夏祭りへ
暑い。まさに夏だ。
この間まで涼しかったくせに、七月下旬となるとそうはいかない。夏のギラギラとした陽射しが、無防備な顔や腕に降りそそぐ。やっぱり、加治屋は女の子で大きな麦わら帽子を被っている。円香は、陸上で焼けた肌が白いワンピースの間から覗いていた。
ユウカと円香と加治屋...14、背景、夏祭りへ
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放課後。一人で教室に残って進路調査票とにらめっこをしている。
西日がだんだん夕日に変わってきた頃だ。
吹奏楽部の個人練習の音色が、全体演奏の音色に変わり、大嶺中唯一中体連生き残り組みの野球部は練習をヒートアップさせて、熱が入っている。油蝉の声が蜩の声に変わってきて、そろそろ夕方が迫ってくる時間...13、進路調査票2
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13、進路調査票
「じゃあ、進路調査票配るね」
担任の木戸先生がそう言って、教室に並べられた机の最前列の人たちに、進路調査票を配る。
私は前から回ってきた進路調査票を見て、「はぁ」とため息をつく。
進路調査票の配布は今回で二回目だ。これがまた苦痛なのだ。
私は、自分の将来とか考えたことがなか...13、進路調査票
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12、理解の仕方
臨海学校が終わり、俺たちはまたいつも通りの現実に戻る。
臨海学校では色々あった。
鹿野が加治屋さんとケンカしたとか。
エノヒロが加治屋さんと何かあっただとか。(エノヒロが詳しいことを教えてくれないんだよなぁ)
周りはそんなことがあったのに、相変わらず俺の周りは平凡だ。
...12、理解の仕方
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カレーを食べ終わりお腹が膨れて、少し元気になってきた休憩時間のことだった。
「鹿野くーーーん」
聴きなれた加治屋さんの声が聴こえる。この声を聴くと、昨日の出来事が思い出される。
『大っ嫌い』
この言葉が今日、どれだけ僕を苦しめただろうか……。
心の不安材料を思い出したところで、僕は振り向く。
...11、正直になれ偽善者
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10、俺と彼女の時間はたぶんこれからも続いていく
臨海学校二日目の早朝。
二階の休憩室近くにある、洗面ゾーン(名前がよくわからないからそういうことにしておく)に歯ミガキセットとタオルをもって、松江と向かった。
そこには朝早いのに、人が少しいた。
その中にのっそりと背の高いクリーム色の髪色をし...10、俺と彼女の時間はたぶんこれからも続いていく
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鹿野君は、三階の休憩室まで走って止まった。
「ど、どうしたの?」
息切れしながら喋る私に、鹿野君は答える。
「わ、わかんない……」
鹿野君は肩で息をしながらそう言った。
「何でか、体が動いてた。エノヒロと……加治屋さんが一緒にいるのがダメな気がした」
鹿野君はそう...9、大っ嫌い2